訪問栄養指導に特化した資格「在宅訪問管理栄養士」について徹底解説

一般社団法人臨床栄養医学協会

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「知識を得る」「資格取得」だけではなく、必要な経験・実績を積むことでビジネス化をサポート致します。

訪問栄養指導に特化した資格「在宅訪問管理栄養士」について徹底解説

訪問栄養指導を行う資格として有名なものに「在宅訪問管理栄養士」があります。

2024年現在調べた限りでは、在宅においての栄養指導に特化した資格は在宅訪問管理栄養士が唯一のものと思われます。

 

この訪問栄養指導を行う管理栄養士である「在宅訪問管理栄養士」については、平成23年より認定資格制度がスタートしています。

実際のところ、在宅で療養中の方へ栄養指導を行うにあたり特別な資格は必要ありません。

しかし、医師の指示のもとの訪問とはいえ、管理栄養士1人での訪問は業務以上の責任が伴います。

 

確実な知識や技術を基に在宅での栄養指導を行いたいと思われる管理栄養士の方はこの資格を取得しておくことを強くおすすめします。

先を見越して在宅訪問管理栄養士の認定を受けることで、転職の際に有利であったり、職場内での事業拡大に有効である可能性も高いです。

 

ここではその在宅訪問管理栄養士について詳しくご紹介していきます。

仕事内容だけではなく、その待遇や資格取得の流れなどについても詳しく解説しています。

これからの時代、ニーズが高まると言われている「在宅における栄養指導」を自信をもって実践できるようになりたい、という管理栄養士の方はぜひ最後まで確認してみてください!

 

訪問栄養指導ができる資格 |在宅訪問管理栄養士

訪問栄養指導ができる資格 |在宅訪問管理栄養士

ここでは今注目され始めている「在宅訪問管理栄養士」についての基本的な点について見ていきます。

在宅訪問管理栄養士はどのような役割があり、どのような仕事内容であるのか?

具体的に詳しく解説していきます。

 

在宅訪問管理栄養士とは

在宅訪問管理栄養士は、「在宅医療とかかわる多職種との連携が取れ、かつ在宅療養者の疾患・病状・栄養状態に適した栄養食事指導(支援)ができる管理栄養士」のことで、民間資格です。

 

在宅での療養者や要介護者が増加している現在、在宅における医療的ケアだけでなく栄養面からのケアの需要は今後増大することが予想されますが、そこに対応できる管理栄養士はまだまだ少ない現状にあります。

 

そこで、平成23年(2011)年度に公益社団法人 日本栄養士会・一般社団法人 日本在宅栄養管理学会(旧 全国在宅訪問栄養食事研究会)による「在宅訪問管理栄養士」の認定制度が始まりました。

 

その認定内容としては、「療養者が在宅での生活を安全かつ快適に継続でき、さらにQOLを向上させることができる栄養食事指導(支援)の技術を備えた管理栄養士」とされています。

在宅訪問管理栄養士の役割は2つに分けて考えることができます。

 

①個別栄養指導とそれに必要な生活習慣のサポート

一人一人の食生活を観察し、栄養状態を判断したうえで、健康状態や食習慣に合わせた個別の栄養指導を行い、病状に合わせた生活習慣の改善をサポートする。

 

②QOLの向上に貢献する

一人での食事の準備が困難な人や障害を持つ人などに対し、栄養バランスがとれた食事メニューの提案や食材の選び方、調理方法などのアドバイスも行い、健康管理のサポートに加え、よりよい生活の質の向上にも貢献する。

 

在宅訪問管理栄養士は、「療養者や家族(介護者)が悔いを残さないような療養生活を送るための食・栄養の支援者」であり、全国の在宅においてそのような支援展開がされていくことが期待されています。

出典:公益社団法人 日本栄養士会 在宅訪問管理栄養士

 

在宅訪問管理栄養士の仕事内容

上記のように、在宅訪問管理栄養士の役割は、在宅療養者の病状や栄養状態に適した栄養・食事指導を行うことです。

その実施・指導内容には医療保険を利用する「在宅患者訪問栄養指導」と介護保険を利用する「居宅療養管理指導」のどちらかに基づくため多少異なる点はあるものの、ほぼ共通した内容と考えて大丈夫です。

 

月に1~2回栄養指導のために在宅訪問を行います。

訪問時には、療養者の食事の状況や栄養状態などをヒアリング等で確認し、改善できるような指導を行います。

 

また、食事の管理や偏食、症状の改善となるような具体的提案や体重管理なども行います。

その状況や状態(嚥下機能の状態や好き嫌いなどの好み、食事量や食欲など)は一人ひとり異なるため、その療養者に合わせた臨機応変なサポートが必要とされます。

 

訪問栄養指導を終えた後は、訪問時の記録を基に栄養スクリーニングや栄養アセスメントなど栄養診断を行い、医師やケアマネージャ―との連携の中で、療養者や家族に寄り添った支援を考えます。

また、管理栄養士のスキルのみでは解決できない内容も多々あるため、他職種との連携をとることも仕事をする上で重要となります。

 

在宅訪問管理栄養士の就業場所

在宅訪問管理栄養士の就業場所

現在、在宅訪問管理栄養士が働く場所は少しずつ増えてきていますが、主には2つに分かれています。

1つ目は病院やクリニック、診療所など医療保険が適用される「在宅患者訪問栄養食事指導」ができる医療機関です。

 

2つ目は介護福祉施設やデイケア、デイサービスセンタ―などの通所施設、ケアハウスなど介護保険が適用される「居宅療養管理指導」ができる介護施設です。

いずれの場合も、職場の医師の指示のもと、患者に対して訪問栄養食事指導を行います。

 

最近ではその他に、事業所には属さずフリーランスとして指定事業所と契約して仕事する在宅訪問管理栄養士という選択肢もあります。

また、薬局が在宅患者の訪問栄養指導サービスを開始するにあたり、管理栄養士を採用するケースもあるため、その際に在宅訪問管理栄養士の資格を有しているのは有利となります。

 

このように、在宅訪問管理栄養士が働ける場所は少しずつ広がりを見せてきています。

 

在宅訪問管理栄養士の待遇

在宅訪問管理栄養士の待遇

現時点での在宅訪問管理栄養士の給与は、医療機関や福祉施設などに勤務する管理栄養士とほぼ同等と言えます。

実際に、在宅訪問管理栄養士が募集される際に賃金アップや資格手当支給、資格保有者の優遇などの待遇の文言はあまり見られません。

 

これは、まだ在宅訪問管理栄養士の認定を受けている人数が少なく認知度があまり高くないという要因が考えられます。

在宅療養者は増えているものの、在宅訪問管理栄養士という資格自体が現在普及段階にあるためなかなか認知度は上がっていない現状があります。

 

しかし、高い専門性が求められる在宅訪問管理栄養士の需要は高まってきているのに併せ、国によって「地域包括ケアシステム」が推進されていることもあり、今後は在宅訪問管理栄養士の需要は拡大していくでしょう。

 

それに伴い認知度も上がり、その需要拡大と共に待遇もよくなる可能性は高いと思われます。

管理栄養士の方は、先を見越して在宅訪問管理栄養士の認定を受けていると、転職や職場内での事業拡大の際にアピールポイントが増えるため、その待遇や仕事の幅が広がる可能性が高いです。

 

在宅訪問管理栄養士の資格取得の流れ

在宅訪問管理栄養士の資格取得の流れ可能性に満ちている在宅訪問管理栄養士ですが、実際にどのように認定を受けるのか?

ここからは、在宅訪問管理栄養士の認定を受けるまでの具体的な流れを見ていきます。

 

資格認定に関する概要

在宅訪問管理栄養士の認定審査を受けるためには5つのステップが必要とされます。

前提として、審査を受けるためには申請資格の保持が必要です。

 

審査資格には2つあり、

①日本栄養士会の会員であり、日本在宅栄養管理学会の正会員で管理栄養士であること。

②管理栄養士の登録から5年以上経過し、病院・診療所・高齢者施設などにおいて管理栄養士として従事した日数が通算で900日以上(週休2日と仮定して、3年6か月以上の期間が必要)であること。

とされています。

 

上記の資格を満たし、在宅訪問管理栄養士の認定を受けるためには、

  • 学習プログラムの所定の内容を全て終了する
  • 所定の認定試験に合格する
  • 在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポート審査を受けて合格する

という大きく分けて3つの過程を経る必要があります。

 

2024年度の学習受講期間は、2024年4月5日(金)~2025年3月31日(月)とされており、申し込みの締め切りは8月31日(土)までとなっています。

学習プログラムは段階的になっており、それぞれ学習期間や次のプログラムの申込期限なども設けられているため、計画的に進めることが必要となってきます。

 

出典:

一般社団法人 日本在宅栄養管理学会

日本栄養士会 在宅訪問管理栄養士

 

認定までの流れ

次に認定までの流れの5ステップについて具体的に見ていきます。

 

①日本在宅栄養管理学会のホームページからの申し込み

上述したように、基本として学習プログラムを受講する必要があります。

その内容は、事前学習・ファーストステップ学習・セカンドステップ学習で構成されています。

 

受講費用は、会員34,500円、非会員43,500円とされており、全て税込で入会金、年度会費、テキスト代を含んだ価格となっています(入会金と年度会費は非会員の場合のみ含む)。

決済システム利用料として220円が加算される点は注意が必要です。

 

②e‐ラーニング(インターネットカレッジ)の受講

入金を済ませたら、テキストとe-ラーニングによる事前学習プログラムを始めます。

インターネットによる受講となるため通学の必要はありません。

 

学習後、30問の確認テストを受けて自己採点し、全体の6割以上の正答率で合格となります。

もし不合格となった場合は追試の受講が可能です。

 

次に、e-ラーニングでのファーストステップとしての講義の受講となります。

12月の認定試験を受験する場合は9月末までにファーストステップまでの学習を終える必要があるため、自分の目標とするところを定めて計画的に進めることが大事となります。

インターネットカレッジ自体は翌年の3月31日まで利用することが可能です。

 

③セカンドステップ学習・認定試験受験申込

2024年度の場合、2024年9月30日までにファーストステップまでの受講が終了した人を対象に「実施要項」が送付されます。

届いた場合のみセカンドステップ研修・認定試験への申し込みができる仕組みとなっています。

 

この申込期間は9月26日~10月25日までとなっています。

認定試験受験料は11,000円とされており、認定試験料、在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポート審査料が含まれていますが、税別の価格となっています。

 

④セカンドステップ学習・認定試験の実施(ワークショップ・認定試験)

2024年度の場合、セカンドステップ学習は、事前動画配信と2024年12月7日(土)にオンライン(ZOOM)で実施予定とされています。

認定試験については2024年12月8日(日)に各ブロックにて実施が予定されています。

 

セカンドステップ学習と認定試験は2日間で1度の実施とされています。

認定試験に不合格の場合の受験資格は2年間有効とされています。

 

⑤在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポートの提出

セカンドステップ学習・認定試験に合格した場合、2か月以内に「在宅訪問栄養食事指導実施・実践症例検討報告レポート」を提出します。

 

在宅での症例が必要とされるため、就業先によっては周囲の協力と理解が欠かせません。

在宅訪問指導を実施していない場合、あらかじめ時間と許可を取れるよう段取りを取っておく必要があります。

 

レポート審査不合格の場合は、再審査料6,600円(税別)がかかります。

 

以上の5ステップを経てレポート審査に合格すると、晴れて在宅訪問管理栄養士の資格が認定されます。

認定者には顔写真付きの認定証が付与され、その交付料(認定料)は11,000円とされています。

資格の有効期間は認定日から5年間です。

 

出典:

一般社団法人 日本在宅栄養管理学会

・日本栄養士会 在宅訪問管理栄養士

 

認定資格を取得したその後について

認定を受けてから5年後に資格の更新が可能です。

ただし、その5年の間に研修会や学会へ参加するなどの自己研鑽が必要とされます。

 

日本栄養士会のホームページによると、日本栄養士会及び日本在宅栄養管理学会が「在宅訪問栄養食事指導において必要な知識や技術を得るのに適している」と判断した学会・研修会などへの参加と発表などにより、20単位を取得して更新の申請をする、との明記がされています。

その際の更新料は税込7,700円とされており、以後5年ごとの更新となります。

 

出典:日本栄養士会 在宅訪問管理栄養士

 

在宅訪問管理栄養士の実際の活躍状況について

在宅訪問管理栄養士の実際の活躍状況について

在宅訪問管理栄養士の認定を受けている管理栄養士は、2023年度4月1日現在で1,274名です。

厚生労働省によると、2023年度の管理栄養士登録者数は116万名以上とされていることからも分かるように、在宅訪問管理栄養士はまだまだ認知度が低く少ないというのが現状です。

 

しかしながら、在宅訪問栄養食事指導の依頼件数は年々増えており、管理栄養士が療養者の自宅訪問をする回数も増えてきています。

国が2025年までに推し進めるとされる「地域包括ケアシステム」の構築も、あと一年と迫る中、高度で専門的な知識と技術を持つ在宅訪問管理栄養士は、これからより必要性を増していく資格として期待されています。

 

出典:日本栄養士会 在宅訪問管理栄養士

 

まとめ

在宅訪問管理栄養士について、具体的に見てきました。

資格を保持していなくても管理栄養士であれば在宅での栄養指導は可能です。

 

しかし、医師の指示のもとに訪問するとはいえ、実際には管理栄養士1人での訪問は食事指導という業務以上の責任が伴います。

その責任の重さに加え、栄養・生活アセスメント能力、病態栄養管理能力、栄養ケア作成能力などが問われ、さらには現場に1人でいながら他職種との連携を同時に図るコミュニケーション能力も要されます。

 

個々のケースに応じた冷静で臨機応変な対応も求められるため、その実践のための学習やトレーニングを積んだ末に認定される在宅訪問管理栄養士は、その高い知識と技術と実践力が備わっている、期待度の高い資格としてこれから先広く需要が高まっていくと思われます。

一般社団法人臨床栄養医学協会

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