栄養学は健康な生活を送る上で不可欠な知識です。
しかし、栄養学は初めて学ぶ方にとっては理解が難しいこともあり、栄養学を学び始めても途中で挫折してしまった……なんてこともよく聞きます。
栄養学の基礎を学ばずに、直ちに栄養指導や食事指導を行うことは効果が薄く、信頼性も欠けるため、結果的にクライアントの目標を達成できない可能性があります。
健康を目指したり他人をサポートしたりするためには、まず栄養学の基礎知識を身につけることが大切です。
本記事では、効率よく栄養学を学ぶための押さえておくべき基礎知識から、実生活や仕事に役立つポイントまでを幅広く解説します。
どのような栄養素がどのような役割を果たし、バランスの良い食事の基本とは何か、さらには実際の生活や仕事にどのように栄養学を活かしていくかについても触れていきます。
栄養学の基礎から応用までこの記事を通じて栄養学についての理解を深め、「使える栄養学」を身に付けていきましょう!
目次
栄養学を学ぶ上で押さえておくべき基礎知識
栄養学を学ぶ際に押さえておくべき基礎知識を解説します。
多くの人が「栄養」という言葉は知っていても、それが具体的に身体にどのような影響を与えるかを理解している人は少ないでしょう。
そこで、まずは栄養とは何か、そして栄養素が身体にどのような役割を果たすかを解説していきます。
これによって、栄養学の基礎をしっかりと押さえることができます。
人間に必要不可欠な「栄養」について
栄養は私たちにとって欠かせないものです。
なぜなら、栄養がエネルギーを生み出し、そのエネルギーがあるからこそ、私たちは生きていく上で必要な活動ができるからです。
日常生活で考えたり、集中する際にも、私たちの脳や身体はエネルギーを消費します。
また、心臓や肝臓などの重要な臓器が正常に機能するためにも、エネルギーが必要です。
このように、栄養は私たちの生命活動を支える基盤となるのです。
ただ好きなものを食べるだけでは、必要なエネルギーを十分に得ることはできません。
エネルギーを効率よく生み出し、健康を維持するためには、各栄養素が果たす役割や、それらのバランスを考慮する必要があります。
適切な栄養をバランスよく摂取することで、病気の予防や免疫力の向上につながり、私たちの身体機能を高める重要な役割を担います。
栄養素の3つ役割について
私たちの体に必要な栄養素は、大きく分けて3つの役割があります。
この3つに分類は栄養学の基礎知識として重要な考え方です。
それぞれの役割と代表的な栄養素について解説していきます。
1.エネルギー源となるもの
私たちの体にエネルギーを供給するとても重要な役割を果たしているのが「炭水化物」や「脂質」です。
これらのエネルギー源は、身体を動かすためのエネルギーとしてはもちろんのこと生きていくために必要な臓器や脳機能の維持にも利用されています。
これらが不足してしまうと、体や心に様々な影響が現れてしまうのです。
体は活動する力を失い、脳機能の低下が生じ、集中力や記憶力の減退などの影響が出ることもあります。
生きていくための基盤となるのがエネルギーであり最も重要な役割になっています。
2.身体を構成するもの
私たちの体を構成する上で欠かせない栄養素の一つが「タンパク質」です。
この栄養素は、筋肉や皮膚、髪の毛から、内臓や細胞といった体のさまざまな部分を作る基本的な材料となります。
また組織を形成したり、傷ついた場合には修復する役割も果たします。
たとえば、けがをしたときに傷が治る過程でタンパク質は新しい細胞を作り、損傷した部分を修復する役割を果たすのです。
タンパク質は身体を構成する重要な栄養素として様々な機能を果たしています。
3.身体の調子を整えるもの
私たちの身体が健康に機能するためには、ビタミンとミネラルが欠かせません。
これらの栄養素は身体の調子を整え、日々の活動に必要なサポートを提供します。
ビタミンは体内の代謝プロセスを促進し、エネルギー産生をサポートする役割を担っています。
一方、ミネラルは骨や歯の形成、血液の健康維持、神経伝達の調整など身体の多様な生理機能に関わっています。
これらの栄養素は直接エネルギーを提供するわけではありませんが、身体がスムーズに機能するための「調整役」として欠かせない存在と言えます。
五大栄養素のそれぞれの働き
3つの役割でもお伝えした通り、私たちの体を健康に保つために不可欠な役割を果たしているのが五大栄養素と言われる5つの栄養素です。
・炭水化物
・タンパク質
・脂質
・ビタミン
・ミネラル
これらの栄養素は栄養学の基礎知識として必ず押さえておく必要があります。
それではこの五大栄養素についてそれぞれの栄養素の役割と重要性について詳しく解説していきます。
炭水化物
炭水化物は私たちの主要なエネルギー源であり、パン、米、麺類などに豊富に含まれています。
炭水化物には「糖質」と「食物繊維」の二つの主要な成分があります。
糖質は体内で分解されやすく、素早いエネルギー源となりますが、過剰摂取は体重増加や血糖値の急激な変動を引き起こす可能性があります。
一方で食物繊維は消化されにくく、満腹感をもたらし腸内環境を改善する効果があります。
バランスの良い食事では、糖質だけでなく、食物繊維を含む食品も積極的に取り入れることが大切です。
適切な炭水化物の摂取は、エネルギーの持続性を高め、日々の活動に必要な力を供給します。
※豊富に含まれる食材:米や穀物類、芋類、野菜類、果物など
タンパク質
タンパク質は私たちの体の構成要素であり、生命活動に欠かせない栄養素です。
その基本的な構成単位はアミノ酸と呼ばれ、これらが連なってタンパク質を形成します。人体は20種類のアミノ酸から成り立っており、このうち9種類は体内で合成することができないため、「必須アミノ酸」と呼ばれ、毎日の食事から摂取する必要があります。
そしてタンパク質は、細胞の生成や修復、酵素やホルモンの生産など、身体の多くの重要な機能を担っています。
また、免疫システムの健全な機能維持にも寄与しており、健康を維持するためには適切なタンパク質の摂取が不可欠です。
※豊富に含まれる食材:肉類、魚介類、卵など
脂質
脂質はカロリーが高いイメージがあると思いますが、健康に欠かせないエネルギー源です。
脂質の主要成分は脂肪酸になります。脂肪酸は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2つに分類されます。
これらの違いは、脂肪酸の分子構造にあり、それぞれが体に及ぼす影響も異なります。
飽和脂肪酸:
分子が水素原子で飽和しており、主に動物性の脂肪(バターやチーズ、赤身肉など)に多く含まれます。
常温で固形のことが多く、比較的熱に対して安定した性質を持っています。
飽和脂肪酸を過剰に摂取するとコレステロール値の上昇や、肥満、心臓病のリスクを高める可能性があるため、摂取量には注意が必要です。
不飽和脂肪酸:
一つ以上の二重結合を持ち、分子が水素原子で完全に飽和していない状態です。
これには「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」の2種類があり、オリーブオイルやナッツ、アボカドに多く含まれるのが一価不飽和脂肪酸です。
またオメガ-3やオメガ-6として知られているものは多価不飽和脂肪酸に分類されており、魚油や亜麻仁油、えごま油にはオメガ-3が多く含まれています。
脂質は摂り過ぎには注意が必要ですが、その種類に偏りが生じないようにバランスよく摂ることが大切です。
※豊富に含まれる食材:油脂類(調理油など)、バター、ナッツ類など
ビタミン
ビタミンはこれまでに解説してきた「炭水化物」「タンパク質」「脂質」の代謝をサポートし、私たちの体の免疫機能の維持、細胞の成長に不可欠な栄養素です。
ビタミンの種類がこちらになります。
・ビタミンA
・ビタミンB群(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12)
・ビタミンC
・ビタミンD
・ビタミンE
・ビタミンK
各ビタミンには異なる役割があり、例えばビタミンCは抗酸化作用を持ち、代謝機能をサポートし、ビタミンDは免疫機能のサポートや、カルシウムの吸収を促進し、骨の健康を維持します。
ビタミン類は様々ありますが、適切な種類と量のビタミンを摂取することで、正常な機能が保たれるようになります。
※豊富に含まれる食材:豚肉、鶏肉、野菜類、果物類、豆類、ナッツなど
ミネラル
ミネラルは体の様々な生理的機能をサポートするために必要な無機質の栄養素です。
人体にとって必須とされる主なミネラルがこちらです。
・カルシウム
・鉄
・マグネシウム
・リン
・カリウム
・ナトリウム
・亜鉛
・銅
・マンガン
・セレン
・ヨウ素
・クロム
これらのミネラルは、骨や歯の健康維持、神経伝達、筋肉の収縮、体液のバランスの調整、代謝促進など、体の様々な重要な機能に深く関わっています。
例えば、カルシウムは骨や歯の形成に不可欠で、ナトリウムやカリウムは神経や筋肉の機能を正常に保つために重要です。
また、鉄は血液中のヘモグロビンの構成成分であり、酸素の運搬に欠かせません。
ミネラルは体内で生成されないため、食事を通じて適切な量を摂取する必要があります。
バランスの取れた食事からこれらのミネラルを適切に摂ることで、体の健康を維持し、様々な生理機能を正常に働かせることができます。
またミネラルの摂取不足や過剰は健康上の問題を引き起こす可能性があるため、日々の食事においてはバランスの良い食事を心掛けることが大切です。
バランスの良い食事の基本
これまでに様々な栄養素について解説してきましたが、この章ではそれらの栄養素のバランスに焦点を当てます。
例えば、炭水化物ばかりを摂取していても、栄養素が本来持つ役割を果たすことはできません。
バランスが取れた食事をしてはじめて栄養素の役割を十分に発揮できるのです。
ここでは、最適なバランスを理解し、それを実践的な食事に活かすための知識を解説していきます。
「バランスって何?」賢く食事を選ぶポイント
バランスの良い食事とは、様々な栄養素をバランスよく摂取することを指します。
主要な栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂ることで、健康的な体を維持することができます。
逆に食事内容に偏りがあると、栄養素の本来の働きが弱まったり、疾病や肥満に繋がるリスクが上がるなど、食事バランスは重要なポイントになります。
では実際にバランスの良い食事とはどういった定義になるのでしょうか?
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、エネルギー摂取量に占める栄養素の割合(PFC)を示しています。
P タンパク質: 15%(13-20%)
F 脂質:25%(20-30%)
C 炭水化物: 60%(50-60%)
※15〜64歳男女
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
PFCとは、タンパク質(Protein)、脂質(fat)、炭水化物(Carbohydrate)の頭文字を取って名付けられたものです。
総エネルギー摂取量に占めるべき割合のことを指しています。
この割合を意識しておくことによって、栄養素が不足せずバランスよく摂取できているかどうかの目安になります。
バランスの良い食事を実践するために、しっかり理解しておきましょう。
最近では食事管理用のアプリがとても充実しています。
食べた食材を入力するだけで簡単にPFCバランスを見ることができます。
食事管理アプリの中でも「あすけん」や「カロミル」が人気です。これらのアプリは、食品データベースが充実しているので、食事の入力が簡単です。
またカロリーやPFCバランスだけではなく、ビタミンやミネラルの充足度合いまで可視化してくれる優れた機能が無料で利用できるのも嬉しいです。(※特定の食材が対象)
このようなアプリを活用して、理想的なバランスの食事を目指しましょう。
日々の生活にすぐ取り入れられる栄養学
しかしながらPFCバランスを意識しただけでは、全ての栄養素をカバーできる訳ではありません。
食事の献立を決めるにあたり、先ほど解説した栄養素の3つの役割を意識した食材を選ぶのがポイントになります。
まずはエネルギー源となるもの「炭水化物」です。
忙しい日常生活でも、健康的な食事を実践するための簡単なポイントがあります。
主食には白米だけでなく、芋類(さつまいも、じゃがいも、里芋など)を追加するだけで、補酵素であるビタミンやミネラル類、食物繊維の摂取量を増やすことができます。
また玄米や全粒穀物なども栄養素が豊富ですので、白米だけではなく様々な種類の炭水化物を摂っていくことがポイントです。
次に体を構成するものである「タンパク質」の食材と言えば、肉類を思いつくかもしれません。
もちろん肉にもタンパク質の他、ビタミン、ミネラル類が豊富に含まれていますが、今回お勧めしたいのは、魚類です。
特に豊富に含まれる栄養素として、オメガ3脂肪酸のEPAとDHAが挙げられます。
またビタミンDやビタミンB12も豊富に含まれており、魚は積極的に摂取したい食材の一つです。
そして身体の調子を整えるものとしてビタミン・ミネラル類を多く含む食材が、野菜や果物になります。
これらは身体の調子を整えるだけでなく、免疫力を高め、疲労回復を助けるなど、多方面にわたる健康効果をサポートします。
野菜や果物は色によって含まれる栄養素が異なります。赤、黄色、緑、紫、白など、色々な色の野菜や果物を食事に取り入れることで様々な種類のビタミンやミネラルを摂取できます。
日常生活に取り入れやすい栄養学のポイントを意識しながら、健康的な食事を実践しましょう。
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実際に使える栄養学を身に付ける方法とは?
栄養学の知識は、私たちの健康を維持し向上させる上で欠かせない要素です。
多くの人が教科書やオンラインの情報を通じて栄養学について学びますが、これらの知識を日常生活に活かすことは意外と難しいものです。
教科書で学んだ知識は基本的で理論的なものが多く、実際の生活環境や個々人の体質、健康状態に応じた適切な栄養摂取方法まで踏み込んでいない場合が多いからです。
教科書では得られない、実際に使える栄養学を身に付けるには、より専門的な学びが必要となります。
そして知識を自分のものとするためには、学んだことを実践に移し、経験を通じて理解を深めることが重要になります。
せっかく学んだ知識を活かすにはどうしたら良いでしょうか?
次の章では「使える栄養学」を学ぶための方法をご紹介します。
「使える栄養学」もっと学びを深めるためのステップアップ
栄養学の教科書から学べることはたくさんありますが、その知識を毎日の生活や実際の仕事でうまく使うためには、もう少し学びを深める必要があります。
特に、人それぞれの健康状態や生活の仕方に合わせたアドバイスをするスキルは、教科書だけではなかなか身につかないものです。
そこで、もっと実践的な栄養学を学びたいと思っている方に「臨床栄養医学指導士」のコースをおすすめします。
臨床栄養医学指導士とは?
「臨床栄養医学指導士」は、栄養学の専門知識を活かし、個々の健康状態や生活習慣に適した栄養指導を提供するプロフェッショナルです。
栄養状態の評価、食生活の分析、血液解析、個別の食事計画の立案、そして食事療法の実施など、幅広いスキルを身につけます。
これらの能力は食事指導だけでなく、健康食品の開発や健康コンテンツの提供など、様々な分野で活躍できるものです。
資格取得は難しいと思われるかもしれませんが、実際には主婦や他の分野で活躍する人々も多く受講しています。
オンライン授業やアーカイブ動画を通じて、3ヶ月間の集中学習を行い、卒業にはレポート作成が必要です。
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3ヶ月前には知識がない人でも、卒業時には十分な知識を身につけ、それを実践できるレベルに達します。
現代社会の健康志向が高まる中で、臨床栄養医学指導士の役割はますます重要であり、多くの人々の健康と幸福に貢献しています。
臨床栄養医学協会でステップアップ
臨床栄養医学指導士の資格を取得することは、栄養学の専門家としてのキャリアを積むための第一歩に過ぎません。
この資格を活かしてさらなるステップアップを目指すことで、多様な分野での活躍や、専門性を深めるチャンスが広がります。
臨床栄養医学指導士を育成する「臨床栄養医学協会」では、受講生・卒業生を対象に、最新の栄養学の研究や、テーマに沿ったセミナーを定期的に実施しています。
資格取得で終わることなく、継続して学びの場を提供しているのも人気の一つです。
ご興味がある方はぜひ「臨床栄養医学協会」のHPをご覧ください。
まとめ
このコンテンツでは栄養学の基礎知識から日々の食事選びに役立つポイント、さらには専門的な知識を身につける方法まで幅広くご紹介しました。
初めて学ぶ方にとっては理解するのが難しいと思いますが、栄養学がどんなに身近で大切なものかが伝わったら嬉しいです。
実生活や仕事に役立つ栄養学を身に付けて、自分自身はもちろんのこと、自分の周りの人々を健康に導いてみませんか?今日からでも栄養学の小さな一歩を踏み出してみましょう。