訪問栄養指導について|詳細な内容から申し込み手順までを徹底解説

一般社団法人臨床栄養医学協会

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当臨床栄養医学協会では、生化学及び生理学に基づく栄養学に関する正しい知識の普及と、ビジネス化推進を行います。
「知識を得る」「資格取得」だけではなく、必要な経験・実績を積むことでビジネス化をサポート致します。

訪問栄養指導について|詳細な内容から申し込み手順までを徹底解説

訪問栄養指導は、通院困難な方が在宅で生活するにあたり、医療保険や介護保険を用いて食事の面からのサポートを依頼する制度です。

しかし、このシステムの知名度はまだまだ低く、十分活用されていないのが実情です。

こちらでは訪問栄養指導とはどのようなシステムなのか、実例や利用することで期待できる効果も含めて詳しくお伝えしていきます。

 

訪問栄養指導への理解が深まることで、今以上に地域の資源として活用されるようになります。

そのことで最期まで食事を続けられることになり、健康寿命が延びることにもつながります。

訪問栄養指導への理解を深めて、よりよい社会へとつなげていけるよう、是非ご参考ください。

 

訪問栄養指導とは

訪問栄養指導とは

訪問栄養指導とは、療養者が在宅で安心して生活が続けられるよう、食事や栄養面での支援を行うサービスです。

 

そのシステムは主に下の4つの種類があります。

①医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養食事指導」

②介護保険を利用する「居宅療養管理指導」

③各市町村が主体として行う「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)訪問型C」(保険対象外)

④認定栄養ケア・ステーション、薬局や歯科医院等が独自に行うものや行政と連携して展開する事業

※③に関しては各自治体により実施の有無や、サービス負担の有無は異なります。

 

今回はこの中でも利用される率の高い①②について詳しく解説していきます。

①②共に、保健医療機関の医師の指示の基、管理栄養士が利用者の在宅へ定期的に訪問し、食事状況を確認して療養上必要な栄養や食事の管理や指導を行います。

 

同居する家族がいる場合は調理方法などを具体的に伝え、入院で病院食の提供を受けていない場合でも安心して生活できるようサポートします。

このシステムを受ける場合の費用については、①②でそれぞれ異なります。

 

対象となる方が要介護または要支援認定を受けている場合は優先的に介護保険扱いとなります。

認定を受けていない場合は医療保険扱いとなります。

 

各保険適用の場合でも条件により負担額は異なり、下表での料金での利用は月2回までとなっています。

また、交通費や調理を実施する場合の材料費については別途に負担額があります。

同一建物居住者1人

同一建物居住者2~9人

同一建物居住者10人以上

介護保険

1割負担

545円/回

487円/回

444円/回

2割負担

1,090円/回

974円/回

888円/回

3割負担

1,635円/回

1,461円/回

1,332円/回

医療保険

1割負担

530円/回

480円/回

440円/回

2割負担

1,060円/回

960円/回

880円/回

3割負担

1,590円/回

1,440円/回

1320円/回

出典:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について (2024年6月1日現在)

                                               

診療報酬点数の算定に関しては、介護保険では居宅療養管理指導費ⅠもしくはⅡの算定、医療保険では在宅患者訪問栄養食事指導料1~2の算定がそれぞれ月2回まで可能となります。

居宅療養管理指導費と在宅患者訪問栄養食事指導料それぞれの(Ⅰ・Ⅱ)(1・2)の違いは、院内に管理栄養士がいるか否かで点数が異なります。

 

訪問栄養指導の対象となる人

訪問栄養指導の対象となる人

訪問栄養指導は一定の条件を満たしており、医師が必要と判断した場合に利用することができます。

その条件は以下のようになっています。

  • 在宅で療養を行っている方
  • 通院・通所が困難な方
  • 低栄養状態など、厚生労働省が定める特別食を提供する必要があると医師が判断した場合

 

ただし、具体的な対象者の条件については、

①医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養食事指導」

②介護保険を利用する「居宅療養管理指導」

の2つで異なる設定となっています。

 

①通院による療養が困難であり、保険医療機関の医師が特別食の必要性を認めた場合。

 または、下のいずれかの該当するものとして医師が栄養管理の必要性を認めた場合。

 〔ガン患者・接触機能または嚥下機能が低下した患者・低栄養状態にある患者〕

 

②通院または通所が困難であり、医師が特別食の必要性を認めた場合。 

 またはその患者の方が低栄養状態になると医師が判断した場合。

 

さらに、それぞれに対象となる「特別食」が定められています。

医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養食事指導」

介護保険を利用する「居宅療養管理指導」

腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食、貧血食、すい臓食、脂質異常症食、痛風食、特別な場合の検査食(単なる流動食及び軟食を除く)、心臓疾患などに対する減塩食、十二指腸潰瘍の患者に対する潰瘍食、クローン病及び潰瘍性大腸炎による腸管機能の低下に対する低残渣食、高度肥満症食(肥満度が40%以上またはBMIが30以上)、高血圧に関する減塩食(食塩6g以下)

てんかん食、フェニールケトン尿症食、楓糖尿食、ホモシスチン尿食、尿素サイクル異常症食、メチルマロン酸血症食、プロピオン酸血症食、極長鎖アシルーCoA脱水素酵素欠損食、糖原病食、ガラクトース血症食、治療乳、無菌食、ガン患者、接触・嚥下機能が低下した患者、低栄養状態にある患者

経管栄養のための流動食、嚥下困難者(そのために摂食不良となったものも含む)のための流動食、低栄養状態

 

訪問栄養指導の指導内容

訪問栄養指導の指導内容

訪問栄養指導の実施・指導内容は、医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養指導」、介護保険を利用する「居宅療養管理指導」とで少し異なる点はあるものの、ほぼ共通したものと捉えることができます。

 

医師の指示に基づき管理栄養士が利用者のもとを訪問し、その生活条件や好みなどを考慮した食事の計画案や献立など、食事管理に関わる情報提供や相談・助言などを30分以上行います。

このサービスは月2回まで利用することができます。

 

具体的な指導や相談・助言については

  • 健康状態・食事摂取量・栄養状態などのチェック
  • 利用者の状態対する食事内容や食の形態についての指導
  • 利用者の生活状態や好みに合わせたレシピなどの考案や実際の調理指導
    (家族やヘルパーなどへの指導も可能)
  • 必要に応じて栄養補助食事、介護用食品の紹介、使用方法のアドバイス
  • 食べる姿勢や介助の方法などの提案
  • その他療養生活に関わる様々な相談

など、一人一人の状態や状況に合わせて行われます。

 

医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養指導」は、その指導に関するものとして「食事計画案」「食事指導箋」を交付し、食事の用意や摂取などに関する具体的な指導を行います。

対して介護保険を利用する「居宅療養管理指導」では、介護報酬制度の関係より「栄養ケア・マネジメント」のプロセス(栄養スクリーニング、栄養アセスメント、栄養ケア計画、実施・チェック・モニタリング、評価など)を経ながら実施することとなります。

 

訪問栄養指導で期待できる効果

訪問栄養指導で期待できる効果

ここからは、訪問栄養指導のサービスを受けることでどのような効果が得られるのか?

まず3つの期待される効果についてお伝えしていきます。

 

①専門家の意見を聞くことで効率的な食事の作り方が分かる

療養中であれば食べられるものや調理法も制限されることも多く、食材や食事内容がワンパターンになりがちになります。

栄養指導では管理栄養士という栄養のプロがその状況や状態にあった食事メニューを提案してくれるので、より栄養効果の高く安全な食事を作ることができるようになります。

 

②食事に関する相談相手がいるという安心感を持てる

日常生活において健康であっても、食事に関して疑問に思うことを相談できる相手はなかなかいません。

退院後などの自宅生活であればなおさらその疑問や不安、相談ごとは多くなります。

そんな困ってるときに、意見やアドバイスを受けられる栄養のプロである管理栄養士は非常に心強い存在となります。

 

③栄養状態を客観的に見ることができる

本人やご家族さんの中には間違った情報を正しい知識として理解している方もいます。

管理栄養士は栄養状態をプロの視点から見ることで、現在の栄養状態がどうなのかを客観的に分析することができます。

新たな視点からの提案やアドバイスを受けられることで、より良い療養生活・食事へとつながります。

 

訪問栄養指導の申し込み手順

訪問栄養指導の申し込み手順

ここまで訪問栄養指導というサービス自体の内容を見てきました。

ここからは、実際にこのサービスを受ける際の流れについて見ていきます。

(医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養食事指導」と介護保険を利用する「居宅療養管理指導」とでは異なる部分もありますが、流れとしてはほぼ変わりないため、こちらでは「居宅療養管理指導」の流れでご紹介していきます。)

 

■申請(訪問開始前)

①訪問栄養指導に関する問い合わせや依頼

主には療養中の当人や家族、ケアマネージャー、訪問栄養指導を行っていない医療機関の医師やスタッフから、訪問栄養指導を実施している医療機関や栄養ケア・ステーション等へ、の管理栄養士に問い合わせや依頼があります。

 

②主治医による指示

管理栄養士から医師へ主治医診療報酬情報提供書及び栄養指導書の発行を依頼します。

 

③訪問日程調整と簡単な説明

管理栄養士から訪問日時の調整や料金など訪問サービスに関する簡単な説明が電話にて行われます。

 

■初回訪問

④初回訪問

訪問栄養指導に関する説明の後契約の締結が行われます。

栄養状態の把握や問題点の抽出、食事提案などを行います。

 

■訪問後

⑤栄養ケア計画・報告書の作成

初回訪問時での記録を基に栄養スクリーニングや栄養アセスメントなど栄養診断を行います。

医師やケアマネージャーへ報告書の送付が行われます。

 

⑥定期的にモニタリングや栄養指導の実施

訪問栄養指導は月2回までの実施が居宅療養管理指導においては可能です。

継続的に定期的な栄養指導が行われます。

 

⑦サービス継続もしくは終了

おおよそ3か月を目途に訪問栄養指導の評価がなされ、そのまま継続もしくは指導終了となります。

 

まとめ

ここまで訪問栄養指導について見てきました。

生きるために必要不可欠な「食事」を専門家がサポートする、という点からも、そのサービスにかける期待の大きさや将来性が感じられたのではないでしょうか?

 

最期まで自宅で自分で食べられる。

この当たり前でありながらも、なかなか現代においては叶わないケースもある「食事」。

訪問栄養指導というサービスを社会全体に広げていけるよう、多くの方に利用していただきたい制度です。

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