単純にみえて難しい!肥満に対する栄養指導のポイントを徹底解説!

一般社団法人臨床栄養医学協会

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単純にみえて難しい!肥満に対する栄養指導のポイントを徹底解説!

肥満の方の栄養指導を行う上で一番大切なことは「カロリーを減らすこと」ではありません。

たしかに肥満の大きな原因にはカロリーの摂りすぎがあります。

しかし、そのような方は食べることが好きな場合が多いですよね。

 

ただカロリーを減らしましょうと言ってもなかなか納得してもらえません!

肥満の栄養指導は簡単なようで難しい分野です。

そのため、ダイエットに意欲的に取り組んでもらうためには、なぜ肥満が良くないのかをしっかりと理解してもらうことが大切になります。それを上手く伝えるためのコツも必要なんです!

 

この記事では最初に肥満の危険性を説明していきます。

最後には肥満の栄養指導をする上で重要な4つのポイントを紹介していきますね。

この記事を最後まで読むことで肥満の栄養指導を根拠を持って行うことができ、患者さんも納得して意欲的にダイエットに取り組めるようになるでしょう!

 

肥満とは

肥満とは

BMI25以上の方を肥満と言います。

BMI

判定

<18

痩せ

18≦〜<25

標準

25≦〜<30

肥満

30

高度肥満

 

決して「肥満=病気」ではありません。

BMI25以上に加え、高血圧や糖尿病などの特定の疾患があると「肥満症」となり、治療が必要となります。

しかし、肥満は病気ではないから大丈夫と思ってはキケンです。

 

肥満自体は病気ではないですが、生活習慣病をはじめとした様々な病気になるリスクを上昇させます。

次の章では肥満によってどのような影響があるかを説明していきます。

 

肥満はキケン!肥満が及ぼす身体への悪影響 

肥満はキケン!肥満が及ぼす身体への悪影響 

肥満は見た目の問題だけでなく、様々な身体への悪影響を及ぼします。

時には肥満が原因で重篤な病気になり、命の危険が生じることがあります。

また、肥満は心との関係性が強く、肥満により心が病んで生き生きとした生活ができなくなる恐れもあります。

肥満が及ぼす身体への悪影響について説明していきます。

 

 生活習慣病リスクが上がる

肥満により最も起こりやすいのは生活習慣病です。

生活習慣病とは「食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣がその発症や進行に関与する疾患」とされています。

生活習慣病には高血圧や脂質異常症、糖尿病、がん、心筋梗塞などがあります。

 

肥満はこれらの病気になるリスクを上昇させると言われているんです!

具体的には、肥満の人は標準体型の人と比較し、高血圧や糖尿病、心筋梗塞になる確率が上がるとされています。

 

 精神状態が不安定になる

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターらのグループらの研究によるとBMI30以上の肥満体型者は、標準体型者(BMI18.5〜25未満)と比較し、うつ病の罹患率が優位に高かったと発表しています。

うつ病の症状には気分の落ち込みや無気力、焦燥感、悲壮感などの精神症状や頭痛や動悸、食欲不振、生理不順、めまいなどの身体症状などがあります。

 

うつ病の症状が重篤になると働くことが困難になることもあります。

このように肥満は見た目だけの問題ではなく、精神状態にも影響し、場合によっては思うような生活が送れなくなってしまう可能性もあります。

出典:大うつ病性障害患者の肥満、認知機能低下と脳構造変化に関連-NCNP – QLifePro 医療ニュース

 

 肥満により食欲が亢進する 

食欲はホルモンの影響が非常に大きいです。

肥満になるとレプチンという食欲を抑えるホルモンの分泌が低下してしまい食欲が亢進してしまうのです。

そのため、肥満になると過食となり生活習慣病などの他の病気になってしまうリスクが高くなってしまいます。

 

詳しいメカニズムとしては、レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンであり、脳の弓状核という摂食行動をコントロールしている領域に作用して、食欲を抑えます。

レプチンの作用を抑制する物質にPTPRJという酵素分子があり、この酵素分子が増えると食欲が亢進します。

肥満者はPTPRJが増加することが研究で分かっており、そのため、食欲を抑えることができなくなります。

そのため、ついつい暴飲暴食してしまい、ますます体重が増加してしまいやすい傾向にあります。

レプチンと食欲の関係

出典:基礎生物学研究所 プレスリリース

 

なぜ太る!?肥満になる3つの原因 

なぜ太る!?肥満になる3つの原因 

「肥満の原因はなんですか?」と聞かれたら多くの方が「カロリーを摂りすぎている」と答えるかと思います。

もちろんカロリーの摂りすぎも肥満の代表的な原因ですが、その他にも肥満になる原因はたくさんあります。

ここでは数多くある肥満の原因の中でも多くみられる3つを説明していきます。

 

 摂取カロリーが多すぎる

肥満の原因の一つ目が摂取カロリーが多すぎることです。

カロリーとは食べ物から得られるエネルギーのことをいい、身体を動かすにはエネルギーが必要となります。

当然、沢山動けばエネルギー消費量が多くなり、動く量が少なければエネルギー消費量は少なくなります。

 

消費カロリーよりも摂取カロリーが多いとエネルギーは余り、身体はその余ったエネルギーを二の腕やお腹などに脂肪として蓄えます。

特に現代社会では、食事の西洋化により高カロリーの食品が多くなっています。

そのため、そんなに食べていないつもりでもカロリーを摂りすぎているケースが多いです。

まずは患者さんの消費カロリーと摂取カロリーをしっかりと把握し、カロリー過多になっていないか確認することが大切です。

 

 脂質を過剰に摂取している

肥満の原因の2つ目が脂質を過剰に摂取していることです。

なぜ脂質を過剰に摂取すると肥満になってしまうのか。

その原因としてはカロリー量の違いです。

 

炭水化物やタンパク質は1g当たり4kcalに対し、脂質は1g当たり9kcalにもなります。

同じ量でも脂質は実に2倍以上のカロリー量になります。

そのため、脂質を過剰に摂取しているとあまり食べていないつもりでもカロリーオーバーとなり、肥満になってしまいます。

脂質

9kcal

炭水化物

4kcal

タンパク質

4kcal

 

代謝が低下している 

肥満の原因の3つ目が代謝が低下していることです。

あまり量を食べていないのに痩せられない人っていますよね。

そのような方は代謝が低下してしまっている可能性が高いです!

 

代謝とは、簡単に説明すると食べたものをエネルギーに変換する過程のことをいいます。

私たちが動くことができるのは、食べたものを活動に必要なエネルギーに変えているからです。

代謝が低下するということは、食べたものをエネルギーに変換できなくなることをいいます。

 

そのような場合、例え食べる量が少なくても消費ができないため身体に脂肪として蓄えられてしまいます。

では、なぜ代謝が低下してしまうのでしょうか?

その原因は糖質不足によることが多いです。

 

糖質は車で例えるとガソリンになります。

車はガソリンがなければ動きませんよね?

人間も同じでガソリンである糖質がなければ動けなくなってしまいます。

しかし、人間の場合は動けないと死んでしまうため、代謝を落として少ないエネルギーで動けるようにする仕組みがあります。

 

長期間、糖質制限などで糖質不足の状態が続くと、カロリーを消費しにくい体質になり痩せにくい身体になってしまいます。

なので、代謝を向上させて痩せるためには、しっかりと糖質を摂取することが重要となってきます。

 

肥満の栄養指導で知っておきたい4つのポイント

肥満の栄養指導で知っておきたい4つのポイント

ここまで肥満の危険性や原因について説明させていただきました。

最後に肥満の改善に欠かせないポイントを伝えていきます!

肥満の原因は様々ありますが、これから説明する4つのポイントは多くの肥満者に対して効果的です。

また、どれも簡単に取り入れられることばかりなので、ぜひしっかりと読んで実践してみてください。

 

推奨摂取カロリーを守る

肥満の栄養指導で最も欠かせないのが推奨摂取カロリー量をしっかりと守ることです。

当たり前ですが、摂取カロリー量がオーバーしていたら絶対に痩せることができません。

 

カロリーオーバーで肥満になることは誰もが知っていると思いますが、実はカロリーが少なすぎても痩せることが難しくなってしまいます。

3-3「代謝が低下している」で説明したようにカロリーが少なすぎると代謝が低下するため、痩せ難くなってしまうのです。

そのため、まずはクライアントの推奨摂取カロリー量を把握し、しっかりと守ることが肥満改善の第1歩になります。

 

推奨カロリー量を把握するのに便利なサイトが「メディカルズ本舗」です。

メディカルズ本舗では、性別と年齢、身長、体重、運動量を入力するだけでクライアントの推奨カロリー量を調べることができます。

 

推奨摂取カロリー量を調べたら、次にクライアントの摂取カロリー量を把握します。

クライアントの摂取カロリー量を把握するのに便利なサイトが「カロリーSlism」です。

カロリーSlismでは、食材の量を入力するだけで簡単に摂取カロリー量やPFCバランス、ビタミン・ミネラルの摂取状況を把握することができます!

 

まずは推奨カロリーと実際の摂取カロリーを把握し、適正なカロリーを摂取できているか把握することが重要となります。

 

炭水化物をしっかり摂る

理想のPFCバランスは炭水化物60%、タンパク質15%、脂質25%であり、炭水化物をしっかりと摂ることが肥満改善に重要となってきます。

炭水化物をしっかりと摂ることによって、代謝が向上し痩せやすい身体を作ることができます。

 

例えば35歳女性で身長160cm・体重56kgの方の適正カロリーは約2100kcal/日になります。

カロリーの60%を炭水化物から摂取する必要があるため、この女性の場合は炭水化物から1300kcal摂取する必要があります。

1300kcalは白米に換算すると茶碗5.5杯分になります。

 

最近はダイエットのために白米を抜く方も多いですが、白米を抜けば抜くほど痩せるのが難しくなってしまいます。

痩せるためには白米などの炭水化物を十分に摂ることが重要となってきます。

 

 果物を食べる

痩せるためには炭水化物を十分にとることが重要ですが、実は急激に炭水化物の量を増やすと調子が悪くなってしまう可能性があります。

その理由は、急激に増えた糖質を処理しきれずに血糖値が乱高下してしまうためです。

 

身体は血糖値が急激に上昇したり下降したりすると、倦怠感や眠気などの不調症状が生じる仕組みになっています。

肥満の方は血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンの効きが悪くなっていることが多く、糖質を摂取することで血糖値が急激に変動し、調子が悪くなってしまいやすいです。

 

そこで役立つのが果物です。

果物から得られる糖質は果糖という種類になりますが、果糖はその他の糖質とは違う代謝過程を通ります。

果糖を処理する代謝過程は長年糖質制限をしている方でも正常に保たれている可能性が高いです。

 

そのため、果物を食べても血糖値乱高下症状を起こさず、効率的に代謝を向上させることができます。

まずは果物を1日100g食べることから始めていきましょう!

 

 野菜から食べる

血糖値乱高下症状を抑えるもう一つの方法に最初に野菜から食べる方法があります。

野菜は食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維が糖質の吸収をゆっくりにしてくれて、血糖値乱高下症状を抑えることできます。

これだけでも十分効果的ですが、さらに効果を高めたい方は野菜の後に肉や魚などの主菜を食べ、最後に白米などの炭水化物を摂取すると最も効果的に血糖値乱高下症状を抑えることができます。

野菜から食べ始める

参考:一般社団法人 臨床栄養医学協会

 

まとめ

肥満自体は病気ではありませんが、生活習慣病やうつ病などのリスクを向上させ、時には命さえも脅かす可能性があります。

そのため、最近は肥満に対する栄養指導のニーズが高まってきています。

肥満の栄養指導は難しく思われがちですが、ポイントをしっかりと抑えれば確実に効果を実感してもらえるようになります。

この記事が栄養指導の一助になりましたら幸いです。

一般社団法人臨床栄養医学協会

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