臨床栄養学術セミナーでは、臨床における最新の栄養情報を学ぶことができます。
栄養学と臨床を結び付けた団体やセミナーがまだまだ少ない中、このようなセミナー開催は貴重な機会となっています。
臨床に紐づいた内容であるため、受講の翌日から仕事に活かすための知識や技能を得ることができます。
また、このような教育の場や団体について知ることは、これからの栄養学や医療の可能性を大きく伸ばすことに繋がります。
この記事では臨床栄養学術セミナーや主催団体について詳しくご紹介していきます。
セミナーの概要から、臨床栄養に関する研修や教育制度、セミナー内容を現場で生かすための方法についても触れていきますので、是非ご参考ください。
目次
臨床栄養学術セミナーとは
臨床栄養学術セミナーは、公益社団法人 日本栄養士会が主催するセミナーです。
臨床に関わる管理栄養士・栄養士にとって有益な最新の臨床情報提供の場として、栄養管理や栄養指導の資質向上を目的に実施されています。
年に1度開催されており、その時の状況に応じたテーマが設けられています。
今年度は「標準的な栄養評価とGLIM基準の理解と実践について」というテーマで、既に第38回として5月11日にライブ研修が開催されています。
令和6年度診療報酬改定という現状を受け、「国際的な栄養管理に関する実情を踏まえた最新の栄養情報を学ぶことができるセミナー内容」ということで企画が練られています。
(オンデマンド配信ページへのリンクあり)
臨床栄養学術セミナーの概要
こちらでは臨床栄養学術セミナーに参加するにあたっての諸事項について説明しています。
実際に申込みする場合の注意点などについても触れていますので、確認の意味でも目を通していただくことをおすすめします。
受講資格
臨床栄養学術セミナーは、その趣旨として「臨床に関わる管理栄養士・栄養士にとって最新の臨床情報提供の場」という点を謳っているため、受講対象者は管理栄養士と栄養士に限られています。
その他には特に必要な受講資格は設けられていないので、管理栄養士・栄養士であればどなたでも受講することができます。
開催方法
開催方法はオンラインで当日行われるライブ研修と、それを録画・編集したオンデマンド研修の2パターンが用意されています。
オンデマンド研修であれば開催当日に受講が叶わない場合でも月毎に申込みができるようになっており、閲覧期間が1か月間設けられています。
開催当日での参加が難しい場合や、開催後にこのセミナーについて知った場合でも受講することができます。
また、ライブ研修については定員が設けられますが、オンデマンド研修では定員数は特に設けられていません。
ライブ研修は参加者多数で応募が締め切り前に終了してしまうこともありますので、開催当日での参加を希望される場合は、早めの申し込みをされることをおすすめします。
受講料金
受講料金については、日本栄養士会の会員・非会員によって異なっています。
一般(非会員)の場合は7,700円(税込)ですが、会員であれば3,300円と割引された料金となります。
申込み方法と注意事項
セミナー申込は、 日本栄養士会のホームページにあるセミナー開催ページから行うことができます。
ただし、申込みをパソコンで行う際はInternet Explorer以外のネットワーク(MicrosoftedgeやGooglechrome等)の指定がありますので、注意が必要です。
支払いに関してはクレジット決済またはWebコンビニ支払いの指定があります。
また、セミナーは「eラーニング」を利用しての進行となりますので、受講する側はネット環境を整えておく必要性があります。
主催する日本栄養士会について
ここでは、臨床栄養学術セミナーを主宰する「社団法人 日本栄養士会」について見ていきます。
日本栄養士会においては、「栄養」という言葉はこの一連の命の営み自体を表す言葉であり、管理栄養士・栄養士はその「栄養」の力で人々を健康に、幸せにする専門職である、という考えのもとに、「日本栄養士会は管理栄養士・栄養士の職能団体」であることを謳っています。
現代の多様化した栄養問題に取り組み、人々の期待に応えられるように管理栄養士・栄養士という専門職としてのスキルを向上し、栄養や健康にかかわる情報提供と環境整備への取り組みを重視し、「誰一人取り残さない栄養政策」のもと、管理栄養士・栄養士が使命と責務を自覚し、常にその機能を発揮することでその時々の健康・栄養課題の解決を目指すことを使命としています。
そのためにの4つの柱を設け、様々な事業展開を行っています。
実際に活動している分かりやすい内容としては、
- 研修会の実施
- 栄養ケア・ステーションでの栄養・食に関する幅広いサービスの提供
- 災害支援
- キャリアアップ制度の実施
等が挙げられ、臨床栄養学術セミナーは充実した研修会の一環として企画されたものです。
これらの活動の中でも、管理栄養士・栄養士一人一人のキャリア支援を目的に運営されているキャリアアップ制度は、生涯教育制度と3つの認定制度が設けられている手厚い教育制度です。
「生涯教育」は、基礎を固めて技術を身につける基幹教育として基本研修と実務研修が設けられています。
臨床栄養学術セミナーにおいても、受講することでこの生涯教育の関連内容の単位を取得できる仕組みになっています。
その他にも、管理栄養士・栄養士のキャリアアップや再就職等の支援や、学生に向けて管理栄養士・栄養士の違いや職場での実際の仕事について紹介するなど、将来へ向けての活動支援なども行っています。
現在日本栄養士会には約5万人(49,691名)が会員登録しており、うち管理栄養士が88%、栄養士が12%を占めています。
病院やクリニックなどの医療関連施設を筆頭に、学校や企業、都道府県や市町村・保健所、介護関連施設等様々な職場や所属の管理栄養士・栄養士が登録しています。
臨床栄養学術セミナーで学べること
臨床栄養学術セミナーは、管理栄養士・栄養士にとって有益な最新の臨床情報を得られる内容として毎回企画されています。
ここでは実際にセミナーにてどのような内容を学ぶことができるのか、過去5年間の開催から具体的に見ていきます。
第33回(2019年) テーマ:各種帳票にも記載が義務づけられた「嚥下調整食 学会 分類2013」を正しく理解しよう
内容 講義:摂食嚥下障害の病態
演習:嚥下調整食学会分瑠い2013の理解~自施設の食事基準に落とし込もう
第34回(2020年) テーマ:特に設定なし(不明)
内容:①糖尿病性腎症と糖尿病性腎臓病(DKD)
②腎臓病の栄養管理に関する話題~腎臓病病態栄養専門管理栄養士の立場から~
第35回(2021年) テーマ:超初心者が初心者になるための、栄養管理に必要な検査データや画像データの活かし方
内容:①臨床データや画像データの見方
②臨床データや画像データをどう栄養管理に生かすか
第36回(2022年) テーマ:ガイドラインと実践から読み解く早期栄養介入管理加算
内容:①集中治療ガイドラインについて
②集中治療の栄養管理
③早期栄養介入管理加算と部門の栄養・経営
第37回(2023年) テーマ:がん患者の栄養管理~病院から在宅へ~
内容:①がん患者への栄養療法の可能性と限界
②がん患者の栄養管理PES報告
③在宅でのエンド・オブ・ライフにおける食支援~がん患者の場合~
第38回(2024年) テーマ:標準的な栄養評価とGLIM基準の理解と実践について
内容:①急性期における標準的な栄養評価とGLIM基準の応用~適切な栄養スクリーニング・アセスメントについて~
②回復期リハビリテーション病棟における摂食嚥下障害患者への管理栄養士の関わり方
③標準的な栄養評価・GLIM基準AWGCによる悪駅室診断基準について
このように、毎回テーマに基づき講演や演習が企画されています。
過去の開催を見ていくと、毎回のテーマは診療報酬で改定された重要な点や、注目されている大きなトピックや課題などを、臨床場面に落とし込めるように企画されています。
テーマを見ていくだけでも、臨床においてどのような課題があり、また栄養という点からどのように切り開いていくべきか、他の部門とどのように手を携えていくべきかを学べることが分かります。
法律や診療報酬の改定など、文言としては理解していても、臨床の場面にどう取り入れていくか?
栄養学として治療の一環に携わるにあたり、ほかの部門とどのように連携すべきなのか?
その点を課題とされている現場の方々には、またとない機会となるはずです。
また、臨床栄養学術セミナーでは、日本栄養士会で行われているキャリアアップでの「生涯教育」における単位を取得することができる仕組みとなっています。
毎回のテーマに準じた単位を取得できるようになっており、キャリアアップでの学習をされている方にはこの点からも学びを深めることができます。
臨床栄養学術セミナーでの学びを活かすには
臨床の場での実践法をセミナーで学べるのは非常に有意義ですが、それを実際に活用していく必要があります。
知識だけにとどめず実践していくことが一番ですが、なかなか学んだ知識を自分の置かれている現場にそのまま活かすのは難しいことです。
なぜなら、セミナーで学んだ際の現場の設定と、自分の置かれている状況や環境が必ずしも同じとは限らないからです。
例えば、所属している部門が医療機関なのか、福祉施設なのかという点だけでも活かせる内容は全く異なってきます。
学んだ内容を復習するのはもちろんですが、どの部分がそのまま活用できて、どこが活用できないのか?
まずその点を見極める必要があります。
そして、セミナー内容を自分の中でしっかりと落とし込めたら、科内や施設内の他の部門の職員に共有する場を設ける必要があります。
栄養学を栄養指導に活用するのであれば、同じ部門内での共有でも必要最低限は活かすことはできます。
しかし、「臨床の場で栄養学を活かす」となると話は別です。
臨床の場には複数部門の職員が関わっていますので、栄養学を取り入れていくには関係する部門の理解を得る必要があります。
「治療の一環に栄養学が必要だ」という意識を全員で共有しておく必要があり、そのための場をまずは設ける必要があるのです。
既に栄養学を臨床の場に取り入れている職場であれば、定期的にそのような場を設けている場合もあるかと思いますので、そういった場面での共有がスムーズなのではないでしょうか。
まとめ
臨床栄養学術セミナーについてその内容から主催団体についても見てきました。
いまや様々な場面において欠くことができない栄養学。
その認識も医療や福祉の場では強くなってきており、臨床の場で実際に活かせる知識と実践力が求められる時代です。
知識はあるけれど、臨床の場でどう活かすべきか分からない。
他の部門との協力体制をもっと構築していきたい。
臨床栄養学術セミナーへの参加が、栄養学と医療や福祉を結ぶ架け橋としての第一歩として期待されます。
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