
介護に関する栄養の資格は数少ないですが、今後はかなり需要が高まることが予測されています。
なぜなら、高齢化社会が進行する現代では介護が必要な高齢者が年々増加しており、提供される食事や栄養についても専門的な知識が求められ始めているからです。
介護の食事と聞いて、以下のような疑問をお持ちの方もいると思います。
- 「普通の食事との違いがわからない」
- 「高齢者に喜ばれる食事を提供するには?」
- 「専門的な知識を身につけて仕事に活かすには?」
こうした疑問を解消する一つの方法として、介護食に関する資格の取得が挙げられます。
介護現場の専門職者だけでなく、一般の方も資格を取ることで調理方法や仕事の幅をグンと広げることが可能になります。
この記事では介護食に関する資格と活用法について紹介していきますので、自分の目的に合った介護食の資格を見つけていきましょう。
目次
介護食の資格とは
高齢化が進む近年は、介護に欠かせない食事や栄養が注目されており、「介護食」に関する資格を取るための講座やその資格取得者は増加傾向にあります。
介護食が重要視されるのは、高齢になると噛む力や飲み込む力が弱くなることで通常の食事が食べにくくなったり、食べ物が気管に入りこむ「誤嚥」のリスクが上がるからです。
免疫力が低下している高齢者が誤嚥すると、細菌やウイルスによって肺炎を起こし、最悪の場合は命に関わるほど危険です。
厚生労働省が発表している令和5年の人口動態調査では、65歳以上の高齢者の死因第4位、80歳以上の高齢者の死因第3位に肺炎が入っています。
参考:令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
また、肺炎が引き金で寝たきりになってしまうケースも多いので、高齢者の状態に合わせて誤嚥しにくい食事を提供することが重要になります。
高齢者が安心して食事を楽しむために、食事を提供する人が高齢者についての基礎知識や栄養知識に加え、献立や食事形態・調理方法など、食事に関わる知識と技術を身につけ、資格を取得する人が増えているのも納得ですね。
介護食に関する資格は医療職に関わらず、一般の方でも講習会や講座を受けることで取得することができます。
介護食に関する資格を持っていることで介護職のスキルアップになるだけでなく、高齢者がいるご家庭での食事作りにも役立ちますし、新たに活動の場を広げることも可能です。
介護食に関する資格は今後ますます必須になるスキルですので、自分に合った資格内容を確認して取得することがおすすめです。
介護に関係する栄養の資格5選
介護に関する栄養は様々な団体が主催する講座で学ぶことができます。
講座を受けて知識を身につけた後は、試験やレポート提出などに合格することで民間資格を取得することができ、資格を名乗って活動することが可能です。
資格の種類は多数存在しますが、その中でも特におすすめの資格を5つ紹介します。
それぞれの資格の特徴についても分かりやすい内容になっているので、ぜひ参考にしてみてください。
介護食士
介護食士は介護食に関する資格の中でもっとも知名度が高いものになります。
内閣総理大臣が許可した公益社団法人全国調理職業訓練協会によって認定された資格です。
そのため、調理師学校や調理訓練校など調理関係の学校で開講しているので、学科で専門知識を身につけることができます。
さらに実習がカリキュラムに組み込まれているため、より実践的な技術を身につけたい方におすすめです。
階級は1〜3級があり、3級から順に資格取得していくことが必要になります。
2級までは介護職に就いていない一般の方でも受験が可能ですが、1級は病院や施設での実務経験が必要になるので一般の方が取得するのは難しいです。
それぞれの階級の特徴は以下の通りになります。
【介護食士3級】
- 受講資格:誰でも受験可能
- 取得までの期間:4〜6ヶ月程度
- 試験内容:筆記試験、実技試験
- 価格:75,000円(別途、入学金:16,500円と教科書代10,000円が必要)
【介護食士2級】
- 受講資格:介護食士3級を取得した方
- 取得までの期間:4〜6ヶ月程度
- 試験内容:筆記試験、実技試験
- 価格:99,000円(別途、入学金:16,500円と教科書代10,000円が必要)
【介護食士1級】
- 受講資格:介護食士2級を取得した後、2年以上介護食調理の実務に従事した25歳以上の方
- 取得までの期間:4〜6ヶ月程度
- 試験内容:筆記試験、実技試験
- 価格:132,000円(他で2級講座を受けた場合は別途、入学金16,500円が必要)
介護食アドバイザー
高齢者に関する基礎知識に加えて、軟菜食やソフト食の調理方法、献立の立て方、口腔ケアや介助方法を身につけることができます。
介護食アドバイザーは日本能力開発酔心協会(JADP)が認定する資格です。
期間中の学習の悩みはスマホで何度でも質問できるのでサポートも安心できます。
噛む力や飲み込む力が弱い人など一人一人に合わせた調理法を身につけたい方におすすめです。
- 受講資格:誰でも可能
- 取得までの期間:3ヶ月程度
- 試験内容:筆記試験
- 価格:29,800円(WEB申し込み価格)
参考:資格のキャリカレ
介護食コーディネーター
高齢者などに安全で美味しい介護食を提供するための資格になります。
通信教育で取得可能で、お料理が苦手な方にも分かりやすいテキストやレシピ集もあるので、食事のレパートリーを増やしたい方や自宅で資格を取りたい方におすすめの資格です。
ただし、ソフト食などの嚥下(えんげ)食には対応していないので、自分が学びたい内容であるか確認することをおすすめします。
- 受講資格:誰でも可能
- 取得までの期間:3ヶ月程度
- 試験内容:課題の提出
- 価格:34,540円(税込)
参考:生涯学習のユーキャン
介護食マイスター
介護食について基本的な知識を身につけることができる資格です。
介護食作りの便利なアイテムについての知識やレトルト介護食のメリットやデメリットなど様々な知識を身につけることができます。
介護食マイスターと介護食作りインストラクターの2つの資格を同時に取得することも可能な講座です。
資格協会認定の資格なので履歴書にも書くことができ、自宅介護だけでなく福祉施設やカルチャースクールの講師活動をしたいという方にもおすすめです。
- 受講資格:誰でも可能
- 取得までの期間:2ヶ月〜
- 試験内容:課題の提出
- 価格:79,800円
介護食コンサルタント
オンラインで短期間で介護食に関する知識を身につけられる資格です。
食事をする上で必須とされる「安全・栄養・思考」の3条件を学び、幼児期から高齢期まで、生涯を通して心身ともに安心して食べられる食事の提供が可能になります。
高齢者だけでなく、全ての人の健康と命を守る力を身につけたい方におすすめです。
- 受講資格:誰でも可能
- 取得までの期間:1ヶ月程度
- 試験内容:課題の提出
- 価格:35,200円
参考:formie
介護食に関する資格を取るメリット
介護食の資格を取得することで、高齢者に関する知識が広がり食事でのサポートに役立てることができます。
それに伴い、様々なメリットを得られます。
その中でも特にメリットが大きいと感じたものを3つ挙げました。
- 食に関する知識が身に付く
- 高齢者の健康をサポートできる
- 介護以外の職場でも働ける
それぞれについて詳しく解説していきますので、ぜひ確認してみてください。
食に関する知識が身に付く
介護食に関する資格を取得すれば、高齢者に必要な食事や栄養の知識が身に付きます。
資格取得講座では、高齢期の栄養と体の基礎知識や介護食の調理方法、レシピなどを習得することができるからです。
学んだ知識や技術を活かすことで、介護食の調理やレパートリーに富んだメニューをつくることが可能です。
資格取得講座の種類によっては、幼児期から高齢期までの食に関する知識を身につけることができるので家族の健康に配慮した食事の提供も可能になります。
高齢者の健康をサポートできる
介護食に関する資格は、高齢者の健康を考え一人一人に適した食事を提供できる知識やスキルを証明するものです。
栄養面に配慮したり、誤嚥のリスクを考え飲み込みやすさを考慮した食事を提供するなど、高齢者の状態に合わせて安全な食事形態を提供できます。
介護施設や在宅などでは、利用者が安全に食事を楽しめるようにすることはとても重要です。
介護食に関する資格を持っていれば、職場からも有能な人材として重宝されるでしょう。
このように介護食の資格を取得することで、高齢者の健康を食事からサポートすることができます。
介護以外の職場でも働ける
介護食の資格は介護施設などで役立つことはもちろん、それ以外の場所でも活用できます。
高齢者がいる家族に向けてのセミナーを開催したり、介護食に関するアドバイザーとして活躍することも可能です。
また、高齢化の影響もあり、最近では飲み込みやすい高齢者向けのメニューを提供している飲食店や商品も増えてきました。
介護食の資格があればこうした飲食店や食品メーカーでのメニュー作りや調理の指導などをすることができます。
このような背景から栄養士や調理師の免許がなくても、介護食に関する資格を持っていることで職場から求められる人材となり得ます。
介護食の資格を取得することで、自身が働く場所も広げることが可能なのです。
介護食の資格を活かせる場所
食に関する資格は介護食に関するものの他に、栄養士や調理師など様々ありますが、介護食に特化しているからこそ活かせる場所があります。
ここでは介護食の資格が活かせる場所について3つ紹介します。
介護施設
介護食に関する資格を取得していれば、介護施設を利用している利用者さんへのメニューや食事作りに活かすことができます。
利用者さんによって咀嚼や嚥下能力は違うので、一人一人に合わせたメニューや食事形態を提供することが可能です。
施設内でより安全に食事を楽しんでもらうことができますし、誤嚥などの事故防止にもつながるので特に必要とされる資格になります。
高齢者のいる家庭
高齢者は噛む力が弱かったり、飲み込む力が弱いなどの特徴がありますが、全ての食事をミキサーにかければ良い訳ではありません。
何歳であっても食事は生活する上での楽しみの一つだからです。
大切なご家族が食事を楽しめずに悲しむ顔は見たくないですよね?
でも、介護食の資格があれば、ご家族の状態に合わせて適切な食事形態を提供することができます。
食事を噛んで味わえる、飲み込みやすく苦痛がない、そんな喜びを一緒に分かち合うことも可能になるのです。
外食産業
介護食の資格取得のメリットでも書いたように、近年では飲食店での高齢者向けのメニューや高齢者向けの商品の開発も進んでいます。
また、介護施設で外食産業の食品を採用することも増えてきました。
こうした背景により、外食産業でも介護食に関する知識を持っている有資格者の需要は高まっているのです。
介護食の資格があれば、介護食を扱う企業や高齢者向けのメニューを扱う飲食店でのメニュー開発などに携わっていくことができます。
まとめ
介護食について学べる資格とメリット、資格を活かせる場所についてご紹介しました。
高齢者の食事に対する満足度を上げるためにも、介護食に関する資格は必要と言えます。
介護食に関する専門的な知識と技術を身につけることで、高齢者のADL(日常生活動作)の維持やQOL(生活の質)を向上させる手助けをすることができます。
介護施設はもちろん、高齢者向けの食事を提供する外食産業や家庭など、介護食の資格を活かせる場所はますます拡大していくことが予想されるので持っていて損はない資格と言えるでしょう。
介護食について学びたい、高齢者の職と健康を守りたいと考えている人は、ぜひ介護食の資格を取得してみてはいかがでしょうか。
「介護に関わらず、自分や家族のために栄養の知識を身につけたい!」
そんな方は、体のメカニズムから栄養の知識が学べる臨床栄養医学指導士の資格の取得もおすすめです。
参考: 臨床栄養医学協会
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