糖新生は筋肉を分解する?具体的なメカニズムと筋肉が育つ食事法を紹介

一般社団法人臨床栄養医学協会

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当臨床栄養医学協会では、生化学及び生理学に基づく栄養学に関する正しい知識の普及と、ビジネス化推進を行います。
「知識を得る」「資格取得」だけではなく、必要な経験・実績を積むことでビジネス化をサポート致します。

「糖新生(とうしんせい)で筋肉が落ちる」と聞いたことはありますか?

メカニズム的に糖新生で筋肉が落ちる可能性は大いにあります。

 

糖新生とは身体にとって大切なエネルギーの元である糖質が不足している時に、筋肉や脂肪を削ることで糖を作り出す働きです。

糖新生は一般の人でも起こるものですが、ある状況下では過剰に起こってしまい、結果、筋肉が落ちてしまうことが考えられるのです。

 

以下の条件が当てはまる方は、糖新生が過剰に起こっている可能性が高いです。

  • 食事制限をしながら筋トレを頑張っているのに、思ったように筋肉がつかない
  • カロリー制限をしてダイエットに成功したのに、なんかやつれて見えるようになった

こんな時、糖新生が起こっている可能性が高いです!

 

この記事では、糖新生が筋肉を分解する詳しいメカニズムから糖新生を防ぎながら効率よく筋肉をつける食事の摂り方までお伝えします!

ぜひ参考にしてみて下さい。

 

糖新生が筋肉に及ぼす影響

栄養士が栄養指導できないって本当?

「空腹時に筋トレすると筋肉が落ちる」など聞いたことはありませんか?

実はこの現象は糖新生について知れば、理解ができます!

 

糖新生とは体内の糖質が不足した時に、身体が糖質を補おうとするメカニズムです。

なぜなら身体にとって糖質は最も重要なエネルギーだからです。

 

特に重要器官である脳や赤血球は糖質しかエネルギーにできません。

これらのエネルギーが枯渇してしまうと、身体は筋肉や脂肪から糖質を作ろうと働きます。

 

筋トレしているときも例外ではなく、糖質不足状態であれば脂肪・筋肉を削ってエネルギーにします。

「糖をエネルギーとしないことで脂肪が削られる」と聞くと良さそうに聞こえるかもしれませんが、「糖をエネルギーとできないことで筋肉が削られる」ことになりますし、パフォーマンス低下、疲れやすさ、つりやすさ、筋肉痛が生じます。

 

つまり、筋肉をつけるために筋トレをしていても、糖質不足であった場合は上手く筋肉をつけることができなくなってしまいます

 

さらに身体は糖質不足を糖新生によって補いますが、いつまでも身体を削るわけにはいきません。

ある一定のところで生存戦略的に身体は代謝を落として身体を削らないで済むようにします。

そうすると、筋肉が育つどころか、キープすることもできなくなってしまいます。

 

結局、糖質をエネルギーとして筋トレすることがもっとも効率的に筋肉を育てる方法なのです。

糖新生が起こるような状況はできるだけ避けていきましょう。

 

糖新生のメカニズム

 

糖新生は正確に言うと、体内のグルコースが枯渇しているとき、主に肝臓で起こります。

グルコースを作ろうと思っても材料である糖質が足りないと作れないので、身体は糖質を作り出そうとするんです。

 

糖新生は主に2種類の経路があります。

  • 筋肉を使った糖新生
  • 脂肪を使った糖新生

 

糖新生は筋肉の持つ大多数のアミノ酸や脂肪の持つグリセロールを使用しながら、解糖系の工程を逆に辿って、グルコースを作っていきます

解糖系とは、グルコースを分解し、ATP(エネルギー分子)を生成する細胞内の重要な代謝経路です。

 

では、具体的に筋肉を使用した糖新生のメカニズムを説明します。

 

糖が不足すると、筋肉内のタンパク質が分解されアミノ酸が生成されます。

筋肉で生成されたアミノ酸は血流を介して肝臓に輸送されます。

そして、肝臓でいくつかの経過を経て、6個のATPを使ってやっと1個のグルコースを作ります。

 

一方で、脂肪を使った糖新生は直接的な経路ではありません。

脂肪自体はグルコースに変換されるわけではないですが、脂肪が分解されて生成される「グリセロール」が糖新生に利用される重要な前駆体となります。

こちらも同様にグリセロールと6個のATPを使用して1個のグルコースを作ります。

 

このように糖新生することにより、飢餓や長時間の運動など、エネルギーが必要な状況でエネルギーを生成することができます。


さらに糖新生する際には交感神経がUPするようなホルモン(コルチゾール、アドレナリン)が出るので、最初はやる気や集中力が出てパフォーマンスがよく感じられます。

なので「糖質制限は身体にいい」などとも言われるのです。

 

しかし、糖質制限でパフォーマンスがいいのも最初だけです。

グルコースは半日〜1日程度で枯渇してしまい、糖質不足が続けば常に肝臓に負担をかけてしまいます。

糖質不足の状態が長期になれば腎臓でも糖新生を担うようになってしまいます。

 

なので、糖新生は筋肉が減るだけでなく

  • 甲状腺機能低下
  • 骨粗鬆症

など、肝臓や腎臓に関する不調も出やすくなります。

 

糖新生は肝臓や腎臓にかなり負担がかかり、身体にとってコストパフォーマンスが悪いにも関わらず起こります。

それだけ糖質は身体に必要であるということなのです。

 

糖新生が起こる原因

働くまでに確認しておくべきこと

2章糖新生のメカニズムでは、糖質が身体にとっていかに必要であるかを再確認できたのではないでしょうか。

とはいえ、SNSや有名人も糖質制限やカロリー制限している人も多いので、糖質を控えたこともあるかもしれませんね。

この章ではどんな時に糖新生が起こりやすいかを紹介します。

もし当てはまる物があったら、日頃の食事内容をぜひ見直してみましょう!

 

糖質制限

食事のカロリーバランスは炭水化物で50〜60%摂ることが世界的にも推奨されているのですが、ダイエットや体重を落としたいときに、まずごはんやパンなどの炭水化物を控える人が多いです。

そうすると糖質不足になるので糖新生が起こりやすくなります。

 

炭水化物はお米や野菜、果物などの植物性の食材です。

食事ではご飯なら150g〜、食パンなら6枚切り2枚など、主食をしっかり摂れば十分に糖質が摂取できます。

 

注意点としては、主食だけでカロリーを満たそうとするのは栄養バランスが崩れるので、主菜や副菜もバランス良く摂りましょう。

 

カロリー制限

たとえバランスのとれた食事で栄養素が摂れていたとしても、カロリー制限をすると必然的に糖質の量も少なくなるので糖新生を起こす可能性があります。

 

年齢や身長、体重、運動量にもよりますが、男性は2,600kcal/日程度、女性は2,000kcal/日程度摂ることを目標にしましょう。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

 

もし1日2食以下だったり、1食500kcal以下など、極端なカロリー制限をしている方は、筋肉を育てにくくなってしまうので気をつけましょう。

 

ファスティング

ファスティングとは食物及び特定の飲料を一定期間摂取しない行為です。

ファスティングの方法は様々ですが、カロリー制限しているのと同じ状態になるので、エネルギー不足となり糖新生が起こります。

 

ファスティングをすると、短時間睡眠でも集中力が上がったり、頭の回転がよくなったと感じたりします。

また、体重減少、肌の改善、腸内環境が良くなったと感じることもあるでしょう。

 

しかし、その効果も一時的なものです。

ファスティングをして糖新生が起こると、低血糖による過食、耐糖能(糖代謝)の低下、甲状腺機能低下、便秘、肌荒れ、生理不順、栄養失調を起こすことになりかねないので注意が必要です。

 

食事量がバラバラ・食間が6時間以上

朝食を抜いたり、忙しくて食事をする時間がなく食間があき過ぎる時などもエネルギー不足で糖新生が起こります。

 

理想は、量・時間共に均一にすることです。

 

例)1日2,000kcalの場合

朝食:7時     600kcal

昼食:12〜13時    600kcal

間食:15時            200kcal

夕食:19時            600kcal

 

そうは言っても忙しく日々を過ごしているとなかなか上手く食事の時間が摂れない時もありますよね。

そんな時は、果物や黒糖、小さいおにぎりやゼリー飲料など、こまめに摂取するよう心がけてみましょう!

 

糖新生を防ぎながら筋肉を育てる!効率的なアプローチ

体質改善の資格を取得する際に意識すること

糖新生が起こる時点で、そもそも筋肉を作るためのエネルギーや栄養が不足している状態です。

 

それにもかかわらず、

  • プロテインを飲めばいいんでしょ
  • とりあえずBCAA、HMB
  • 糖質制限は効果的

など安易に間違った食事方法をしている方が多い印象です。

 

この章では、効率よく筋肉をつけるための栄養の摂り方をお伝えします。

 

カロリーコントロール

私たちが生活する上でカロリーは必要不可欠です。

 

3-2カロリー制限で説明した通り、一人ひとり必要な1日のカロリー量は違うので、まずはメディカルズ本舗を使って適正カロリーを出しましょう。

参考:メディカルズ本舗

 

個人によって「消費カロリー」「運動量」「消化吸収能力」が違うので、カロリーはあてにならないと言われることも多いですが、目安をつけるにはよい指標です。

カロリーが少ない状態が続くと代謝を落として太りやすく、筋肉もつきにくい体になってしまうので、きちんと適切なカロリーを摂取しましょう。

 

バランスの良い食事

「筋肉をつけるにはまずはタンパク質!」という方も多いですが、残念ながらタンパク質だけを食べても筋肉はつきません

筋肉は、糖質、脂質、様々なビタミン・ミネラルから作られているからです。

 

カロリーと同様に重視されるのが、適正なPFCバランスです。

PFCバランスとはタンパク質(Protein)・脂質(Fat)・炭水化物(Carbohydrate)のカロリーバランスで、健康な人の理想のバランスは以下の通りです。

  • タンパク質:13〜20%
  • 脂質:20〜30%
  • 炭水化物:50〜65%

※個人の体質や体調、運動量、筋肉量、生活習慣によって差があります。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

 

PFCバランスが整っていると、全ての栄養素が過不足なく摂りやすくなります。

これだけ聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、「定食」を意識した食事をとると良いですよ!

よかったら参考にしてみてください。

 

適切なタンパク質摂取

運動量や時期によってタンパク質摂取量は変わります。

筋トレを行っている方は基本は1日あたり【1.5〜1.7g/体重kg】です。【2.0g/体重kg】以上摂っても効果が薄いと言われています。 

 

運動量

タンパク質摂取量

(1日当たり)

持久系トレーニング

を行っている

1.2〜1.4g/体重kg

筋トレ

(状態維持期)

1.0〜1.4g/体重kg

筋トレ

(増強期)

1.6〜1.7g/体重kg

筋トレ

(初心者)

1.5〜1.7g/体重kg

 

また、1食あたり必要なタンパク質量は【20g】もしくは【0.25〜0.4g/体重kg/時間】です。

 

タンパク質は肉や魚、乳製品のイメージが強いと思いますが、お米1杯(150g)にも約4g入っているんですよ!

つまり3食お米を食べれば1日に必要なタンパク質量の約20%が摂取できます。

 

このように主食も取り入れたら効率的にタンパク質が摂取できますので是非お試しください!

 

プロテインの効果的な使い方

食事が基本です。食事だけでも筋肉はつきますので、プロテインはあくまで補助として活用しましょう。

足りない栄養素やタンパク質摂取の補助として上手にプロテインを使用すれば、より効率よく筋肉をつけることができます

 

プロテインは原材料により大きく3種に分けられます。

 

ホエイプロテイン

カゼインプロテイン

ソイプロテイン

原材料

牛乳に含まれる

ホエイタンパク

(乳製タンパク)

牛乳に含まれる

カゼインタンパク

大豆に含まれるタンパク質

特徴

消化吸収速度が速い

胃酸で固まりやすく

消化吸収が遅い

牛乳が苦手な人、大豆由来の栄養が足りていない人向き

消化吸収速度

およそ1時間程度

およそ6〜8時間

およそ5〜7時間

 

タンパク質摂取後3時間の筋タンパク質合成効果を比較すると、ホエイ、ソイ、カゼインの順となります。

 

健康状態に問題がなければ1番のおすすめはホエイプロテインです!

ホエイプロテインは消化速度が速く腸内細菌叢への影響も少ないです。筋トレ直後ではなるべく速く摂取して血中アミノ酸濃度を高くした方が有利になるので、ぜひ取り入れてみてください。

 

出典:Phillips SM. A brief review of critical processes in exercise-induced muscular hypertrophy. Sports Med. 2014 May;44 Suppl 1(Suppl 1):S71-7

 

より詳しく!筋トレ前・中・後の効果的な栄養補給法

 

筋トレで使われる速筋は、瞬発的な強い筋力を発揮する筋肉であり、エネルギー源はほぼ糖質です。

空腹や糖質不足状態であれば、これまで説明してきたように糖新生を起こしてしまいます。

さらに、糖が使えなければパフォーマンスの低下、疲れやすさ、つりやすさ、筋肉痛が生じ、また怪我のリスクが上がります

 

そうならないためにもしっかり糖質補給をしましょう!

具体的な筋トレ時の栄養補給方法を紹介します!

 

筋トレ前の栄養補給

1番重要なのは筋トレ前の栄養補給です!

理想は4-2バランスの良い食事でお伝えしたようなバランスの良い食事を、運動のおよそ【1.5〜2時間前】に摂ることです。

 

でもそうもいかない時もありますよね。

もし、運動2時間前までに補給できない場合は以下を意識して消化のいい炭水化物を摂取してくださいね!

 

運動1時間前に補給する場合のおすすめは、おにぎり、バナナ、さつまいも、カステラなどです。

タンパク質・脂質は消化に負担がかかるので、パフォーマンス低下と血糖値の乱高下によるパフォーマンス低下が起こる可能性があります。

 

運動直前に補給する場合のおすすめは黒糖、はちみつ、ブドウ糖、ゼリー飲料です。

炭水化物の中でも特に消化しやすい食材で、運動直前に摂取しても素早くエネルギーになります。

 

ただ、これらはビタミン、ミネラル、食物繊維が少ないため食べ過ぎにはくれぐれも注意してください。食べすぎると低血糖を引き起こす可能性もありパフォーマンスが落ちてしまいます。

 

筋トレ中の栄養補給

筋トレ中はグリコーゲンが消費され、汗による水分・ナトリウムの流出によってパフォーマンスレベルが下がります

以下の摂取量を目安にしながら運動中の消費を考えた摂取をしましょう。

 

【それぞれの摂取量の目安】

  • 糖質:1時間あたり30〜60g
  • 水分量:汗の量による、基本的に1時間500〜1000ml程度
  • ナトリウム:水分補給時に塩分濃度を0.1〜0.2%程度

 

筋トレ後の栄養補給

筋トレ直後〜3時間後まで、グリコーゲン、水分、塩分が減少し、筋細胞が損傷していると同時に、筋グリコーゲンの合成、筋タンパク質の合成が高まります。

この時に糖質とタンパク質を補給することで、効率的に筋肉をつけていくことができます。

 

【それぞれの摂取量の目安】

  • 炭水化物:1.0〜1.2/体重kg/時
  • タンパク質:0.25〜0.4/体重kg/時

理想の糖質とタンパク質の摂取比率は3:1となります。

 

筋トレに効果的な食事は自分で学ぶのが一番!

解剖生理は身体の基本的な仕組みを学ぶ学問

前章では糖新生を防ぎながら効率よく筋肉を育てるための栄養の摂り方をお伝えしました。

しかし、いざ実践してみるとよくわからなかったり、これで合っているのかなど疑問が湧いてくると思います。

また、SNSやインターネットで収集できる情報は、枝葉の情報であったり、真偽が確かでないものもたくさんあります。

 

そのような情報に惑わされず、効果的に筋トレをするなら自分で正しい知識を身につけることが1番効率が良く資格の取得もオススメです!

 

臨床栄養医学協会では、論文と実証に基づき、生化学や栄養の基本・応用、さらに実践的なトレーニングのための知識も学ぶことができます。

自分で正しい栄養知識を学ぶことで、食事の迷いがなくなります。

また、家族や周りの人たちにも知識を活かすことができるようになります。

 

参考: 臨床栄養医学協会 

 

まとめ

まとめ

以上、糖新生が筋肉に及ぼす影響や、糖新生を防ぐための食事の摂り方などをお伝えしました。

筋肉をつける為にまた、健康的な身体を維持する為には、糖質の摂取や食事バランスを整えることが重要であるとお分かりいただけたのではないでしょうか。

食べること自体が身体を作っているイメージをしながら食事をして、効率よく筋肉をつけてくださいね!

一般社団法人臨床栄養医学協会

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