食事指導の看護計画を立てる際には絶対に意識しないといけないことがあります。
それは、「伝える対象が誰なのか」「具体例が書けているか」です。
食事指導なので、行動の変化を促したい何かがある状態なんですよね。
そのために、伝える対象は「患者さん」なのか、「ご家族」も含める必要があるのかを見極め、かつ具体的に何をどのように伝えるのかが重要になります。
それができていないと、もしあなたが教科書通りの看護計画を提出したとしても、実習指導者や担当教員の指導や修正がはいり、やり直さなければいけない可能性が高いです。
どうせならやり直しがない一発で完成度の高い食事指導の看護計画を作りたくないですか?
そのためには絶対に知っておかないといけないポイントがあります。
この記事では看護計画を作る際に知って得するポイントを紹介していきます!
最後にはそのポイントを意識した疾患・病態別の患者さんに対応した、具体的な看護計画の例も紹介していきますので、ぜひ確認してみてください。
目次
高評価がもらえる食事指導の看護計画
高評価のポイントがわかる食事指導時の看護計画立案のコツを紹介していきます。
実際時間にも追われ、とりあえず埋めるだけの看護計画になっていませんか?
何が正解なのかわからなくて、ポイントを抑えられていない学生さんも多いです。
以下のポイントをふまえれば「他の学生さんとは違うな」、周りから見ても「あの子できるな」と思われることでしょう。
それではそのポイントを紹介していきます。
目標設定は主語を意識
看護目標設定時、主語は必ず患者さん(時には家族)にしましょう。
看護目標は、看護を実践し患者さんをどの状態に導くかを示すものです。
患者さんにとって現実的で達成可能な内容なものを「患者さんを主語」にして記載してください。
例えば間食でハイカロリーなものを食べてしまう患者さんに対して「間食のデメリットを説明する」というのは主語が看護師になっていて、誰の計画かわからなくなってしまいます。
そうではなくて、患者さんを主語として「適切な間食を選ぶことができる」とすれば、適切な目標になっているといえます。
最終的には、この看護目標が達成できたか評価し、次のステップに進む必要があります。
そのため、看護師側が評価できる文言であることもポイントです。
先ほどの患者さんの例でいくと「間食のデメリットが理解できる」という目標をたてたとします。
主語は患者さんになっているのでOKですが、理解できたかどうかというのを評価することは難しいです。
「適切な間食が具体的に発言できる」「適切な間食を購入することができる」など観察することで評価できるものになっているかという視点を意識しましょう。
客観的な数値での評価ができるもので目標設定するのもいいですね。
看護目標は主語を患者さんにして書き、達成できたかどうかを後から評価できるように設定しておくと高評価に一歩近づくでしょう。
観察計画は疾患との関連性を理解すること
観察計画の質は疾患理解の深さによっても左右します。
そもそも観察計画は、患者目標達成に向けて看護師の目で見て確認できる患者さんの情報を記載しますよね。
糖尿病の患者さんの場合「どの血液データを確認すべきかなのか」「現在の状況(血糖コントロールなど)はどうか」「合併症の症状の有無や程度」など疾患理解が不可欠になります。
疾患理解がベースにないと、食事指導を進めていくうえでも、現在の患者さん自身の病識や治療に対する知識や認識がどの程度なのかの判断が適切に行えません。
わかっているつもりでも、もう一度教科書を読んでみると「あ、この症状も主訴としてある!」「この身体症状もでている!」と点と点がつながるきっかけになることもあるでしょう。
参考書の該当箇所を開いてみてもかまいません。
改めて理解を深める行為が高評価に近づいていくといえます。
そこさえ理解していれば、現状で何を観察すべきで今後どんな症状に警戒すべきなのかなど、目標達成に必要な観察項目が自然と浮かんでくるでしょう。
行動計画では対象の思いに寄り添う姿勢も記載
食事指導をする場面ではついつい正しさを押し付けてしまっていませんか?
「甘いものは血糖値をあげるから食べちゃダメです」「塩分は血圧をあげるから食べないでください」など正論を押し付けてしまうと、余計に話を聞いてもらえないことにもつながりかねません。
もちろん患者さんのキャラクターや理解度によって、意図して上記の様な対応が必要なことも可能性としてはありますが、結局は患者さんやご家族に合わせた対応が求められます。
食事指導の目的は行動変容を促すことにありますよね。
対象の理解度や行動変容ステージによっても対応は変わりますが、例えば必要性は理解しているけどなかなか行動が伴わない方の場合、本人も葛藤しているケースも多いです。
一方的な情報提供になってしまわないよう、患者さんやご家族の思いにも目を向け、一度受けとめてあげることも重要になります。その上で実現可能なものを一緒に探していきましょう。
例えば糖尿病患者さんに「甘いものは食べないでください」というよりも、まずは「これからお菓子とどのように付き合っていきましょうか。
今お考えのことを聞かせてもらえませんか?」と思いを確認するといった感じです。
思いを聞いたうえで、ストレスなどやめれない原因があるならその解消に努めることもひとつですし、一歩が踏み出せない方には「期間を決めてやめてみませんか?」などのきっかけを与える方法もあります。
間食なしは絶対無理という方には「食べないじゃなくて、代わりに〇〇を食べるとこんなメリットがあります。」(例:間食にシュークリーム→栗などの低GIのものなど)などの代替案の提案もできます。
※低GIとは、血糖値が上がりにくい食材のことです。
患者さんやご家族の理解度や重症度、行動変容ステージによってアプローチはかわってきますが、まずは気持ちによりそう姿勢を行動計画に示し、思いを引き出して的確な関わりや情報提供ができるよう意識していきましょう。
教育計画は対象や具体性がミソ
食事指導を行う際の教育計画では、患者さんの意識レベルや認知度、普段の生活行動によっては「家族」への教育計画も含まれてきます。
まずは患者さんの状態を判断し、誰に何を説明・指導していくのか明らかにしましょう。
また、どのような食事指導をするのかによっても異なりますが、患者目標を達成するために何を説明・指導するのかをより具体的に記載することが大切です。
例えば、糖尿病患者さんへの教育計画で「A氏の課題を明らかにしたうえで糖尿病の食事療法を説明する」と記載すると、食事療法という広義なワードから評価者もあなたがどこまで理解できているのかが判断しにくくなります。
・食事療法の重要性を理解してもらうところへの介入なのか
・現在の食事内容と摂取量を明確にするところへの介入なのか
・栄養バランスについての介入なのか
・間食についての介入なのか
・早食いなど食事方法へ介入なのか
など(すべて該当する場合もあり)具体的に記載しておくと、あなたが理解できていることが伝わりやすいです。
説明・指導を行う対象が患者か家族もしくは両者なのかを明らかにすること、何をどのように説明・指導するか具体性を明らかにすることで、すぐに食事指導の準備にうつれる教育計画の立案につながるでしょう。
疾患・病態別食事指導時の看護計画
食事指導時の看護計画のポイントを抑えても、いざ計画立案しようとすると手が止まる…あるあるです。
疾患や重症度、生活背景、疾患への思いなど個別性がありすぎて応用がきかせづらいですよね。
そこで実習でよく出会う3つの事例とその食事指導時の看護計画案を紹介します。
「栄養Navi」というサイトで資料も無料でダウンロードできるので、上手に活用するとイメージももちやすく、看護計画の立案しやすくなると思うのでオススメです。
糖尿病の患者さんに対する食事指導の看護計画
生活背景やどこまでは理解されているのかなど、対象によって異なるとは思いますが、下記事例で食事指導時の看護計画を例を挙げます。(疾患の看護計画がすでに立案済と仮定します。)
【糖尿病が今後進行した際の病識や危機感が乏しく、なんとなくダメだとわかってはいるが、スタッフに 隠れて間食(饅頭やチョコレートなど)を食べている患者さんの場合】
看護目標:治療への積極的参加意思を示す発言がある
適切な間食を選択できる
【O-P】
高血糖症状の有無(口渇、多飲、多尿、全身倦怠感など)
低血糖症状の有無(倦怠感、疲労、集中力の低下、眠気、冷汗、動悸など)
血液データ(血糖値、GA、HbA1c)
血糖自己測定(SMBG)を行っている場合の測定値
食事・間食状況
治療状況(内服・注射など)
体重
入院前の食生活や嗜好品
主な知識の情報源
生活リズム
糖尿病合併症の有無
糖尿病と症状の関連性の理解度
糖尿病合併症の理解度
教育をうけた経験の有無とそれに対する疑問点の有無
治療に対する思い
入院生活に対する思い
家族の治療に対する思い
【T-P】
現時点での糖尿病とその合併症と経過、それに対する具体的な治療方法についての認識を確認する
教育や指導内容を習得する能力があるかを確認する
患者にとって現実的で達成可能、かつ治療への参加も実現できる間食の摂取方法を探す
患者以外の家族にも教育や指導をアプローチする
患者の思いに寄り添い、尊重した態度で接する
患者の思い、不安に思っている事を傾聴する
患者の発言、表情や行動で気になった事は理由を確認する
説明・指導のボリュームや内容は患者の理解度や体調にあわせて調整をする
【E-P】
糖尿病の進行した場合の起こりうる疾患や合併症について説明する
上記に対する具体的な治療法について説明する
ハイカロリーな間食によってどのような影響を及ぼすのか・どのような症状につながるのかを説明する
間食を選ぶコツを具体的に説明し、適切な間食内容について指導する
血糖値に影響がでにくい間食のタイミングについて説明する
低栄養状態の患者さんに対する食事指導の看護計画
低栄養状態は「高齢に伴う影響」「孤独感やストレスの影響」「がん治療の副作用による消化器症状」「脳血管障害による摂食嚥下障害」「CKDによる食事制限の影響」といった疾患や薬剤の影響など、要因は多岐にわたります。
今回は下記事例で食事指導時の看護計画の例を挙げます。
【食欲不振により食事摂取量が少なく低栄養状態にある患者さんの場合】
看護目標:各食〇割摂取できる(患者さんの現在の摂取状態にあわせて実現可能な数値を入れる。)
〇〇が食べたい、食欲が前よりも増えたなど食事摂取に意欲的な発言がある
【O-P】
現在の食事の状況(食欲の有無、摂食量、内容、日内変動の有無、食事の環境など)
入院前の食生活(普段の食事量や内容、嗜好品、時間)
食欲の有無
活動量
消化器症状の有無
脱水傾向の有無(水分摂取量・排尿回数・水分出納の観察、口渇感の有無)
栄養状態の観察
‐体重
‐BMI
‐血液データ(TP、Alb、Hb、Ht、Na、K、Cl)
‐皮膚の乾燥
‐倦怠感の有無
‐筋肉量や皮下脂肪量の減少による骨の突出
‐脱毛や毛髪のぱさつき
食事に関連する身体機能の状態(口腔機能など)
食事に対する思い、好みの有無
疾患や治療に対する不安の有無
食事摂取の必要性の理解度
【T-P】
食事環境を整える
‐温度・照度
‐清潔感のある空間を作る
‐時には病室から出てディルームでの食事(意向を確認する)
‐おむつなど匂いのあるものの撤去
‐時間の調整(家族との食事が望ましい場合は許す範囲での食事時間の調整も考慮)
‐食事前の身体的準備:整容・手洗い・含嗽
基礎疾患や治療、薬物療法に応じた食事の調整をする(患者や主治医、栄養士と相談)
病棟内での活動量を増やす(午前・午後で病棟3周歩くなど)
‐ADLが低い場合はベッド上運動を実施する
説明・指導のボリュームや内容は患者の理解度や体調にあわせて調整をする
患者の思いに寄り添い、尊重した態度で接する
患者の思い、不安に思っている事を傾聴する
患者の発言、表情や行動で気になった事は理由を確認する
【E-P】(食べてくださいと圧をかけるというよりは、食べれるもの・方法を一緒に探す指導を実施。)
患者の理解状況にあわせて食事・栄養を摂取する必要性(感染リスクや栄養状態の悪化など)を説明する
(例えば活動量の低下により食事量も少なくても問題ないと捉えている場合は考えの修正が必要となる)
患者の希望を汲み取った上で、対応可能な食事形態について指導する
一回の食事量を減らし、食事回数を増やす方法もあることを説明する
喉を通りやすく、患者が好むものがあればストックを置いておくことも一つの方法であると説明する
(例:プリンやヨーグルト等半固形なものやリンゴジュースや野菜ジュースなど手軽にエネルギー補給できるものなど。
状況によってはメイバランスなどの高カロリーの栄養補助食品も検討。
ドラッグストアや病院内のコンビニに置いてある場合もあり、ご本人が手軽に試してみるのもひとつ。)
低栄養による影響は下記資料の右半分を活用するのもありです。
食欲がない方の場合、下記資料の左半分の内容を活用するのもひとつです。
高血圧症の患者に対する食事指導の看護計画
入院患者さんとなると、脳血管疾患の発症や慢性腎臓病の進行など様々な疾患を考慮した計画が必要になると思われますが、今回はベースとなる高血圧のみに焦点をあて、下記事例で食事指導時の看護計画の例を挙げます。
【高血圧により食事療法が必要にも関わらず、減塩食がおいしくないからと家族に味塩や梅干を持ってきてもらい、味をプラスして食べている患者さんの場合】
看護目標:減塩食でも食事の時間として楽しめるような発言がある
治療につながる調味料の選択ができる
【O-P】
血圧
血圧の推移
内服状況
随伴症状の有無
(意識レベル、頭痛・嘔気・嘔吐、立ちくらみ・めまい、発汗、四肢冷感など)
食事の内容、摂取量、時間
塩分摂取量
体重の推移、BMI
排便状況
睡眠状況
血液データ(Alb、TP、CRPなど)
画像データ(エコー、レントゲンなど)
入院前の食生活や嗜好品
主な知識の情報源
生活リズム
血圧と塩分の関連性の理解度
疾患や治療に関する疑問、不安
教育をうけた経験の有無とそれに対する疑問点の有無
治療に対する思い
入院生活に対する思い
家族の治療に対する理解度
家族の治療に対する思い
【T-P】
患者と家族に高血圧とそれに伴い今後発症しうる疾患への理解度を確認する
患者と家族の食事と血圧の関連性の理解度を確認する
患者以外の家族にも教育や指導をアプローチする
患者と家族の思いに寄り添い、尊重した態度で接する
患者と家族の不安に思っている事を傾聴する
説明・指導のボリュームや内容は患者や家族の理解度や体調にあわせて調整をする
【E-P】
患者と家族に高血圧とその後に起こりうる合併症について理解度にあわせて説明する
患者と家族に食事と血圧の関係性について説明する
‐エネルギー制限や塩分制限をすることで血圧にどのような影響があるのか
患者と家族に1日の食塩摂取量(6g未満)とその中でも食事を楽しむコツを指導する
‐梅干(加工品)は一粒あたり食塩量2g(毎食梅干1粒プラスするだけで、1日の上限に達する)
‐基本的に食事は計算された減塩食で完了するのが理想。
だが塩や梅干の使用をやめることが厳しい場合、代替案を紹介。
塩の代替には酸味(酢や柑橘類)が有効。生姜や七味などのスパイスやハーブ、だしの活用もあり。
補足資料:調味料・加工食品の塩分量
まとめ
食事指導の看護計画で何度も提出しなおすようなことにならないように、誰に何をどのように話すかを具体的に記載していきましょう。
そのためには疾患理解はもちろん、対象理解のために寄り添いながら思いを引き出しつつ、望ましい行動を抑制している因子を深堀することが大切です。
事例の看護計画も参考にしながら「あの子できるな」と周りから一目おかれる未来を手に入れましょう。