
管理栄養士は、栄養士の資格を取得していれば働きながら取得することができます。
しかし、いくつかの条件や勉強するうえでのコツが必要になります。
まず、管理栄養士は、栄養士よりワンランク上の資格となるため、栄養士の資格がないと働きながら取得することは難しいです(絶対に取れないというわけではありません)。
さらに、栄養士の資格を取得していても一定期間の実務経験がないと、管理栄養士国家試験を受験することができません。
その上、既卒者の国家試験の合格率は約10~20%と低く、かなり難しい試験です。
また、学生の時とは異なり、働きながら受験勉強をするということは、時間の制約や費用についても十分に考慮する必要があります。
日々の仕事や家庭生活と勉強を両立させることは想像以上に難しいものです。
計画なしに「管理栄養士になる」という強い意思だけで望むと、周りの人へも影響を及ぼしかねません。
本記事では、働きながら管理栄養士になるために、自分が理解しておくべきことや勉強を始めるにあたって知っておきたい内容について記載しています。
また、いかに計画的に効率よく学ぶことができるか、その方法や資格を取得するためのポイントなどについても紹介していきます。
働きながら管理栄養士を目指したい人は、是非最後まで読んでみてください。
目次
管理栄養士の資格は働きながら取得できる
管理栄養士になるためには、国家試験を受験して合格する必要がありますが、栄養士の資格を持っている人であれば働きながら取得は可能です。
ただし、国家試験を受けるには、栄養士養成施設を卒業していることや実務経験が必要などの条件があり、最低でも4~5年の年月を費やす必要があります。
合格が必須となる国家試験に関しては、既卒者の合格率は約10~20%と低く、働きながら取得することは、かなり難しいです。
ですので、通信講座などを利用する方法が資格取得への近道ですが、それなりの費用がかかるため、家族の協力や理解が必要になります。
また、勉強時間の確保や試験までのモチベーションの維持なども大切です。
日々の仕事や家事・育児などをこなしながら資格を取得することは、容易なことではありません。
そのため、栄養士の資格を取得していて実務経験がある人においても、国家試験までの準備期間は最低でも1年は必要と見通して準備をする必要があります。
働きながら管理栄養士になるには
この章では、働きながら管理栄養士を目指すために必要な項目について詳しく解説していきます。
管理栄養士になるための条件や費用などについて、一緒に見ていきましょう。
資格取得に必要な条件
先にも述べましたが、管理栄養士になるためには、国家試験を受験して合格する必要があります。
受験資格としては、以下の内いずれかの条件を満たしていなければなりません。
- 4年制の管理栄養士養成施設を卒業している。
- 4年制の栄養士養成施設を卒業後、厚生労働省が定める施設で1年以上の実務経験がある。
- 3年制の栄養士養成施設を卒業後、厚生労働省が定める施設で2年以上の実務経験がある。
- 2年制の栄養士養成施設を卒業後、厚生労働省が定める施設で3年以上の実務経験がある。
厚生労働省が定める施設は、以下の通りです。
- 寄宿舎、学校、病院等の施設で、特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの。
- 食品の製造、加工、調理又は販売を業とする営業の施設。
- 学校、専修学校、各種学校、幼保連携型認定こども園など。
- 栄養に関する研究施設及び保健所その他の栄養に関する事務を所掌する行政機関。
- ほか、栄養に関する知識の普及向上その他の栄養の指導の業務が行われる施設。
上記より、管理栄養士養成施設を卒業する以外は、その年数に応じた実務経験を積むことが、受験に必須となります。
働きながら管理栄養士の資格を取得したいと思われるのであれば、栄養士として現場で経験を積みながら、同時に国家試験の勉強を行うのが良いでしょう。
【出典:管理栄養士国家試験について|公益社団法人 日本栄養士会】
資格取得に必要な費用
管理栄養士の資格取得のために、必要な費用を把握しておきましょう。
まず、国家試験を受験するにあたって、最低限かかる費用は受験手数料の6,800円です。
また、受験会場は指定された都道府県で行われるため、受験の際の交通費や宿泊費などが必要です。
そして、受験に向けて準備をする中でも、やはりお金がかかります。
独学で勉強するにしても、模擬試験料(自宅受験1~4回)5,500~17,000円程度、参考書やテキスト代、さらに通信講座を受講するのであれば多額の費用50,000~200,000円程度が必要です。
自分が費やせる予算をあらかじめ計算して、事前に準備しておくと良いでしょう。
資格取得に必要な準備期間
働きながら、国家試験までの勉強に関する準備期間は、最低でも1年は必要です。
実際、私の職場の後輩達も、働きながら最短で1年、長い人では5年も勉強していました。
管理栄養士は、医療・福祉に携わる専門職のため、栄養学だけでなく人体の構造と機能など栄養に関わる広い分野について深く理解する必要があるためです。
また、国家試験の出題項目は9科目と広く、問題数も200問と多いです。
試験時間も長く、1日を通して行われます。
準備期間を決めるには、自身の生活習慣の見直しの他、家族との時間を勉強に充てる必要があるため、いかに家族の理解や協力を得て、時間を作るかがポイントです。
さらに、職場での理解や協力も得られると良いでしょう。
勉強するための準備期間をしっかりと確保して、計画的に取り組むことが大切です。
合格率
管理栄養士を目指すのであれば、働きながら資格を取得することがいかに難しいのか、把握しておきましょう。
国家試験の合格率は以下の通りです。
2023年 (令和5年) | 2024年 (令和6年) | 2025年 (令和7年) | |
管理栄養士養成課程(新卒) | 87.2% | 80.4% | 80.1% |
管理栄養士養成課程(既卒) | 9.9% | 7.8% | 11.1% |
栄養士養成課程(既卒) | 16.0% | 11.1% | 11.7% |
合計 | 56.6% | 49.3% | 48.1% |
既卒者の合格率は約10~20%と低いです。
これは、新卒者が十分な勉強時間を確保できることに対し、既卒者は勉強する時間を確保することが難しいからです。
また、新卒者が学校で試験に関する情報を得られることに対し、既卒者は自分で情報の収集を行う必要があることも考えられます。
働きながら資格を取得することがいかに難しいかおわかりいただけたかと思いますが、一方で試験に合格する人もいますので、希望は捨てないでください。
まずは、入念な準備や計画が大切ですね。
働きながら管理栄養士の資格取得に向けた勉強方法
では、働きながら資格取得に向けた勉強はどのように始めていくべきでしょうか?
久しぶりの試験勉強で、とまどう人も多いと思います。
ここからは、その方法について詳しく解説していきます。
独学
働きながら管理栄養士の資格取得を目指すとしたときに、一番に思いつく勉強方法は、自分で勉強を進めていく「独学」ではないでしょうか?
独学は、試験に向けてしっかりと計画を立て、適切な参考書選びや効率的な勉強を行うことができる人に向いています。
何より嬉しいことに費用が最小限で済みます。
その上、参考書やテキストが新品や最新のものでなければ、メルカリなどで安く購入して、費用を抑えることも可能です。
一方で、独学での勉強は、試験対策や参考書の選び方など、課題が多くハードルが高いです。
また、過去問題を解くことで過去の内容はカバーすることができますが、新しい情報を取り入れることはできないので、自分で仕入れる必要があります。
さらに、過去問題や模擬試験などでわからないことや疑問点を質問できないことがネックです。
当協会のブログにて、独学で管理栄養士になるための方法について詳しく解説している記事があります。
独学で、国家試験に挑みたいと思われる方は是非下記をご参考ください。
通信講座
通信講座は、時間や場所の制約がなく、いつでも、どこでも勉強ができるため、仕事や家庭生活などで中々時間を確保することができない方に、おすすめです。
また、国家試験を徹底分析し、頻出テーマや論点をわかりやすく解説されたテキストなどを使用して、自分のペースで学習することができます。
しかし、受講するのであれば、どのくらいお金がかかるのか、と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は管理栄養士を目指す方におすすめの通信講座3選を紹介したいと思います。
主催団体 | 女子栄養大学生涯学習センター (女子栄養大学) | SGS総合栄養学院 (既卒者を対象とする予備校) | 東京アカデミー (大手の予備校) |
特徴 | 大学の専門性を活かした質の高い教育が受けられる
| 独自の教材と充実したサポート体制がある
| 国家試験を徹底分析した教材を用いている
|
費用 | 約121,000円(税込) 合格対策講座、過去問題集、 | 約171,050円(税込) 再受講138,050円(税込) | 約45,000円(税込) |
メリット |
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デメリット |
年2回のオープン模試(マークシート方法)を別途受講することは可能 |
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【参考】 | 女子栄養大学生涯学習センター | SGS総合栄養学院 | 管理栄養士国家試験対策講座|東京アカデミー |
通信講座を選択する際には、自分に合った学習スタイル、サポート体制や費用などを考慮した上で選ぶと良いと思います。
上手に活用し、効率的な学習や疑問点の解決など、限られた時間を有効に使いたいですね。
働きながら管理栄養士の資格を取得するポイント
ここでは、働きながら資格を取得するためのポイントについてお伝えしていきます。
試験勉強を始める前に、是非参考にしてみてください。
- 年間計画を立てる
- 自分に合った勉強方法をみつける
- ルールを決め、勉強時間を確保する
- 職場で受験勉強中と理解してもらえるよう良好な人間関係を作る
勉強は無計画に進めるのではなく、年間の勉強スケジュールを立てて、計画的に進めていきましょう。
国家試験は、年1回、毎年3月に行われます。
先にも述べましたが、国家試験までの準備期間は最低でも1年は必要と見通して準備をする必要があるので、逆算して計画を立てましょう。
細かく計画を立てる必要はないですが、月単位程度のざっくりした予定を立てると良いと思います。
また、独学で勉強していくのか、通信講座などを利用するのか勉強方法を決めましょう。
そして、「毎朝〇分、〇問解く」や「寝る前に参考書を〇ページ読む」などルールを決めておくことをおすすめします。
仕事の日や休みの日の勉強時間や場所を決めておくと良いです。
あらかじめ決めておくことで、生活にメリハリがつくことや時間に対して家族の理解も得られやすいと思います。
さらに、働きながら資格を取得するとなると職場の理解も得られると良いですよね。
仕事の休憩時間を勉強にあてたり、管理栄養士がいるような職場であれば過去の試験のアドバイスなどがもらえる可能性もあります。
何事もがむしゃらにするのではなく、時間がないからこそ効率的に勉強することが重要です。
効率の良い勉強方法のコツ
働きながら資格の取得を目指すためには、いかに効率よく勉強するかが重要となります。
ここでは、そのポイントを4つご紹介します。
- 出題数の多い科目を抑える
- 最新の情報を把握する
- 過去問題を繰り返し解く(最低2~3年分、できれば5年分)
- 模擬試験で時間の配分や実力を試す
国家試験は、科目によって出題数が13~30問と異なります。
出題数の多い科目を重点的に勉強することをおすすめします。
管理栄養士国家試験は、おおむね4年に一度改定されます。
ちなみに、日本人の食事摂取基準は5年ごとに改定されるので、常に情報をアップデートしておくことが大切ですね。
また、過去問題を繰り返し解くことで、問題の傾向や自分の苦手なところがわかると思います。
最低でも、過去2~3年分の問題は、繰り返し解きましょう。
そして、疑問点やわからない言葉は、その都度調べて、テキストや単語帳などに記入しておくと復習する時に便利ですよ。
模擬試験は、自分の勉強の成果を試すことや時間の配分を掴むために、受けることをおすすめします。
試験を受けることで、科目別に勉強できているかがわかることや今の状況を把握することができます。
できれば、複数の会社の模擬試験を受けてみましょう。
様々な視点の問題を解くことができますし、会社によって問題の出題傾向や難易度が異なるためです。
試験勉強において、始めはわからないことばかりで嫌になることもあると思いますが、繰り返し問題を解いていくうちに、わからないことががわかるようになると勉強が楽しくなりますよ。
まずは、ざっくりと参考書で全体の内容を把握することから始めてみてください。
管理栄養士以外にスキルアップするのためのおすすめの資格
ここまで、働きながら管理栄養士になるために必要なことについて解説してきました。
やはり、管理栄養士になるための時間や労力をつぎ込むことが難しい、という場合もあるでしょう。
そこで、民間資格ではありますが、管理栄養士のように栄養に関してスキルアップしたいという方に、おすすめの資格をご紹介します。
臨床栄養医学指導士
一般社団法人 臨床栄養医学協会が主催する資格で、3か月間という短期間で、生理学・生化学に基づいた根拠ある講座内容を一から学んでいきます。
栄養に関して、素人でも理解できるように基礎から学べ、専門的な分野まで幅広く学習することができます。
専門的な分野では、論文ベースで学ぶことができるので、栄養の専門家でも満足いく内容となっています。
実際に、この講座の受講生には、栄養士はもちろん、管理栄養士や理学療法士など各専門分野の人々が名を連ねています。
また、講義はアーカイブ受講のため、自分の好きな時間に学ぶことができますし、質問も24時間受付できます。
リアルセミナーも設けられており、その際に直接質問することもできます。
最終試験は、実際の症例を基に栄養指導のレポート作成を行うことになりますが、最後までやり遂げられるよう手厚いサポートが組まれています。
この試験に取り組むことで、終了後には、学んだ専門的知識やスキルを活かし、自信をもって栄養指導などを行うことが可能となります。
その上、この資格の最大の特徴は、学んだ知識をビジネスへと活かしていけることです。
資格を取得した後、オンラインサロンに入会し、さらに知識を深めていける仕組みとなっています。
このサロンでは、ビジネスに関しても学べるため、講座を通して身につけた知識とスキルをどのように仕事として活かしていくか、深く学び、実行に移していくことが可能となります。
費用は、一括249,800円、分割259,200円です。
一見、高額に思われるかもしれませんが、この資格は、検定費用や登録費用、資格の更新等の費用がかかりません。
また、資格取得後のサポートが充実しており、取得して終わりではなく、学び続けることができることが魅力です。
これから、高いスキルアップを目指す栄養士にとって、最もおすすめしたい資格です。
【出典:一般社団法人 臨床栄養医学協会】
食育インストラクター
NPO日本食育インストラクター協会の認定講座です。
通信講座を終了することで、協会が認定する食育インストラクターの資格を取得することができます。
資格取得の目安期間は、3~6か月です。
この講座では、以下の3点について学べます。
- 安心安全な食材の選び方
- 食事のマナー
- 栄養を活かした料理法
安全な食材の選び方では、買い物に役立つ安全な野菜や肉・魚等の選び方を学びます。
さらに、食品表示や添加物、遺伝子組み換え食品についての知識を身につけることができます。
食事のマナーについては、和食のマナー、季節ごとの行事食や郷土料理など、子どもに伝えたい和食文化を学びます。
子どもを健やかに育てるための食習慣やマナーなど、すぐに役立つ知識が得られます。
栄養を活かした料理法では、食材の保存方法や調理のポイントなどが学べます。
離乳食からシニア世代まで、年代別の食育の実践方法もわかります。
受講料は、39,900円で、在宅で受講できます。
また、活躍の場は、食や健康、さらに教育に関わる分野と様々です。
子どもに正しい食事のマナーを教えたいというお母さんはもちろん、学校や保育園、病院、福祉施設、保健所などで食育の指導者を目指す人にも最適です。
【出典:食育資格を取るならこれ!服部幸應の食育インストラクター養成講座|がくぶん】
食生活アドバイザー
一般社団法人 FLAネットワーク®協会が認定する資格です。
広い視野に立って食生活をトータルにとらえ、健康な生活を送るための提案ができる”食生活全般のスペシャリスト”です。
自分自身やご家族の豊かな食生活の基盤づくりとして、社会が求めるスキルを身につけ、新たなビジネスチャンスを掴むための資格です。
食生活を総合的に見直す幅広い見識を持ち、的確な指導やアドバイスができるように学べます。
受験制限はなく、食生活に興味のある方なら誰でも受験可能です。
2級と3級があり、試験に合格すると資格を取得できます。
受験料は、2級8,000円、3級5,500円、2級・3級併願13,500円です。
オンライン受講とは異なるため、試験会場までの交通費などが必要です。
資格取得後は、年会費を支払うことで、食アド®会員制度による活動のサポートを受けることができます。
私も学生の頃、食生活アドバイザーの資格を取得しました。
管理栄養士の試験に比べて、範囲が狭く覚えることが多くないため、独学でマイペースに勉強することが可能です。
また、転職の際などにアピールできる資格になるため、何か資格がほしいという人にはおすすめです。
興味のある人は、是非下記を参考にしてください。
まとめ
本記事では、働きながら管理栄養士になるための方法や勉強の仕方について見てきました。
管理栄養士になるための勉強は、栄養学はもちろん、人体の機能や構造など栄養に関わる広い分野について深く理解する必要があるため、専門性の向上になります。
範囲が広いため、とまどうことも多いですが、自分自身のスキルアップに必要な知識ばかりです。
資格の取得を目指すことは、単なるスキルアップではなく、今後の仕事の幅を大きく広げるチャンスになるでしょう。
この記事を読むことで、働きながら管理栄養士を目指したい、という目標を後押しさせてもらえると嬉しいです。
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