現在、理学療法士の平均年収は463万円です。
この額は他の職種の平均年収と比べるとやや低くなっています。
- 薬剤師 583万円
- 診療放射線技師 544万円
- 臨床検査技師 509万円
- 看護師 508万円
- 理学療法士 431万円
- 介護福祉士 363万円
また、理学療法士の給料はここ何十年と大きく変わっておらず、今後この給料がアップしていく可能性は低いと思われます。
実際、将来に疑問や不安を持つ理学療法士はたくさんいるのではないでしょうか?
「人の役に立ちたい」という想いをもって養成校に通い、国家試験に合格していざ理学療法士になってみたものの、待遇が思うように改善されて行かなかったりして自分の将来に不安を感じてしまう人は少なくないと思います。
日本の保険制度自体が少子高齢化社会の影響を受けてひっ迫してきていますので、理学療法士の給料が思うように上昇していかないという現実があります。
しかし、そんな理学療法士の中にも、自身で色々工夫したり手を広げたりして収入をアップさせている人も少なくありません。
どのように工夫すれば収入がアップするのかをご紹介していきますので、是非参考にしてみて下さい。
目次
理学療法士の給料の現状
厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均年収は約431万円です。
初任給は22.85万円で年収292.67万円、その後徐々に昇給して10年目を超えると月給30.59万円で年収443.65万円となり、50歳代でピークを迎えます。
全産業累計の平均年収は約463万円であることから、全産業累計の平均給与額を下回っています。
医療業種のみで見ると、年収が高い順に
- 薬剤師 583万円
- 診療放射線技師 544万円
- 臨床検査技師 509万円
- 看護師 508万円
- 理学療法士 431万円
- 介護福祉士 363万円
となっています。
※理学療法士の平均年齢が他の医療職と比べると若くなっています。(例:看護師よりも5歳程度若い)
平均年齢が低いために年収が安く見えるということもありますので、この点は注意をしてください。
ここまでは、ややデメリットのように感じられることを述べてきましたが、もちろん理学療法士ならではのメリットもあります。
それは、収入が景気に左右されにくいという点です。
病院や介護施設の収入は医療保険や介護保険との関りが強く、職員である理学療法士の給料は大きく変動しにくいです。
金融危機や災害などの非常時にも強い、という点で安定しているといえるでしょう。
”安定した職業”であり、国家資格保持者であるためローンの審査も通りやすい、ということもメリットかも知れませんね(笑)
・出典:令和4年賃金構造基本統計調査
理学療法士の今後の展望
理学療法士の給料は他の職種や業種と比較してもそこまで高くないことが分かりました。
しかし、今後はどうなっていくのでしょう??
将来的に成長が見込める職業であれば、現状がどうであれ期待が持てます。
現在、医療職や介護職の給料を上げようという流れはあります。
ここでは今後の見込みについてお話していきます!
新たな制度の新設
2022年2月より『看護職員処遇改善評価料』という制度が新設されました。
これは看護師の賃上げが目的の制度ですが、理学療法士も含まれます。
この制度に該当した理学療法士は給料アップがありました。
ただ、救急搬送やコロナ対応に携わる施設のみの適応のため、現状恩恵を受けることのできている理学療法士は限られています。
こういった制度が今後増設されるようなことがあれば、給料アップに繋がるということもあるでしょう。
最近は介護職の給料アップの必要性が世間でも叫ばれています。
介護職の給料アップが行われれば、それに付随して医療職の給料アップもあり得るかもしれません。
ただ、医療・介護保険自体に余裕がない状態ですので、新たな制度の新設について期待は持てないといったところでしょう。
理学療法士は数が増えすぎてしまっている
理学療法士の給料は今後大きく変化していくことはなかなか難しいと予想されます。
理由は、希少価値が下がってきていることです。
1990年代には理学療法士は全国で1~2万人程度でした。
しかし、平成11年以降急激に養成校が増加し、理学療法士の数が一気に増加しました。
下の表は理学療法士学校養成施設の入学定員の年次推移です。
出典:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会」
高齢化が進む日本では、理学療法士の需要が高まっていることは確かです。
しかし、現在国家試験の合格者は毎年1万人程度存在します。
【国家試験合格者数】
令和2年度 10,608人
令和3年度 9434人
令和4年度 10,096人
令和5年度 11,312人
今後も年を追うごとに増え続けることが予想されますので、病院や施設などの”雇う側”からすると人材の確保が容易なため、給料は上がりにくくなるというのが現状でしょう。
なお、2040年にはセラピストの供給数が需要数(仕事数)の1.5倍になると言われています。
※現在の理学療法協会の会員数は136,357人(理学療法士の64%程度が加入している)
診療報酬の問題
リハビリ業務は診療報酬制度によって時間単位で診療報酬が定められているため、1日にこなすことのできる仕事の上限が決まっています。
言い換えると、『数をこなして稼ぐ』ということができません。
仕事のスキルが高く、どれだけ効率よく仕事をこなしても報酬が変わらないため給料も変わらないということになってしまいます。
高齢化が進むにつれて医療保険のひっ迫が如実です。
このため、診療報酬は低い方へ改訂されていく傾向にあります。
このため今後も大きな給料アップは期待できないと考えられます。
理学療法士はどれだけ経験や研鑽を積んだとしても、1年目の新人理学療法士と売り上げは同額です。
給料の額だけでなく、こういった点に不満を持つ経験豊富な理学療法士が多いという現実もあります。
給料を上げるためにできること3選
給料アップが診療報酬頼みである以上、勤務先で普通に仕事をこなしていても大きな変化は期待できそうもありません。
そこで、自力で給料をアップさせる方法を探っていきましょう!
ここでは、次の3つの方法について詳しく解説していきます。
・転職する
・副業をする
・スキルアップをはかる
転職する
単純に今よりも給料の高いところ、昇給率の高いところに転職できれば給料はアップします。
仮に今よりも年収で50万円高い職場に転職したとします。
そうすると、10年で500万円、30年で1500万円変わることになります。
一度転職してしまえば、長い目で見るとその一回でこれだけの差が出てしまうのです。
なお、現状では施設の規模が大きくなるほど給料は高くなる傾向にあるようです。
施設規模 | 平均給与 | 平均年間賞与 | 平均年収 |
---|---|---|---|
1,000人以上 | 31.9万円 | 90.1万円 | 472.9万円 |
100~999人 | 29.1万円 | 68.1万円 | 416.8万円 |
10~99人 | 31.7万円 | 50.8万円 | 431.2万円 |
※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」
理学療法士が勤務できる施設は大学病院・診療所(クリニック)などの医療機関、特別養護老人ホーム、老人保健施設、訪問看護ステーションなどの高齢者施設、支援学校、通所施設などの福祉施設など幅広く存在します。
求人サイトなども数多くあり、待遇面も詳しく分かるようになっています。
自身の目的に合った年収アップが見込める職場をチェックし、転職に活かすと良いでしょう。
また、裏技と呼べるほどのものではありませんが、インセンティブを見込める訪問看護ステーションもあります。
この場合、訪問件数や時間などで給料の上乗せがありますので注目してみるのも一つの方法です。
ごくまれにではありますが、経験を積んだ理学療法士が転職した先で数年以内に管理職になるという例もあります。
小さな施設で職員が若手療法士しかいなかったり、病院が訪問リハビリなどといった新たな事業を立ち上げる際に経験豊富な理学療法士を欲しているタイミングに上手く合致すると、管理職待遇で迎えられるということもあるようです。
いずれにしても、よく調べて情報を集めておくことが大切です。
【オススメの転職サイト】
副業をする
実際に理学療法士がよく行っている副業をご紹介します。
副業は頑張れば頑張るほど所得が増えますが、本業の理学療法士の活動に支障が出てしまっている例も多々あります。
スケジュールや体調管理に気をつけて活動していくことが大切でしょう!
また、副業自体を禁止している職場もありますので、この点についても確認が必要です。
〇他の施設で非常勤勤務
職場で副業が認められているという場合に限りますが、本職の時間外で副業することで収入をアップさせます。
非常勤のアルバイトで、別の施設で理学療法士として勤務すれば、収入がアップします。
本業が病院勤務で副業が介護施設勤務となれば、理学療法士としての経験を増やすことにも繋がりますし、一石二鳥な部分もあります。
〇訪問マッサージや週末開業
雇われの形で行う非常勤勤務よりは難易度はかなり高くなります。
個人事業主として働くこととになりますので、やりようによっては大きく収入をアップさせることも可能です。
〇セミナー講師
難易度はかなり高いですが、勉強会を開催したり、オンラインセミナーを開催するという方法です。
受講する人数が収入に直結しますので、たくさんの人数を集めることができれば大きな収入源にすることができます。
自治体や保健所が主催する介護予防教室などもあり、意外に活躍の場はたくさんあるようです。
自身のスキルに自信のある方は挑戦してみても良いのではないでしょうか。
〇その他
スポーツトレーナーや養成校での非常勤講師として活動している理学療法士も数多くいます。
スキルアップをはかる
スキルアップをすることで、副次的に収入をアップさせることができます。
例えば、スキルアップして職場内での地位を確立することで管理職への昇進を目指します。
長期的な計画にはなりますが、昇給の見込みが低い職場であったとしても、管理職に昇進することで役職手当が付きます。
求められるスキルを見極め、着実にレベルアップしていきましょう。
また、スキルアップをすることで、身に着けたスキルを”売り”にして転職を有利にすすめることも可能です。
私の知り合いには、身に着けたスキルを面接で売り込んで職場を変えた理学療法士や、ドクターの開業に付いていく形で求められて転職した理学療法士もいます。
スキルを身に着けたことによってすぐに給料がアップするのは簡単ではありませんが、長い目で見ると有効に使えてくることが多々あります。
独立開業を目指す場合もスキルが絶対的に必要ですし、特別なスキルがあれば副業の幅を広げることもできるでしょう。
特に、理学療法士は”体”の専門家ですので、健康指導や運動指導、栄養指導やダイエット指導などを行うとなった際に信用を得られやすいと考えられます。
そういったスキルを身に着けておくことも給料をアップさせていく方策の一つと言えます。
ここでは、スキルアップにつながるような活動、組織をいくつかご紹介します。あくまで一例ですのでご自身で興味の持てそうなものを探してみて下さい
将来の不安を取り除くために
将来の不安を取り除く方法は給料アップだけとは限りません。
年収は平均くらいでも、上手くやりくりしている人は沢山います。
支出の見直しも大切です。
総務省の調査では、世帯主の年齢別生活費の平均は次のようになっています。
出典:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年) 総世帯 詳細結果表4
こういった状況を踏まえ、自身の収入を加味して予め計算して支出の面をコントロールしておけば自身の給料アップに関わらず『不安』は軽減できるのではないでしょうか。
先にも述べた通り、理学療法士の給料は『安定している』というメリットがあります。
このメリットを生かして先々まで計算しておくと良いでしょう。
理学療法士とは関係ありませんが、投資や資産形成などをおこなってみるのも一つの方法です。
また、モノ作りや占いなど個人的に得意なものがあれば、副業というほど大きなものではなくてもインターネットやSNSを活用することで副収入を得ることも可能です。
今の収入にいくらかでも収入をプラスできれば、それだけで安心感が変わってくるのではないでしょうか。
若手理学療法士にとって将来のために大切なこと
高齢化社会が進むにつれ、日本の健康保険や介護保険などの保険事情は厳しい状況になってきています。
保険事情によって報酬が左右される理学療法士にとっては大手を振って未来に期待が持てないのは仕方のないことかもしれません。
しかし、理学療法士が得意とする『健康の維持・増進』は人間にとって必要不可欠なものであり、この事実は今後も変わることはありません。
そして、重要な職業であり続けることも変わらないでしょう。
臨床だけでなく幅広く活動できる理学療法士であれば、ビジネスチャンスはまだまだたくさんあります。
若手の早い段階から情報収集やスキルアップなどを行って様々な変化に対応する準備をしておくことで、収入をアップさせていくことは十分可能です。
明るい未来を切り開いていきましょう!