皆さんは理学療法士の資格が、国家資格なのを知っていますか?
さらに深く突っ込むと、どのくらいの合格率なのか?資格取得後はどんな働き口があるのか?聞いたことはありますか?
もし知らないまま目指そうとすると自分のやりたいことが見つからなかったり、最悪の場合、受験資格が得られないかもしれません。
ここでは現役理学療法士が、養成校選びのコツから就職先の紹介まで説明しています。
少しでも理学療法士の仕事に興味のある方や将来に悩んでいる学生がいれば、まずこの記事をみてもらい、働くイメージを膨らませてみましょう。
是非、最後まで一読してご活用ください。
目次
理学療法士の資格を取得するには養成校へ通う必要がある
理学療法士は国家資格であり、いきなり試験を受けることができません。
文部科学大臣または厚生労働大臣の認定を受けた養成校で3年以上学び、国家試験の受験資格を獲得しなければならないのです。
出典:理学療法士及び作業療法士法(◆昭和40年06月29日法律第137号)
入学後は一般教養や専門基礎、専門科目等の講義を受け、試験に合格する必要があります。
さらに臨床実習を通して、実際の現場を見学したり、患者様へ評価や治療を実践します。
実習先から合格をもらうことで、ようやく国家試験の受験資格を得ることができるのです。
3年以上というと長く感じるかもしれません。
しかしその期間に知識だけでなく、評価や治療技術の習得に多くの時間を割くため、あっという間に感じると思います。
私も今振り返ると、私自身も養成校時代は時間が足りなかったなと感じます。
朝から晩まで友人と技術練習を繰り返し行いましたが、いざ臨床現場に出てみると知識や技術不足を日々痛感し、もっと学生時代から練習しておけばよかったと後悔しています。
そのため理学療法士は養成校へ通い、時間をかけて学んでいく必要があるんです。
それぞれの養成校における特徴
理学療法士になるための養成校にはいくつか種類があります。
各養成校によって、かなり特色が違うため非常に悩むところだと思います。
ここでは、それぞれの養成校の特徴を紹介していきます。。
将来なりたい姿をイメージして、是非自分に一番合う養成校選びをしてみてください。
専門学校
専門学校には3年制と4年制の養成校があります。
大学と比べると専門的な実技の講義も多いため、深く学びたい方におすすめです。
例えばプロスポーツ選手に帯同した経験のある教授がいれば、実体験も織り交ぜながらの講義は、思わず耳を傾けずにはいられないでしょう。
講義自体は選択的に選べる科目がほとんどないため、時間割に沿った講義を受けていくイメージです。
3年制の場合、カリキュラムは非常にタイトに組まれております。
一般の人がイメージするような大学生活は送りづらいかもしれません。
もちろんアルバイトはできますが、上手く時間を有効活用しないと大変です。
多少の学生生活を削ってでも最短で理学療法士になりたい場合は、3年制の養成校がオススメです。
4年制の場合は、臨床実習に出るまでに3年間の期間があります。
そのためじっくり知識や技術を学ぶことができることは最大のメリットです。
4年生卒業後は大学卒業とみなされるため、大学院へ進学することも可能です。
卒業後の選択の幅が広がることが4年制の魅力といえるでしょう。
大学
大学では専門学校と比べて、教養科目が充実しており、専門的な知識だけでなく幅広い視野で多くのことを学べます。
4年制専門学校と同様に、土台となる知識や技術を習得する時間を作ることができる点が大きな魅力です。
また私自身も大学出身ですが、医療系以外の他学部との繋がりを作りやすいため、いろんな視点や考え方に触れらえる経験は今でも役立っていると感じます。
さらに卒業後は大学院の進学も可能ですので、学歴を重視したい方や将来の選択の幅を広げたい方にオススメです。
国家試験の難易度
理学療法士になるために、国家試験が最難関に感じる人も多いと思います。
しかし理学療法士の国家試験の難易度は、それほど難しいものではありません。
合格率は80%ぐらいの水準を保っています。
その年によって時事問題を含んだ問題が出ることがありますが、過去問対策を徹底すれば十分に合格圏内に届くでしょう。
また新卒と浪人生との合格率に大きな差が生じているため、いかに試験へのモチベーションを保つことが難しいのかがわかりますね。
過去5年間の合格率は以下をご参考にしてください。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第55回(2020年) | 12,283人 | 10,608人 | 86.4% |
第56回(2021年) | 11,946人 | 9,434人 | 79.0% |
第57回(2022年) | 12,685人 | 10,096人 | 79.6% |
第58回(2023年) | 12,948人 | 11,312人 | 87.4% |
第59回(2024年) | 12,629人 | 11,282人 | 89.3% |
出典:第59回理学療法士国家試験及び第59回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省
(第55回、第56回、第57回、第58回、第59回)より作成
理学療法士の給料
理学療法士の給料は以下の通りになります
平均月給×12 | 平均賞与(年間) | 年収換算 |
3,610,800円 | 714,440円 | 4,325,200円 |
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
医療職では医師・薬剤師・看護師と比較するとやや低い給料になります。
しかし業界自体の平均年齢が34.7歳と比較的若いため、平均年収が低い要因に影響している可能性があります。
理学療法士は経験値を積んで、スキルアップすれば確実に年収upが期待できる職業です。
また転職・副業・整体師として起業することで年収UPを目指す方もいますので、自身のワークバランスを考えながら決めていきましょう。
理学療法士の主な就職先
理学療法士として働くうえで、就職先選びはとても重要になります。
なぜなら就職先によって、関わる疾患や考え方が大きく違うからです。
もちろん通勤時間の短さや給料面などの待遇面も外せない条件でしょう。
しかし理学療法士になったからには、将来どんな姿で働いているかのビジョンをもつことが大切です。
ここではそれぞれの就職先の特徴を説明していきます。
私自身、病院・高齢者施設・訪問リハビリでの勤務経験があるため、実際の体験を踏まえ紹介していきますね。
病院
病院といってもいくつか種類があります。
- 総合病院
- リハビリ病院
- 大学病院
- 精神科病院etc…
おそらく一番多い就職先として、病院が挙げられると思います。
理由として、2点挙げられます。
1点目は、様々な疾患を患った患者様への治療ができるからです。
病院では在宅復帰を目標にリハビリを実施するため、病気になってしまった方が自宅復帰に至るまでの一連の過程を知ることができます。
2点目は、従事している理学療法士の数が多いため、人間関係を構築しやすいからです。
先輩からは治療技術や経験則を学べたり、後輩を指導する経験が増えてマネジメント能力を高めるなど、人間関係を通して成長できます。
また病院はケガや病気をした期間によって、超急性期・急性期・回復期と分けられます。
私は以前回復期のリハビリ病院で働いていました。
約1〜6か月間、患者さんと二人三脚でリハビリをしていくため、どんな状態まで回復すれば在宅復帰ができるかを考え、悩みながら仕事していくのが一番の魅力ではないでしょうか。
整形外科クリニック
整形外科クリニックは、骨折や外傷・神経痛等の患者様の治療にあたる場所です。
基本的に外来がメインのため、短時間かつ数多くの患者さんを診ていくため、治療技術の高さや問題解決能力の早さが要求されます。
また、スポーツ特有のケガやアスリートのリハビリを特徴としているクリニックもあるんです。
その他としては、部活終わりや仕事終わりにクリニックに通院される方もいるため、病院と比較すると勤務の拘束時間が長いことが挙げられます。
整形外科クリニックを経験してからスポーツ分野に挑戦する方も多いため、より幅広い年代層のリハビリを経験したい方にオススメです。
高齢者施設
主に、特別養護老人ホームや老健、デイサービス、デイケアなどが該当します。
特徴として、自宅へ帰れないために施設での生活をされている方や、自宅で長く過ごすために、体力や筋力低下の予防を希望している方へリハビリを実施していきます。
高齢者施設でのリハビリは、病院と考え方が少し異なります。
もちろん患者さんの身体を良くすることは変わりありません。
病院では在宅復帰がゴールですが、高齢者施設でのリハビリゴールはその人によって様々です。
例えば私の過去に携わった患者さんで、柔道の有段者の方がおり、表彰式で選手にメダルをかけてあげたいという目標がありました。
努力の末、数年かけて目標を達成した際、自分ごとのように嬉しかった記憶が残っています。
そのため、患者さんの生活に寄り添いながら長く関わることにやりがいを感じたい方にオススメです。
訪問リハビリ
訪問リハビリとは患者さんの家に訪問して、治療だけでなく安全に在宅生活や外出ができるようにサポートしていく仕事です。
関わる患者さんは、寝たきりや難病等の重度の方もいるため、治療技術だけでなく体調の急変に対応する能力や未然に防ぐリスク管理能力が要求されます。
また医師や看護師・ケアマネジャー・福祉業者など多種職との連携が特に密に必要なことも特徴です。
リハビリのゴールは高齢者施設と同様で、人により様々であり治療して良くすることだけがすべてではありません。
現在私は訪問リハビリに従事しておりますが、非常にやりがいを感じています。
患者さんと関わる中で、今まで無理とされてきた外出や旅行ができるようになったり、寝たきりだった方が歩けるようになったり等、他者の人生を変えるキッカケになれる仕事だからです。
スポーツ分野
スポーツ分野では、トレーナー活動がメインになります。
役割は多岐に渡り、競技復帰のためリハビリや再発予防の指導だけでなく、スポーツ選手が競技において最大限のパフォーマンスを発揮できるように、トレーニング指導、コンディショニング調整を行う職種です。
スポーツ分野は就職先が少なく、誰でも必ずなれる職種ではありません。
そのため、スポーツ特有のケガの知識やコンディショニング・治療技術が特に要求されます。
さらに人脈作りも非常に大切なため、交流会のようなものがあれば積極的に参加してみましょう。
また最近は、パーソナルジムを開業したり、障碍者スポーツのサポートを担う理学療法士も増えてきており、ますますスポーツ分野の発展が期待されております。
教育・研究機関
教育分野に関しては、理学療法士の育成に関わる大学教員や協会内で講師活動などが挙げられます。
いずれも臨床経験してからでないと難しいかもしれません。
なぜなら臨床現場では、机上で学んだ知識だけでは太刀打ちできないことが数多くあるからです。
現場を通して経験値を積み重ねることで、それが教員や講師になった際の説得力になり得ると思います。
また学会発表に参加して自身の活動をアピールしたり、大学院へ進学し博士や修士号を取得するなどの過程をふまないと難しいことがあります。
研究分野は、厚生労働省より傷病の成因や病態の理解,予防方法,医療の診断や治療方法の有効性の検証を通じ,国民の健康や傷病からの回復,生活の質の向上に関する知識を得ることを目的とされています。
こちらに関しても、日頃の臨床現場での疑問を解決したい・社会的な問題を解決できるような貢献がしたいなどの明確な目標がある方はオススメでしょう。
理学療法士に向いている資質
理学療法士に向いている資質として、細かい気配りや学ぶことへの貪欲さ、人との関わりが好きな方が挙げられます。
相手がどんなことを感じ、考えているかを常にイメージしながら、コミュニケーションしていくことが重要です。
また理学療法士は、治療家であり、常に最善の治療をするために学び続ける必要があります。
もちろん最初は大変と感じて、投げ出したくなるかもしれません。
しかし自分の治療で患者様が良くなっていく姿を経験できれば、それが原動力になり学ばずにはいられないでしょう。
理学療法士の養成校の選び方
先ほど、養成校の特徴を紹介させていただきました。
しかし、自分に合う養成校の選び方で迷う方もいるかもしれません。
最後にどのような視点で選べばいいかの説明をしています。
養成校を決める際の参考にしてみて下さい。
興味ある分野の講義が受けられるか
まず将来、理学療法士になってどんな仕事がしたいか明確にする必要があります。
それが決まれば、その分野で活躍している教授がいる養成校へ見学に行き、興味のある分野が学べるか確かめましょう。
各養成校ごとに特色が異なるため、できるだけ早い段階から学べる環境を作ることはとても大事です。
国家試験の合格率
各養成校ごとに合格率を算出しています。
合格率の高い養成校ほど、国家試験対策を徹底してますので知っておくといいでしょう。
是非オープンキャンパス等の見学機会に担当者へ聞いてみてください。
また最終学年で臨床実習がありますが、不合格の場合、養成校によっては国家試験を受けさせてもらえない場合もあります。
つまり、最終学年の人数に対しての合格率ではなく、実習を合格した方のみの合格率を算出している養成校もあるため、そこも含めて聞いていただけると良いかと思います。
大学院の入学まで目指すか
4年制の専門学校、または大学を卒業した者のみ大学院への受験資格が得られます。
大学院へ行くメリットとしては主に2点あります。
1点目は、高度で専門的な研究に携わる経験ができることです。
研究を進めるにおいて知識量も格段に増え、より高い専門性が身に付きます。
2点目は、大学院を卒業すると修士や博士の学位が授与され、大学教員や研究員などの職種に就くことができます。
そのため自身の学びたいことをより深く追究したい方や、将来的に教員や研究員の職種を目指したい方は是非チャレンジしてみてはどうでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか。
理学療法士の資格は、これからの高齢化社会において非常に重要な職種です。
また患者さんへの治療や日々の関わりを通して、その方の変化の関わることができます。
責任も大きいですが、それ以上のやりがいを感じられると思います。
今回の内容を読み終えて、少しでも理学療法士になるイメージが膨らみ、進学するきっかけになれば嬉しいです。
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