
炭水化物は食べても太りません。
適切な量を食べてそれを消費できる体であれば、太る心配をする必要はありません。
厚生労働省が「健康の保持・増進(生活習慣病の発症予防」として定める炭水化物の摂取基準量は、1食あたり全体の50~65%に相当します。
【出典:日本人の食事摂取基準(2025年版)】
これは「その食事全体の半分は炭水化物で食べましょう」ということです。
ですが、現在日本人の炭水化物摂取量は減少傾向にあります。
「ローカーボダイエット」「糖質制限ダイエット」「炭水化物抜きダイエット」など、ごはんやパン、麺類などの炭水化物を抜くダイエットを経験されたことのある方は多いのではないでしょうか?
「炭水化物を食べると太る」と、過去に医師が提唱していたこともあるくらい、炭水化物はダイエットや健康的な体の敵とされているところがあります。
しかしながら、炭水化物は体には欠かせない大切な栄養素です。
炭水化物は付き合い方によっては太りませんし、逆に体重を落としたい方の味方にさえなります。
本記事では、炭水化物がなぜ太らないのか、体のメカニズムという科学的な観点から解説していきます。
炭水化物との正しい付き合い方として取り入れ方やその方法、おすすめの炭水化物食材なども併せてご紹介していきます。
これまで炭水化物を控えていた方や、太りそうなイメージのある方はぜひ最後まで目を通していただき、正しい方法で積極的にとり入れられるよう、気持ちの面からも一新してみていただければと思います。
目次
炭水化物は基本的に食べても太らない!
何度も繰り返しますが、炭水化物は基本的に食べても太りません。
炭水化物は食べても常にエネルギーとして体が消費していくので、蓄積されるということが基本的には起こらないのです。
ですが、「太らない」と言われても、なかなかそう信じられないのが人の心理です。
ここではなぜ炭水化物を食べても太らないのか、体の仕組みから科学的に解説していきます。
今実際に体内で起きていることとして読み進めていただけると、「食べても太らない」という事実を受け止めやすくなりますので、是非自分のこととして読み進めてみてください。
私たちは日々生活するために、体内でエネルギーを絶えず作り出しています。
そのために必要とされるものに「三大栄養素」というものがあり、「炭水化物」「タンパク質」「脂質」がそれにあたります。
この3つの栄養素すべてを燃やすことで、常に私たちの体はエネルギーを生み出し、活動することができます。
そのエネルギー源の一つである炭水化物ですが、「糖質」「食物繊維」の2種類に分けられ、それぞれ役割が異なります。
- 糖質:主にエネルギー源となる
- 食物繊維:ほぼエネルギー源とはならず、体の調整や健康増進などのために使われる
このことより、「太る」「太らない」と主に関係しているのは「糖質」であることが分かります。
では次に、この糖質について詳しく見ていきましょう。
私たちが炭水化物を食べると、糖質は口腔内や胃・小腸などの消化器官で消化され、体内に吸収されます。
体内に吸収された糖質は、
- エネルギー源として燃焼
- 1が満たされていた場合にグリコーゲンという形で肝臓や筋肉に貯蔵
- 1.2.が満たされていた場合に脂肪に変換されて体脂肪として蓄積
という3つの形に変えられて、それぞれの役割を果たします。
どの形であれ、すべていざという時のエネルギー源としての備えです。
糖質は脳と筋肉で90%消費されると言われており、脳だけで60%を消費するとされています。
私たちの体は、眠っている時でさえ、生きるために常にエネルギーを燃やして動き続けています。
ですので、活動量に応じた食事量を日々とっているのであれば、吸収した糖質がグリコーゲンに蓄えられ、順々に消費されるはずです。
グリコーゲンとして蓄えられる量を超えてしまうと脂肪に変換されるため、その量を超えないようエネルギーの収支を丁度良い量に整えてさえいれば、太ることはないのです。
先ほど、私たちの体のエネルギー源となる要素として、炭水化物の他に「タンパク質」と「脂質」があることをお話ししました。
タンパク質や脂質をエネルギー源として体が動いていくことはできます。
ですが、糖質に比べてエネルギーを作り出せる量が少なくて疲れやすくなったり、エネルギーを作り出す過程で体にとって有毒な物質が副産物としてできてしまう、などという面があります。
特に現代は「脂質が多く、炭水化物が少ない」食事の傾向にあります。
炭水化物に含まれる糖質1gの作り出せるエネルギー量は4kcalです。
一方、脂質1gの作り出せるエネルギー量は9kcalで、糖質の約2倍となります。
脂質を多く含む食事を続けていると、それだけカロリーが高くなり、太りやすい原因となります。
炭水化物は脂質に比べてカロリー量が少ないだけでなく、同じ量を食べたとしても腹持ちが良いのも特徴の一つです。
また、炭水化物には糖質と食物繊維の他にも、タンパク質やビタミン・ミネラルといった他の栄養素も多く含まれています。
ビタミンやミネラルは、炭水化物やタンパク質、脂質をそれぞれエネルギーに変える際に必要となる重要な要素です。
炭水化物にはその栄養素が糖質と一緒に含まれているため、効率よくエネルギーに変換することができるため、やはり太りにくいと言うことができます。
炭水化物の摂り方によっては太る可能性もある
3大栄養素のうち、「炭水化物が最も効率良いエネルギー源であり、太らない」ということを、体のメカニズムから解説しました。
ですが、やはりその炭水化物の摂り方によっては太る可能性はあります。
その摂り方は以下の2点です。
- 炭水化物の過剰な摂取
- 中途半端に少ない炭水化物の摂取
まず1点目から見ていきましょう。
先程、「グリコーゲンとしての蓄えられる量を超えてしまうと脂肪に変換される」ということをお伝えしました。
グリコーゲンとして肝臓や筋肉に貯蔵できる量には限界があります。
特に筋肉の少ない人は、貯めておくタンクが少ないため、貯蔵できる量も少なくなります。
貯蔵できずに余ってしまった糖質は、脂肪に変換されます。
これが「中性脂肪」です。
中性脂肪は血液中を漂っていますが、そのままエネルギー源として使われることがない場合は、体脂肪として蓄積されてしまいます。
つまり、日常で使用するエネルギー量以上に食事から糖質を摂取してしまうと、貯蔵できるグリコーゲン量をオーバーして中性脂肪が増えて体脂肪となる可能性が高い、ということになります。
逆に言うと、使うエネルギー量と取り込むエネルギー量を丁度良い量に整えてさえいれば、太る可能性は限りなく低くなるのです。
次に2点目を見ていきます。
「余ったグリコーゲンは中性脂肪に変換される」ということを述べました。
実は厳密にいうと、糖質が中性脂肪に変換される際には、脂質も必要となります。
私たちは、炭水化物のみを食事でとるという場面はほとんど無く、大抵脂質やタンパク質も同時に摂取しています。
もちろん糖質よりも脂質の方が中性脂肪には変換されやすいのですが、食事内容によっては糖質が中性脂肪に変換されやすいことも分かっています。
それが、食事全体をみた時のそれぞれの割合が「炭水化物49%・タンパク質16%・脂質35%」という食事内容です。
炭水化物が食事全体の50%を切ってしまうと、脂質がエネルギー源として使用される傾向にあります。
そうなると、脂質の量が増えて中性脂肪になりやすいですし、エネルギー源として使用されないで糖質が余ってしまい、脂質とくっついて中性脂肪へと変換されてしまいます。
つまり、中途半端に炭水化物を減らすと脂質と糖質の両方から中性脂肪が増え、そのまま使われずに体脂肪として身に付いてしまい、太りやすい体へとなってしまうのです。
正しい炭水化物の摂取量
ここまで、炭水化物は適切な量を正しく摂った場合には太らない、ということについて詳しく見てきました。
この「適切な量」と「どのようにして摂取するか」という点が、気になるところだと思います。
この章では、その2点について詳しく見ていきます。
読み進めながら、自分の場合に当てはめて適切な量を割り出してみてください。
そして正しい摂取方法をイメージしながら読み進めてみてください。
1日に必要とされる炭水化物の摂取量
「適切な量」とは、自分に見合った炭水化物の量ということになります。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、
「炭水化物から摂取するカロリーは1日に摂取するカロリー全体の50~65%にする」
という目標量が設定されています。
ということは、炭水化物の適切な量を求めるにあたり、まず自分の「1日の摂取カロリー」を把握する必要があります。
「1日に摂取すべきカロリー=推定エネルギー必要量」は、性別や年齢の他に、身体活動レベルによって異なっており、下表を参考に確認することができます。
しかし、実際には性別や年齢だけではなく、一人ひとり身長や体重も異なります。
より正確な値を把握したい方は、「メディカルズ本舗」というサイトで算出されることをおすすめします。
方法としては、
- 性別、年齢、身長、体重を入力する
- 身体活動レベルを選択する
という2段階で入力するだけです。
すると自動的に標準体重、BMI、基礎代謝、推定エネルギー量が算出されます
メディカルズ本舗を参考にしてみたい方は、下記をご参考ください。
推定エネルギー必要量が求められたところで、本題の「適正な炭水化物の量」を求めていきましょう。
推定エネルギー必要量(kcal)に対して、適切な炭水化物の量は、その50~65%でした。
炭水化物は1グラム当たり4kcalのエネルギーを作り出すことができます。
ということは、推定エネルギー必要量の50~65%の値を4で割った数値が、適切な炭水化物の量(g)ということになります。
【適正な炭水化物の量(g)=推定エネルギー必要量(kcal)×(0.5~0.65)÷4(kcal)】
分かりやすく、先ほどの表の「推定エネルギー必要量」を参考にして、実際に数値を当てはめて計算してみましょう。
〔35歳女性デスクワーク・週4回仕事後にジム通い〕で算出する場合
(推定エネルギー必要量:2050kcal)×(0.5~0.65)÷4=256~333g
この場合、適正な炭水化物の量は1日あたり256~333gということになります。
ここで注意していただきたい点が一つあります。
「炭水化物」というと「ごはん、パン、ラーメン、うどん、そば、さつまいも」などを想像されると思います。
これらの食材や食品の重量をそのまま炭水化物の量として当てはめるのではありません。
ここで言う「炭水化物の量」とは、「食材に含まれている炭水化物の量」のことを指します。
例えば、ごはん100g中に含まれる炭水化物の量は、37.1gです。
このように食材の中に含まれる炭水化物の量を割り出して、その合計が1日あたりの適正量に収まるよう食べることが大切なのです。
【出典:メディカルズ本舗】
自分に適切な摂取量に達するための方法
自分に適した炭水化物の量を把握できたら、今実際に摂っている炭水化物の量との差を計算しましょう。
- 適正量よりも多く摂っている
- 適正量に達していない
どちらでしたか?
どちらであったかで、適切な摂取量に持っていくための方法は異なってきます。
その方法について、順に見ていきましょう。
① 適正量よりも多く摂っている場合
まず、炭水化物をなにで、どのくらい多く摂っているのかを確認しましょう。
そこから何をどのくらい減らしていくのが良いかを見極めます。
もしもかなり摂り過ぎていたとしても、いきなり適正量まで減らすことはしません。
急に減らすと体がその変化についていけず、体調不良を起こす可能性がありますので、少しずつ減らしていくことが大切です。
② 適正量に達していない場合
炭水化物の量が足りていない人は、1日の摂取カロリー自体が適正量に達していないパターンが多いです。
まず、自分の推定エネルギー必要量と実際の摂取カロリーを比較してみましょう。
推定エネルギー必要量に達していない場合、炭水化物だけではなく、カロリー全体を見直していく必要があります。
もし摂取カロリーが達していたとしても、炭水化物量の増やし方はほぼ同じになりますので、一緒に見ていきましょう。
まずは、実際に自分が食事でどのくらいカロリー摂取できているのかを求めてみましょう。
計算する方法は様々ですが、今は計算できるアプリなどもあります。
こちらでは、「カロリーSlism」という簡単に計算できるサイトをご紹介します。
食べた食材や調味料を入力すると、自動的に栄養素を計算してくれます。
1食ごとに入力して確認しても良いですし、1日の食事全体を一度に入力して計算しても良いです。
カロリーSlismを参考にしたい場合は、下記をご参照ください。
次に、推定エネルギー必要量と自分の1日の摂取カロリーを比較し、その差を求めます。
「どのくらい足りていないか=増やすべきカロリー数」を確認しておきましょう。
確認出来たら、さっそく1食ごとにカロリーを増やしていきます。
ここで大切なことは、【徐々に増やしていく】ということです。
①でも説明しましたが、急に増やすと体がその変化についていけず、体調不良を起こす可能性があります。
症状は人によって様々ですが、主に「胃腸症状」と「耐糖能症状」の2つの症状が見られます。
胃腸症状は想像しやすいと思いますが、耐糖能症状とは何でしょうか?
食事で糖質が体内に入ってきた時に処理できる力があれば、消化・吸収がスムーズに行われます。
しかし、あまり糖質を摂らない食生活をしていると、その力が衰えてしまい、うまく消化吸収できずに体に不調が現れます。
カロリー100~200kcal程度を目安に、体調を確認しながら少しずつ増やしていきましょう。
その際に、次のような症状がみられる場合は、増やす量を減らし、体調の回復を待ちます。
【胃腸症状】
- 消化不良
- 腹部膨満感
- 下痢
- 便秘
- ゲップ
- おなら
- 腹痛 など
【耐糖能症状】
- 食後2時間ほど経過しての眠気
- だるさ
- 集中力の低下
体調に問題がないようであれば、週に100~200kcalずつ増やしていきます。
その際は、必ず体調を確認しながら増やしていきましょう。
今回は「適正な炭水化物の量」を目指しての増量ですので、カロリーを増やす際に炭水化物をメインとして、タンパク質と脂質も含めバランスよく増やすことになります。
100~200kcalすべてを炭水化物で増やすと、人によっては食事全体の栄養バランスを崩す可能性もありますので、具体的な数値を載せることはできません。
ですが、ここまでの計算方法を振り返ることで算出することができます。
一度計算して正しい量を目で見て確認してみましょう。
【出典:カロリーSlism】
取り入れたい炭水化物食材
一口に「炭水化物」と言っても様々な食材があります。
先にご説明したように、食べ方によっては炭水化物も太る可能性はあります。
ここでは太らない炭水化物として取り入れたい3種類の食材についてご紹介していきます。
- 食物繊維を多く含む食材
- レジスタント・スターチを含む食材
- ビタミンB1を含む食材
これら3種類の食材について、なぜ取り入れたいのかを順に解説していきます。
まず1.食物繊維を多く含む食材について見ていきましょう。
炭水化物は、エネルギー源となる糖質と食物繊維から成ることを上で述べました。
実は食物繊維も「炭水化物が太らない」ということに深く関係しています。
食物繊維は、糖質とは違ってほとんど消化器官で消化吸収されることがありません。
ですので、食物繊維を含む炭水化物は基本的に吸収されるまでに時間がかかり、その吸収は穏やかに行われます。
血糖値の吸収が穏やか、ということは、血糖値の急上昇を防ぐこととなります。
糖質を摂ることで血糖値が急上昇すると、その次に血糖値が急降下してしまいます。
そうなると、体がまたすぐに糖質を欲して食べてしまう為、急上昇と急降下を繰り返す「血糖値の乱高下」が起こることとなります。
そうなってしまうと、糖質を適切に処理する力が弱ってしまい、糖質をうまくエネルギー源にできず脂肪へと変えられてしまうこととなります。
また、実際には空腹の状態でないのに食べてしまうことにもなり、太ることへとつながります。
食物繊維自体、食欲をコントロールする消化管ホルモンの分泌に関わっているため、やはり食物繊維は積極的にとりたい要素です。
次に2.レジスタント・スターチを含む食材について見ていきます。
レジスタント・スターチは「難消化性でんぷん」とも呼ばれています。
その文字の通り、消化されないでんぷんという意味で、糖質であるにもかかわらず、食物繊維と同じような働きをします。
1.の解説でも述べましたが、食物繊維はほとんど消化されずに消化器官を通過して大腸へと到達するため、糖質の消化吸収が穏やかとなります。
レジスタント・スターチも同様に、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
食材に含まれているレジスタント・スターチは、加熱することで大幅に減りますが、冷めると再び増えます。
白米やさつまいもなどに多く含まれているとされていますので、冷ごはんや蒸かしたり焼いたさつまいもが冷めた状態で食べることで、レジスタント・スターチとして効率的に摂取することができます。
最後に3.ビタミンB1を含む食材について見ていきましょう。
第1章で「ビタミンやミネラルは、炭水化物やタンパク質、脂質をそれぞれエネルギーに変える際に必要となる重要な要素」ということについて軽く触れました。
炭水化物の糖質をエネルギーに変える際に必要とされるものはビタミンB1です。
食事の際に、炭水化物と一緒にビタミンB1を含む食材を摂取すると、エネルギー変換しやすくなります。
ですが、炭水化物の中にもビタミンB1を含む食材もあります。
炭水化物を摂取する中で糖質とビタミンB1を併せて摂取できるとなると、一緒に摂取する他の食材の栄養素を気にかけて組み合わせる必要がなく、献立を考える際に頭を悩ませずに済みます。
炭水化物には様々なものがあります。
これらの食材を意識することで、炭水化物をより安心して楽しむことができます。
優秀とされるおすすめの炭水化物食材
ここまで、炭水化物の太らない摂り方や、太りにくい取り入れ方について見てきました。
取り入れたい食材の特徴についても見てきましたので、具体的な食材をこちらでご紹介していきます。
まず、食物繊維を多く含む食材からご紹介します。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、「食物繊維を手軽に取り入れたい場合は、主食の穀類からとる方法が良い」と推奨されています。
一日のうちの1食の主食を、玄米ごはん、麦ごはん、胚芽米ごはん、全粒小麦パンなどに置き換えると、効率的に食物繊維が摂取できます。
穀類以外にもお勧めの食材はたくさんありますので、下記を参考にしてみてください。
- 穀類:玄米、胚芽米、大麦、全粒粉、ライ麦、そば
- 芋類:さつまいも、しらたき
- 野菜類:切り干し大根、かぼちゃ、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ
- 豆類:納豆、インゲン豆、小豆、おから
- きのこ類:しいたけ、まいたけ、えのきたけ、ぶなしめじ
- 海藻類:わかめ、ひじき
- 果実類:全般的に
現在、日本人の多くが食物繊維不足と言われています。
炭水化物の摂取の際に、食物繊維を多く含む食材を意識して摂取することは、食事全体からも大切であるといえます。
次に、レジスタント・スターチを含む食材をについてご紹介します。
上でも述べましたが、一般的にレジスタント・スターチは一度加熱して冷めたものに多く存在します。
食材そのものにもともと含まれている成分ですが、多くの食材は一度加熱することで、その含有量が増加します。
- 穀類:オーツ麦、玄米、全粒粉、そば、アワ
- 芋類:長芋、じゃがいも、さつまいも、
- 豆類:大豆、小豆、黒豆、インゲン豆
- 果実類:アボカド、バナナ
これらは食材の中でも、レジスタント・スターチを多く含む食材ですが、バナナは熟したものよりも青い未熟のものに多く含まれているとされています。
最後にビタミンB1を含む炭水化物をご紹介します。
炭水化物でビタミンB1を多く含む食材としては、パン酵母や米ぬか、小麦胚芽などが挙げられます。
他に、納豆や豆腐などの大豆製品やグリーンピースなどの豆類にも含まれているとされています。
ビタミンB1を多く含む食材となると、やはり豚肉やウナギなどの肉や魚類に多く、炭水化物の食品では少ないイメージです。
ですが、例えば「米ぬか」に含まれているとすれば、米ぬかのついている玄米や、米ぬかで作られるぬか漬けなどもビタミンB1が含まれる炭水化物食品ということになります。
パン酵母や小麦胚芽に含まれるのであれば、全粒穀物やパン酵母で作られたパンでもビタミンB1を摂取することができる、ということになります。
穀類で考えると、生成されていない全粒の米や小麦製品からビタミンB1を摂取することができる、と捉えておくと食材を選びやすいことが分かります。
優秀な炭水化物として3つの面からご紹介してきましたが、共通して出てくる食材がいくつもあることにお気づきだと思います。
玄米や小麦胚芽などの全粒穀物は全てに共通して名前が出てくる優秀な炭水化物です。
そして、毎食の主食として取り入れやすい食材でもあります。
厚生労働省も推奨してるように、1日のうち1食でも白米に変えて取り入れてみると良いでしょう。
その際に温度にも気を配ってレジスタント・スターチの多い形で摂取する、という工夫を入れてみるのも一つの方法です。
また、これらの食材を「間食」として取り入れてみるのも良い方法です。
玄米のおにぎりや全粒粉パンでのサンドイッチ、冷やし焼き芋など、お手軽に食べられるものも少なくありません。
少しの工夫で、炭水化物は太らない、おいしい味方となります。
【出典】
ダイエット中の炭水化物との付き合い方
ここまでの解説を読み進める中で、炭水化物は太らない、ということがよくご理解いただけたのではないでしょうか?
ただし、ダイエット中に炭水化物を摂るのはやはりまだ気が引ける・・・
という方もいらっしゃると思います。
ダイエット中の炭水化物の摂取はどのようにしたらよいのか?
その方法をこちらでご紹介していきます。
まず一つ目に注意していただきたいのは、ダイエット中だからと言って炭水化物を控えることは絶対にやめましょう。
炭水化物がエネルギー源として必要なことは述べてきましたが、炭水化物が不足すると、
- 筋肉量が減り代謝が落ちる
- 血糖値が乱れる
- リバウンドしやすくなる
- 長期的に継続することで体調を崩しやすくなる
などの問題が起きてきます。
ダイエット中であっても炭水化物は必ず摂りましょう。
その際に、以下の4つのポイントに従って炭水化物を選んでいくと良いでしょう。
- GI値の低いものを選ぶ
- 栄養バランスを整える
- 腹持ちの良い食材を選ぶ
- 低脂質なものを選ぶ
まずGI値について見ていきます。
「GI値」とは、その食材を食べた時の血糖値の変化の度合いを示した指標です。
数値が低いほど、血糖値の上昇は緩やかであり、数値が高くなるほど血糖値の上昇が早くなります。
血糖値については食物繊維の解説の際にも述べましたが、より緩やかに上昇することが大切です。
炭水化物を選ぶ際にはGI値の低いものを選び、血糖値の乱高下が起こらないよう気をつけましょう。
GI値が低いとされる食材は以下のものになります。
- 玄米
- おかゆ(白米)
- オートミール
- ライ麦パン
- 全粒粉パン
- そば
- さつまいも
- 果物
次に、栄養バランスを整えることについて、解説していきます。
ダイエット中は減量のためなどで通常の食事よりも量を減らすことになると思います。
その中でなるべくカロリーの低いものばかりを選んで食事をすると、体に必要な栄養素が不足し、ダイエットがうまく進まない原因や体調不良を招く原因となる可能性があります。
ダイエット中であっても、炭水化物はもちろん、栄養バランスを整えておくことはとても大切です。
炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素の良い比率を保ちつつ食事量を増減させることがポイントとなります。
厚生労働省によると、食事全体におけるそれぞれの割合は、
- 炭水化物:50~60%
- タンパク質:13~20%
- 脂質:20~30%
が適正であるとしています。
「体重を気にして極端に炭水化物を減らす」
「代謝を上げるために筋肉をつけようとタンパク質過多の食事をする」
「ケトジェニックなどのダイエット方法で脂質やタンパク質過多の食事スタイルにする」
など、偏ったダイエット食事を行うと、本来の目的であるダイエットとはかけ離れた結果を招いてしまいかねません。
バランスの取れた食事こそ、ダイエットの近道であるということができます。
次に、腹持ちの良い炭水化物を選ぶ、という点についてです。
優秀な炭水化物にもいろいろな種類がありました。
これらをダイエット中に取り入れるのも良いのですが、食後数時間でまた空腹が来てしまうと、その分食べる量が多くなり、ダイエットにならない、ということになりかねません。
なるべく腹持ちの良いものを選び、効率的にダイエットを進めていきたいところです。
うどんやパンなどの小麦製品は比較的腹持ちが悪いとされています。
ですので、ダイエット中はこれらをなるべく避け、玄米などの米類やイモ類などを選ぶようにすると良いでしょう。
食物繊維を多く含む食材は、消化に時間がかかるため腹持ちが良く、食べ過ぎを防ぐことにもつながります。
最後に、低脂質なものを選ぶという点について見ていきます。
炭水化物の食材自体には脂質はそこまで多く含まれていません。
ですが、調理方法によっては脂質を多く摂取することにもなります。
例えば、お米は通常水で炊飯して食べます。
ですが、チャーハンやリゾットという形に調理すると、調理油やベーコン、豚バラ肉、チーズなど脂質の多い食材や調味料を一緒に摂ることとなり、結果的に脂質を多く摂取することとなります。
特に、炭水化物の中でもパンやパスタなどの麺類は脂質が高くなる調理が多い為、ダイエット中には気を付けた方が良いでしょう。
まとめ
炭水化物は太らないという点について、体の仕組みから解説し、正しいとり方や取り入れたい食材などについて詳しく見てきました。
ダイエット中であっても、通常の生活であっても、炭水化物は私たちの体には欠かせない大切な食材であり栄養素です。
炭水化物はもちろん、どのような食材であれ、摂り過ぎは太る原因になります。
自分の体に適した量を適した形で食べることが何よりも大切だということが、この記事を通してご理解いただけたかと思います。
炭水化物を食べると太る、糖質制限がダイエットに効く、などという情報にはもう翻弄される必要はありません。
自分自身の体の仕組みから理解して、何が正しいのかを判断したうえで、炭水化物を安心して食べていただけるようになっていることを願っています。
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