食事療法でのタンパク質摂取量を徹底解説!適量摂取のコツと注意点

一般社団法人臨床栄養医学協会

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当臨床栄養医学協会では、生化学及び生理学に基づく栄養学に関する正しい知識の普及と、ビジネス化推進を行います。
「知識を得る」「資格取得」だけではなく、必要な経験・実績を積むことでビジネス化をサポート致します。

食事療法におけるタンパク質の適切な摂取は、健康維持と体調管理の要となります。

タンパク質は体の組織を作る重要な栄養素であり、その摂取量は個人の状態に応じて決定する必要があります。

 

この記事では、食事療法に取り組む方々に向けて、タンパク質摂取の適切な量や方法、そのはたらきや食材ごとの目安量について詳しく解説します。

さらに、実践的なレシピも紹介し、バランスの取れた食生活の実現をお伝えします。

 

食事療法の適切なタンパク質摂取量とは

MEC食とは、高タンパク食であり高脂質食

適切なタンパク質量とは、運動量によって変わってきます。

 

身体は全身筋肉で覆われていることからわかるように、身体のタンパク質はほぼ筋肉にあります。

だから、身体を動かせばより筋肉に負荷がかかって筋合成が高まり、動けば動くほどタンパク質の消費量が増えるんですね。

つまり、運動量によって左右されるということになります。

 

厚生労働省や研究で実際にどの程度のタンパク質摂取量が必要とされているか確認していきましょう。

 

適切なタンパク質摂取量

厚生労働省が出している『身体活動レベル別に見たたんぱく質の目標量(g/日) (非妊婦、非授乳婦)』というのが以下の表です。

※特定の疾患の管理を目的としてタンパク質摂取量の制限や多量摂取が必要な場合は、以下の基準値ではなく、医師の指示を優先してください。

  • 身体活動レベルⅠ:生活のほとんどが静かな活動で占められている状態。
  • 身体活動レベルⅡ:生活の中で適度な体を動かす活動がある状態。
  • 身体活動レベルⅢ:生活の中で多くの体を動かす活動がある状態。

 

出典:日本人の食事摂取基準(2020 年版)

 

適切なタンパク質摂取量の計算方法

個々の健康状態や目標に応じた栄養管理を行うためにタンパク質の摂取量を計算するのは非常に重要です。

適切なタンパク質摂取量の計算は、個々の体重、活動レベル、健康状態や目標に応じて行われます。

これにより、健康を維持し、目標を達成するための効果的な栄養管理が可能となります。

 

より個人に合うように体重1kgあたりで計算できる指標がこちらです。

運動量タンパク質摂取量(1日当たり)
【活動量Ⅰ】
  デスクワーク中心でスポーツもしない
0.8~1.0g/体重㎏
【活動量Ⅱ】
  デスクワーク中心だが、たまにスポーツをする
0.8~1.2g/体重㎏
【活動量Ⅲ】
  週3~5回は遊び程度のスポーツをする
1.0~1.4g/体重㎏
【活動量Ⅳ】
  週3~5回は本気のスポーツをする
1.2~1.6g/体重㎏
【活動量Ⅴ】
  高強度の運動をしている(筋トレなど)
1.4~1.8g/体重㎏

 

運動量タンパク質摂取量(1日当たり)
時給系トレーニングを行っている1.2~1.4g/体重㎏
筋トレ(状態維持期)1.0~1.4g/体重㎏
筋トレ(増強期)1.6~1.7g/体重㎏
筋トレ(初心者)1.5~1.7g/体重㎏

 

参考: Sports Nutrition by Ronald J., page 30, 2002

 

タンパク質摂取のポイント 

肉・魚・卵・大豆・乳製品など、さまざまな食品からタンパク質を摂ることが大切です。

 

さまざまな食品を摂ることで、ビタミンやミネラルなど体に必要な他の栄養素も同時に補給でき、偏りなく栄養を摂取できるからです。

 

健康志向の高まりとともに、鶏むね肉やマグロなど、低脂質の食材ばかりを選んでしまうケースがあります。

しかし、これではタンパク質と脂質の量にしか注目していませんよね。

 

また、穀物も見逃せない食材です。

米や小麦にもタンパク質が含まれており、肉や魚には含まれていない食物繊維も摂取できるため、積極的に取り入れたい食品です。

 

タンパク質は一つの栄養素に過ぎません。

もちろんタンパク質が不足してはいけませんが、その他のビタミン・ミネラルも不足しないようさまざまな食品を摂り、栄養の偏りなく体に必要な栄養素を十分に摂取しましょう。

 

現代のタンパク質摂取量 

世間では、タンパク質はいくら食べてもいいとか、タンパク質摂取不足だからたくさん摂らなければいけないといった情報が多くあります。

 

実際のところはどうなのでしょうか。

PFCバランスの年次推移を見ると、近年タンパク質の割合は変わっていません。

令和元年に実施された国民健康・栄養調査によると、日本人の1日のタンパク質摂取量の平均値は以下のとおりです。

  • 成人男性:78.8g/日
  • 成人女性:66.4g/日

この数値は、いずれも推奨量を上回っています。

 

年齢層別に見ても、平均値は推奨量を超えているようです。

このデータから考えると、タンパク質は日本人にとって特に不足している栄養素とは言えず、むしろ、全体的には十分な量を摂取できていると言えるでしょう。

 

参考:厚生労働省「令和元年国民・健康栄養調査報告」

 

タンパク質の不足や過剰のリスク

タンパク質は体にとって重要な栄養素ですが、その摂取量が不足または過剰になると、健康に様々なリスクをもたらす可能性があります

 

適切な量のタンパク質摂取が健康維持には不可欠です。

この章ではタンパク質の不足・過剰のリスクを紹介します。

 

タンパク質不足のリスク

個人差があるため、自分の生活習慣や体格、活動量に応じて適切な摂取量を考える必要があります。

特に以下のような方は、タンパク質不足になりやすく注意が必要です。

  • 高齢者
  • ダイエットしている、朝食を食べない、1日2食
  • アスリートや激しい運動をする人

 

タンパク質不足になると、体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があるので、以下に主なリスクを説明します。

  • 筋肉量の減少
    タンパク質は筋肉を構成する主要な成分です。
    タンパク質が不足していると、筋トレをしても体は筋肉を分解してエネルギー源として使い始めるため、筋肉がつきません

 

  • 免疫力の低下
    タンパク質は免疫細胞の生成に必要です。
    タンパク質が不足すると、免疫系が弱まり、感染症にかかりやすくなったり、病気からの回復が遅れたりする可能性があります。

 

  • 成長と発育の遅延
    特に子どもや青少年にとって、タンパク質は成長や発育に必要な栄養素です。
    タンパク質不足は、身長や体重の成長が遅れる原因となり、発育不良を引き起こす可能性があります。

 

  • 肌、髪、爪のトラブル
    タンパク質は肌、髪、爪の健康を保つために必要です。
    不足すると、肌が乾燥しやすくなったり、髪が薄くなったり、爪が割れやすくなることがあります。

 

  • 慢性的な疲労と集中力の低下
    タンパク質はエネルギーを持続させ、脳の機能をサポートします。
    不足すると、疲れやすくなり、集中力や記憶力が低下する可能性があります。

 

  • 水分バランスの乱れ
    タンパク質は体の水分バランスを維持するのに役立ちます。
    タンパク質不足が続くと、むくみ(浮腫)が発生することがあります。

 

  • 傷の治りが遅くなる
    タンパク質は体の修復や再生に必要です。
    傷やけがをしたとき、十分なタンパク質がないと治癒が遅くなります。

 

  • 精神的な影響
    タンパク質は脳内の神経伝達物質の生成にも関与しています。
    不足すると、気分が落ち込みやすくなったり、うつ状態になるリスクが増加します。

 

タンパク質不足は、体全体の機能に深刻な影響を与える可能性があるので、健康を維持し、体の機能を正常に保つためには、適切な量のタンパク質を摂取することが非常に重要です。

 

タンパク質過剰のリスク

これまでで、タンパク質不足が体に悪影響を及ぼすことをわかっていただけたと思いますが、実は、タンパク質過剰も体に悪影響を及ぼす可能性があります

以下に、タンパク質の過剰摂取による主なリスクを説明します。

 

  • 瞬発的な運動パフォーマンスの低下
    100m走やダンベル上げなどの瞬発的にエネルギーを使う動作では、白筋(速筋)を使います。
    白筋では解糖系という糖質を多く使うエネルギー産生が中心となります。
    タンパク質過剰摂取によって炭水化物摂取の割合が減ると、解糖系でエネルギーを作りづらくなりパフォーマンスが低下してしまいます。

 

  • 疲れやすさ、つりやすさ、筋収縮不全
    筋収縮の伝達をしやすくするために、細胞は細胞内外で電解質濃度差を保っています。
    電解質濃度差を保つために働いているのがナトリウムポンプですが、これには解糖系のエネルギー代謝が必要です。
    タンパク質過剰摂取によって炭水化物摂取の割合が減ると、解糖系でエネルギーを作りづらくなり、電解質濃度が崩れやすくなってしまい疲れやすさや、つりやすさ、筋収縮不全を引き起こします。

 

  • 糖新生による肝臓・腎臓への負担
    タンパク質摂取過剰により糖質量が相対的に少なくなると、糖を必須エネルギー源にしている脳や赤血球に送る糖が少なくなります。
    すると、糖新生(筋肉などから糖を作り出す)がおこり、その過程で肝臓や腎臓に負担をかけてしまうことになります。

 

  • 脳機能の低下(集中力低下、意欲低下、眠気など)
    タンパク質の過剰摂取は、糖質量が少なくなるので脳機能が低下しやすくなります。
    最初のうちは貯蔵されたグリコーゲンの使用や、糖新生により脳機能低下は抑えることができる場合があります。
    しかし、長期間行うと症状が出やすくなるので注意が必要です。

 

  • エネルギー切れが早い
    タンパク質を多く貯蔵する場所がないので、1回に多く取りすぎても意味がありません。
    血中に貯められる量は50kgの人で50g程度しか貯蔵できないと言われているので、すぐにエネルギーが枯渇してしまいます。

 

  • アンモニア発生
    タンパク質には窒素が含まれていて、タンパク質を消費するとアンモニアが発生します。
    アンモニアを解毒し無害な尿素に変えるために肝臓に負担をかけ、エネルギー産生量を低下させてしまいます。

 

  • 赤身肉(牛肉・ラム肉・馬肉・鹿肉)によるリスク
    赤身肉にはヘム鉄が多く含まれており、現代人の食生活ではオメガ6脂肪酸の摂取量が増加しています。
    これにより、体内で過酸化水素が酸化されやすくなり、鉄を介してヒドロキシラジカルのような悪性の活性酸素が生成されます。
    これが死亡率の上昇やガンのリスクになると言われ、さまざまな疾患に関与していると考えられます。
    また、現代人の多くは腸内細菌叢のバランスが悪化して、高脂肪・高タンパク質の食事や抗生物質の使用がその要因とされています。
    さらに、カンジダ菌は鉄を好むため、体内の鉄が多いとこれらの菌が増殖しやすくなる可能性もあります。
    参考:BMJ.2019 Jun 12;365:12110
       Asia Pac J Clin Nutr.2011;20(4):603-12

 

  • 大型魚による水銀摂取リスク
    アジア圏は世界的にも水銀汚染されているので、食物連鎖上位のマグロなどをよく食べる人は水銀摂取量が過剰にならないように注意する。
    食品安全委員会より示されている耐容量は2.0μg/kg体重/週 (妊婦は1.60μg/kg体重/週)

 

タンパク質は健康に不可欠ですが、過剰に摂取すると腎臓への負担や糖尿病、心血管疾患リスクなど、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。

バランスの取れた食事を心がけ、適切な量のタンパク質を摂取することが大切です。

タンパク質の摂取量が気になる方は、かかりつけ医や栄養士に相談するのがおすすめです。

 

タンパク質のはたらきとは

タンパク質は、20種類のアミノ酸が多数結合した高分子化合物で、体を構成するために多くの重要な機能を果たします

 

以下はその主なはたらきです。 

  • 構造的役割
    タンパク質は細胞や組織の構造を形成します。
    例えば、コラーゲンは皮膚や骨の主要な構成要素です。

 

  • 酵素としての役割
    酵素は化学反応を促進する触媒として働きます。
    ほとんどの生化学反応は酵素によって制御されています。

 

  • 輸送と貯蔵
    タンパク質は分子やイオンを輸送する役割を果たします。
    例えば、ヘモグロビンは酸素を血液中に運びます。

 

  • シグナル伝達
    受容体タンパク質は細胞間のコミュニケーションに重要です。
    これにより、細胞は外部のシグナルに反応できます。

 

  • 防御と免疫
    抗体は病原体を特異的に認識し、中和する役割を持ちます。
    また、フィブリンは血液凝固に関与します。

 

  • 運動
    アクチンやミオシンといったタンパク質は筋肉の収縮を助けます。

 

  • 調節
    タンパク質は遺伝子の発現を調節することで、細胞の機能を制御します。

 

体内のタンパク質は常に分解と合成を繰り返しています

一部は体外に排出されるため、食事からの補給が必要です。

 

タンパク質の適切な摂取は、健康的な体づくりの基礎となるので、食事のバランスを考え多様な食品からタンパク質を摂取することが大切です。

 

各食材のタンパク質目安量 

体を根本的に良くしていくには栄養の知識が必須

タンパク質は多様な食材から摂取することができます。

肉や魚はもちろん、大豆製品、乳製品、卵、さらには穀物まで、日常的に口にする多くの食品にタンパク質が含まれています。

 

各食材にどれくらいのタンパク質が含まれているかを知ることは非常に重要です。

日常的によく使う食材のタンパク質含有量をまとめた早見表を参考に、食事バランスを見直してみましょう。

 

食品タンパク質量
牛肉(100gあたり)
  脂身が多い約10~15g
  脂身が少ない約15~25g
豚肉(100gあたり)
  脂身が多い約15~20g
  脂身が少ない約20~25g
鶏肉(100gあたり)
  脂身が多い約10~20g
  脂身が少ない約15~25g
(100gあたり)
  サンマ、イワシ、サバ約15~20g
  マグロ、ブリ、カツオ、鮭約20~30g
  シラス約15g
乳製品
  プロセスチーズ(スライス1枚18g)約5g
  ヨーグルト(小鉢1杯120g)約5g
  牛乳(1杯120g)約6~8g
豆製品・卵
  豆腐(1パック50g)約20g
  納豆(1パック50g)約8~10g
  卵(1個60g)約6~8g
穀類・野菜
  白米(1膳160g)約4g
  食パン(6枚切り1枚60g)約5~6g
  じゃがいも(1個135g)約2~3g
  さつまいも(1個200g)約6~8g

 

筆者推薦!食事療法におすすめのレシピ3選

食事療法は健康維持や特定の症状改善に効果的ですが、同時においしく栄養バランスの取れた食事を楽しむことも大切です。

ここでは、健康的でありながら美味しさも兼ね備えた、食事療法におすすめのレシピを3つご紹介します。

これらのレシピは、栄養価が高く、調理も比較的簡単なものばかりです。日々の食事に取り入れやすいので、是非作ってみてください。

 

鶏とブロッコリーのハニーマスタード炒め

柔らかな鶏もも肉をカリッとジューシーに焼き上げ、シャキシャキのブロッコリーと甘みのある人参が、お肉との相性抜群です。

粒マスタードの粒々の食感とピリッとした辛みが、はちみつの甘さと絶妙にマッチします。

 

タンパク質量 約27.5g

参考:鶏とブロッコリーのハニーマスタード炒め

 

サーモンとアスパラのオーブン焼き

ジューシーなサーモンを主役に、シャキシャキのアスパラ、甘みのあるかぼちゃ、彩り豊かな人参(またはパプリカ)が目をひきます。

レモンの爽やかな酸味が、全体の味わいを引き立てます。

 

タンパク質量 約21g/1人分

参考:サーモンとアスパラのオーブン焼き

 

豆腐ステーキのきのこソースかけ

木綿豆腐のしっとりとした食感と、ぶなしめじ、えのきたけの歯ごたえが絶妙にマッチします。

にんにくとしょうがの香りが食欲をそそります。

ヘルシーでありながら、驚くほど満足感のある一品です。

 

タンパク質量 約14g/1人分

参考:豆腐ステーキのきのこソースかけ

 

ここまで読んでいただいて、栄養療法でのタンパク質摂取量のコツや注意点を理解していただけたと思います。

適切なタンパク質摂取は健康維持に不可欠であり、栄養学の基礎知識は日々の食生活改善に役立ちます

 

臨床栄養医学協会の栄養講座に参加することでタンパク質だけではなく、バランスの取れた食生活を実践するための幅広い知識を得ることができます。

是非、この機会に栄養学を学び健康的な生活を送るための一歩を踏み出してみましょう。

 

参考: 臨床栄養医学協会 

 

まとめ 

まとめ

食事療法で健康的な生活を実現するためには、タンパク質を含む多様な食材をバランスよく摂取することが重要だとお分かりいただけたと思います。

自分の体調や生活リズムに合わせて、無理のない範囲で取り組むことが長続きのコツです。

たとえ完璧でなくても、少しずつ改善していく姿勢が大切です。

健康的な食生活は、より充実した毎日につながります。この記事を参考にぜひ日常生活に役立ててみてください。

 

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