保育園で働く栄養士としてスキルアップするには、1つ1つの業務に対する専門的な知識の習得が欠かせません。
例えば、食育活動を通して子どもたちへ食の正しい知識を伝えるには、まずは自分自身が食育とはどのようなものかをしっかりと理解しておく必要があります。
また、保護者からの相談や質問に対応できるように、アレルギーに関する知識や的確にアドバイスを行える力を身につけておかなければいけません。
このように、業務に応じて必要な知識を学び続けることが、保育園で働く栄養士のスキルアップに繋がります。
しかし、実際にスキルアップをするといっても、周りに同じような境遇の人は少ないでしょうし、中々誰に相談していいかも分かりませんよね?
そこで本記事では、保育園の栄養士に必要なスキルからスキルアップするための具体的な方法まで詳しく紹介していきます。
また、スキルアップにおすすめの資格や、より実践的に学びたい人向けの資格も併せて紹介していますので、ぜひ参考にして下さい。
目次
保育園で働く栄養士に求められるスキルは?
保育園で働く栄養士の業務内容は幅広く、それぞれ求められるスキルも異なります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・子どもの発育に合わせた食事を提供できる力
・アレルギーに対応できる力
・食育活動を通して食の大切さを伝える力
・積極的なコミュニケーション能力
食事管理に関わるものから食育指導に通ずるものまで、幅広いスキルが必要となることが分かります。
ここからは、これら必要となるスキル1つ1つについて、詳しく解説していきます。
子どもの発育に合わせた食事を提供できる力
保育園で働く栄養士には、子どもたち1人1人の発育・健康・栄養状態に合わせた食事を提供する力が求められます。
年齢は同じでも、噛む力や消化能力には個人差があるため、調理法や味付けに変化をつけるなどの配慮が必要です。
特に幼児期における味覚は敏感で、ここで食に対する苦手意識(不快な食感や苦味など)を持たせてしまうと、食事を摂ること自体に嫌悪感を示すようになるなど、その後の一生に影響を与えかねません。
栄養バランスの取れた食事を提供するだけでなく、食材の切り方や甘味の付け方などひと工夫加えることで、こどもたちに“食べること=楽しい”と思わせることも大切になります。
アレルギーに対応できる力
食事を提供する上で、様々なアレルギーに対応できる力も求められます。
子どものアレルギー疾患は年々増加傾向にあり、全国調査の結果では、2歳児の約10人に1人が食物アレルギーを持つことが明らかになっています。
特に、乳児期に現れやすい主なアレルギー疾患の1つに食物アレルギーがあり、発症すると下痢や嘔吐のほかに呼吸困難などの命に関わる重大な事態になることも想定されます。
そのためアレルギーを持った子どもに対しては、代替食材を使用したメニューを作成するなど、子どもたち1人1人の健康状態に合わせた食事を提供する力は最も重要です。
また、アレルギーの子どもをもつ保護者からの相談やそれに応じたアドバイスを行う機会も多くあります。
子どもたちに安心して食事を楽しんでもらうために、そして保護者への的確な指導を行うためにも、アレルギーに関する知識や理解を深めておくことが必要です。
食育活動を通して食の大切さを伝える力
食育推進の一環として、イベントや活動を通して、子どもたちに食の大切さを伝える力も求められます。
芋掘り体験や簡単な料理教室など、直接食材に触れる機会を与えることで、子どもたちの食に対する興味を引き出すことも保育園で働く栄養士の重要な役割です。
そのため、日頃から子どもたちとスキンシップを取り、子ども目線にたって物事を考えられるような柔軟な視点も養っておくことが大切です。
積極的なコミュニケーション能力
子どもたちや保育士さん、保護者の方と積極的にコミュニケーションを取る力も求められます。
栄養士は、子供たちをはじめ、保護者や保育スタッフと連携し、食事に関する情報共有や相談を行う必要があります。
周囲と連携を図ることで、子どもたちの食事状況を把握し、必要に応じて対応することができます。
そのため、常に周りとコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくことが重要になります。
保育園で働く栄養士がスキルアップする方法4選
保育園で働く栄養士にとって必要とされるスキルは多く、知識や専門性を高めることでスキルアップに繋がります。
ここからは、保育園で働く栄養士がスキルアップするための具体的な方法を4つ紹介していきます。
キャリアアップ研修会に参加する
キャリアアップ研修会に参加をすることで、専門的な知識をより深めることができます。
保育園の栄養士向けに開催されるキャリアアップ研修では、主に以下の内容を学ぶことができます。
・最新の栄養情報など | 栄養学において注目されている話題や最新の研究結果の情報を共有することで、知識の向上が見込めます。 |
・安全に食事を提供するための知識 | 食品の取り扱いや調理方法、衛生管理の基準について学び、より子どもたちに安心で安全な食事を提供できる知識を深めることができます。 |
・献立作成スキル向上のための知識 | 保育園側や食事制限のある子どもなど、あらゆるニーズに幅広く対応しながら、献立を作成するスキルを学びます。 相手の求めるニーズ(要求)を理解しながら、メニューの提案や改善をする方法を習得できます。 |
また、開催機関によっては、キャリアアップ研修後に参加者同士の交流会を行なっていることもあります。
保育園で働く同じ仲間として、悩みを相談したり、情報を共有できる貴重な機会になりますので、積極的に参加されることをお勧めします。
キャリアアップ研修会は、日本栄養士協会や大学・専門学校などの教育機関、地域ごとに開催されています。
具体的な開催場所やスケジュールについては、公式ウェブサイトなどで確認できますので、自分に合った内容のものを選択して受講することが可能です。
URL:キャリアアップための生涯教育制度 | 公益社団法人 日本栄養士会
セミナーに参加する
セミナーに参加することで、最新の栄養知識を取り入れることができます。
常に新しい研究やトレンド情報が出回っている中、最新の情報に触れ、すでに持っている知識を更新していくことでスキルアップに繋がります。
また、保育園の管理栄養士として働いていた経験を持つ方が、個人で行なっているセミナーもあります。
実際の経験談など、そこでしか聞くことのできない貴重な情報も得ることができるため、積極的に参加されることをお勧めします。
栄養士のためのスキルアップセミナーの種類には主に以下のようなものがあります。
・栄養学に関するセミナー | 栄養業界で注目されている内容や最新の栄養学について学ぶセミナーです。 食品の持つ栄養素や食事バランスの取り方について理解を深めることができます。 |
・調理全般に関するセミナー | 調理の基礎から応用について学ぶセミナーです。 対象者に合わせた献立作成方法や調理方法を学ぶことで、幅広いニーズに対応した食事を提供する技術を習得できます。 |
・アレルギーに関するセミナー | アレルギーの症状や代替食材の選び方など、アレルギーに関する知識を深めるセミナーです。 アレルギーに対する理解と応用力を身につけることで、アレルギー食の作成や保護者への指導の現場で役に立ちます。 |
・衛生管理に関するセミナー | 食品管理や調理環境の管理について学ぶセミナーです。 食材の保管方法や食中毒の予防など、より子どもたちに安全な食事を提供できるスキルが身につきます。 |
・コミュニケーションに関するセミナー | 保護者や現場スタッフとの円滑なコミュニケーションについて学ぶセミナーです。 相手の話を聞く力や問題を解決する力を向上させることができます。 |
セミナーに関する情報は、Webサイトや専門誌、ソーシャルメディア(TwitterやFacebookなど)上で公開されている場合もあるので随時チェックしておくと良いでしょう。
専門性を高める資格をとる
資格取得により専門的な知識を得ることは、自身のスキルアップに繋がるだけでなく、周囲からの信頼性も高くなります。
アレルギーに関わるものや食育に関するものなど、保育園で働く栄養士にとって必要な知識は多くあります。
資格取得によって専門性とスキルを証明することで、より仕事の幅も広がり、自身のモチベーションアップにも繋がります。
「3.保育園で働く栄養士のスキルアップに繋がる資格4選」では、おすすめの資格を紹介していますので、参考にしてみて下さい。
専門誌を購読する
専門誌を購読することで、最新の食事情や全国各地の食育活動など、仕事をする上で参考になる情報を得ることができます。
児童育成協会出版の月刊誌「子どもの栄養」では、子どもを取り巻く食情報や全国の食育活動、季節の献立などを掲載しています。
専門の管理栄養士の方が監修されている専門誌で、実際の給食献立の紹介や給食だよりの作成例など、充実した内容になっています。
月額制もしくは単品購読になりますが、保育園で働く栄養士さんにとって大変ためになる専門誌ですので、一度読んでみることをお勧めします。
URL:こどもの栄養
保育園で働く栄養士のスキルアップに繋がる資格4選
保育園で働く栄養士にとって、専門性を高める資格をとることは、スキルアップをする上でとても重要です。
では、専門性を高める資格にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここからは、専門性を高める資格の中でも特におすすめの資格を4つ紹介していきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
乳幼児食指導士
乳幼児食指導指導士とは、乳幼児の食事に関して専門的な知識を持ち、乳幼児食の献立やレシピ作成・保護者に対するアドバイスの提供ができる専門家のことです。
乳幼児に必要な栄養素の基礎や、適切な栄養摂取の方法を学ぶことで、献立作成や調理の現場に生かすことができます。
また、保護者に対しても、乳幼児期の栄養管理に関する助言や相談に対する解決策の提示をする上で役に立つ点でもお勧めです。
・受験資格 | ・特になし |
・取得方法 | ・東京カルチャーセンター開講の通信講座を受講し、課題提出。 |
・主な学習内容 | ・乳幼児の成長と発達に関する基礎知識 ・食品の栄養成分に関する知識 ・食物アレルギーに関する知識と対応の仕方 ・離乳食・幼児食作成の実技 |
・受講料 | 39,800円(税込) |
参考:乳幼児食指導士
アレルギー対応食アドバイザー
アレルギー対応食アドバイザーとは、子どものアレルギーに関する理解と専門的な知識を持ち、食材選びから調理過程における全般的なアドバイスができる専門家です。
代替食材の選び方や調理方法を学ぶことで、アレルギーを持つ子どもでも、他の園児と同じように食事を楽しめる環境を提供できるようになります。
また、保護者からのアレルギーに関する相談や疑問に対して、的確にアドバイスできることは、大変大きな強みとなるためお勧めです。
・受験資格 | ・日本能力開発推進協会が行うカリキュラムを修了していること。 |
・取得方法 | ・カリキュラム履修後、検定試験を受験。 |
・主な学習内容 | ・食物アレルギーに関する基礎知識 ・アレルギー対応食の基本 ・子どものアレルギー対応食の実践 |
・受講料/受験料 | 36,300円/5,600円(いずれも税込) |
食育スペシャリスト
食育スペシャリストとは、栄養や食事バランスなど食に関する幅広い知識を持ち、周囲の人々に対して食と健康への意識づけを行うためのアドバイスやプログラムを提供する専門家です。
カリキュラム中には、企画書の作成やプレゼンテーションの演習も含まれるため、実際の食育活動の現場で役立つ資格になります。
食育に関する知識を深めながら、実践的に学ぶことができるためお勧めです。
・受験資格 | ・特になし |
・取得方法 | ・カリキュラム履修後、認定試験を受験。 |
・主な学習内容 | ・食を取り巻く社会の動き ・食育について ・メニュープランニング ・食育プレゼンテーションなど |
・受講料 | 183,150円(税込) |
URL:食育スペシャリスト
子育て支援員
子育て支援員とは、保育の現場や家庭などで、子育てをサポートする専門家です。
子育てに関する理解と知識を深め、保育士の補助的業務を行います。
具体的な仕事内容としては以下のようなものがあります。
・子どもたちの登園や降園を見守る。
・散歩の引率や教室内の清掃
・食事やトイレの介助
・保護者への相談窓口業務
子育てに対する理解を深めることで、食事提供や食育活動の現場で生かすことができるだけでなく、一緒に働く保育士や保護者の方からの信頼を得ることができるためお勧めです。
・受験資格 | ・特になし |
・取得方法 | ・子育て支援員研修の受講・修了。 |
・主な学習内容 | ・子育て支援の意義や役割 ・子どもとの関わり方や保育の役割 ・子どもの発達 ・障がいへの理解や児童虐待など全8科目 |
・研修費用 | 無料 |
URL:子育て支援員
より実践的に学びたいなら臨床栄養医学指導士がおすすめ!
臨床栄養医学指導士は、化学的および生理学的に根拠のある正しい栄養学を基に、顧客1人1人の悩みに寄り添った指導を行うことができる栄養のスペシャリストです。
栄養にまつわる根拠のない情報や偏った考え方が多くある中で、1000本以上の論文から導き出された正しい栄養学を徹底的に学び直すことができます。
そして何より臨床栄養医学指導士には、他にはない以下2つのメリットがあります。
・アレルギーに関する情報量が圧倒的に多い。
・資格取得後も、持続的な学習と経験・実績を積むための環境が整っている。
代表理事を務める小笹は元々、お子様のアトピーがきっかけで栄養学を学び始めました。
アトピーが起こる根本的な原因を追求し、自身の努力で得た正しい栄養学を用いてアプローチした結果、見事改善させた経験をお持ちです。
代表理事:小笹のInstagramはこちら
そのため、アレルギーに関しては特に力を入れている部分であり、腸内環境との関連性などより深い内容を学ぶことが出来ます。
アレルギーが引き起こる原因について理解し、それに対処できる知識を備えることで、食育指導の現場でより的確なアドバイスが行えるようになります。
また、資格取得後は臨床栄養医学協会に入会(任意)し、協会内でのセミナー講師や栄養コンサルに挑戦するなどの経験や実績を積むことができます。
協会主催の様々な分野に関する栄養セミナー(毎回テーマが異なる)にも随時参加が可能で、資格取得後も学び続ける環境が整っているため、常にスキルアップすることが可能です。
臨床栄養医学指導士は、これら他の資格にはない大きな特徴があることから、管理栄養士や理学療法士、看護師の方やパーソナルトレーナーなど多くの専門家がスキルアップのために受講されています。
保育園の栄養士として働く上で、大変ためになる内容になっていますので、この機会にぜひ検討されてみてはいかがでしょうか。
・受験資格 | ・特になし |
・取得方法 | ・講義動画を視聴後、3か月以内にレポート課題提出。 |
・主な学習内容 | ・栄養の考え方、エネルギー代謝について ・炭水化物の全て ・タンパク質の全て ・脂質の全て ・腸内環境栄養学 ・よくある症状・疾患編 ・血液解析 ・糖質制限について ・ダイエットについて ・筋トレ栄養学 ・貧血の栄養学 ・食品添加物 ・栄養指導方法について など |
・取得後 | 【協会へ入会した場合】 ・復習会セミナーへの参加可能。 ・栄養基礎講座や過去セミナー視聴可能。 ・有料ノート閲覧可能 ・セミナー動画いつでも視聴可能。 ・妊活・ダイエット・美容栄養の追加講座受講可。 ・セミナー講師や栄養コンサルに挑戦可。 |
・受講費用 | ・165,000円(税込)※詳細はHPにて |
参考:臨床栄養医学協会
まとめ
保育園で働く栄養士の仕事は、食事管理から食育活動、食育指導と多岐に渡ります。
そのため必要とされるスキルは多く、専門的な知識を身につけていることが望まれます。
キャリアアップ研修会やセミナーへの参加、資格取得など、スキルアップするための手段は多くありますが、まずは自身にとってどのような知識が必要かをよく考えた上で、具体的な行動を決めることが重要です。