
管理栄養士として働き始めて「患者さんの前だと、なぜか言葉が出てこない…」「これで合ってるのかな…」など栄養指導のたびに、そんな不安を抱えていませんか?
また、多職種連携が進む職場で、医師や看護師との情報共有の際に自分の発言に自信が持てないと感じている方も多いですよね。
だからこそ知識をつけるために、SNSで栄養情報を見て勉強しようと思っても、眺めているだけで終わってしまう…、そんな経験、あなただけではないと思います。
この記事では、「何を、どうやって」勉強すれば、自信を持って根拠ある栄養指導ができるようになるのか、具体的なステップでご紹介します。
最後まで読んでいただくと、あなたも管理栄養士として、患者の役に立ち、組織にも貢献できることで自信にも繋がると思いますので、ぜひ参考にしてみてください!
目次
栄養指導がうまくいかない理由とは?
この章では、なぜ栄養指導がうまくいかないのか、どうしたら患者さんにうまく伝えられるようになるのかについて、解説していきます。
相手にうまく伝える方法
あなたの周りにも説明が上手く、端的に相手に情報を伝えることができる方がいると思います。
実は、そういった方はセンスが良くて特別なのではなく、上手く伝えるための法則に乗っ取って説明しているということをご存知でしょうか。
病院などで働いていると、他職種である医師や看護師に患者さんの情報共有や相談を行うことは多いと思います。
その場合、日々慌ただしく対応している現場においては、スピードや適切な情報量が求められます。
また、患者さんに説明する際には専門用語を使わず、相手の理解度を考慮しながら説明する必要がありますよね。
このように、相手、状況、場面などによって、説明を工夫しなければなりません。
そのためにまず大切なことは、相手の立場に立ち、俯瞰した視点を持つことが大切です。
上記の医師や看護師など他職種への報告の場合、時間にゆとりがなく、次の予定を立て込んでいる相手に、ゆっくりと長ったらしく説明されたら、相手は聞く気にはなりません。
また、患者さんの場合、こちらが当たり前と思っている知識を相手の様子を顧みずに大量の情報量を伝えても理解できるはずもありません。
まずは相手の立場に立ち、今、求められている状況を理解した上で、説明することが大切です。
話の組み立て方
次に、具体的な説明の進め方について、解説していきます。
まず、上記の医師や看護師など、情報共有を端的に行わなければならない場合のテンプレートについて説明していきます。
先ほど、お伝えした通り、それぞれの専門職の場合、時間に限りがあることが多いと思います。
そのため、「15秒しかなかったら、何を伝える?」ということを自問しましょう。
それを前提として、いくつかのステップに分けて解説します。
STEP1 話のテーマを伝える
STEP2 言いたいことの数を伝える
STEP3 結論を伝える
STEP4 その結論の根拠や理由を伝える
STEP5 具体例を挙げる
STEP6 要点、結論を繰り返し、締めくくる
STEP1では、相手にこれから何の話をするかを伝え、話の見通しが立つと、相手は聞きやすくなります。
STEP2では、話を整理して聞いてもらうために、「今日、ご報告させていただく内容は2点あります。」というように、数を宣言します。
そうすることで、相手は話の全体像を掴むことができます。
そして、STEP3、4では、結論を先に伝え、それを補足するように結論の後にその根拠や理由を説明します。
枕詞として、「結論から申しますと、」と添えることで、相手はこれから詳細について説明してくれるということを理解してくれます。
さらに、STEP5として、具体的な例を出し、結論を補足、補強する情報を盛り込むことで、その結論の正しさを強化します。
最後にSTEP6で、再度、結論を伝えることで、今日伝えた内容を相手の印象に残します。
このように、法則に沿って説明することで、限られた時間の中でも相手に適切な情報を伝えることができますので、何度も意識して使用してみてください。
次に、患者さんに伝える場合のポイントをお伝えします。
まず、大切なことは空気を読むことです。
性別、年齢、性格によって、理論的な説明を求める方や小難しいことはいいからと、理由よりも答えだけが欲しい方もいます。
そのため、どんな相手にも、先ほどのような法則を使うというわけにはいきません。
そこで大切なことは、「かみ砕くこと」です。
具体的にお伝えしますと、
- 専門用語を使わないこと
- カタカナや省略した言葉を使わないこと
- 英語を使わないことが前提です。
これらは高齢者や子供など、年齢に関わらず、こちらが理解できているだろうという思い込みで伝えると、相手に言葉が届きにくくなりますので、注意しましょう。
そして、例え話などを取り入れ、誰もがイメージしやすい共通の理解がある内容に置き換えることで、相手は納得しやすくなります。
こちらも経験が増えてくることで、相手の空気を読む力もついてくると思いますので、相手目線で説明することを意識して、上記の工夫を取り入れてみてください。
若手管理栄養士におすすめの勉強ステップ4選
次にこの章では、どこから手をつけていいか分からなかった栄養指導の勉強方法を効率的に、そして、着実にステップアップするための4つの方法をご紹介します。
基礎の棚卸し(まずは“自信の土台”を作る)
「基礎は分かっている」と思いがちですが、改めて見直すことで新たな発見があるかもしれません。 自信の土台を固めることから始めましょう。
食事摂取基準・疾患別ポイントの再確認
まずは、基本中の基本である「日本人の食事摂取基準」や担当することの多い疾患(糖尿病、腎臓病、高血圧など)別の食事療法のポイントを改めて確認しましょう。
「この患者の年齢や活動量、内臓機能の状態などから、どのくらいのエネルギーが必要で、栄養素の配分はどうすればいいのか」といった具体的な疑問に対して、自信を持って根拠を答えられるようにしておくことが重要です。
最新のガイドラインに基づいているかという点も意識して確認しましょう。
よくある質問集の見直し
患者さんからよく聞かれる質問に対して、あなたはすぐに答えられるでしょうか。
例えば、 「〇〇を食べても大丈夫ですか?」「△△は体に良いと聞きましたが本当ですか?」といった質問への「自分なりの模範解答」を準備しておきましょう。
最初は先輩の説明や書籍の内容の受け売りでも構いません。
繰り返し答えるうちに、あなたの言葉として定着し、自信につながっていきます。
実践から学ぶ(机上では得られない気づき)
座学だけでなく、実際の栄養指導から得られる学びは計り知れません。
様々な方へ対応していくことが自身の経験値としてのデータベースとなります。
論文や書籍から得られる科学的根拠と自身の経験値を組み合わせることで、あなただけの唯一無二の栄養指導の方法を確立しましょう。
指導シーンを録音/記録して振り返る
可能であれば、上司の許可を得て自身の栄養指導を録音したり、詳細に記録するなど後から振り返れるようにしましょう。
「あの時、もっと違う言い方ができたな」「患者さんの反応を見落としていたな」といった客観的な気づきが得られます。
また、 話し方や間、声のトーン、質問のタイミングなど、改善点が見えてくるはずです。
先輩のトークを真似してみる
職場の先輩や尊敬する管理栄養士の指導を見学し、指導内容を聞かせてもらうことも有効です。
「この状況で、こんな風に伝えるのか」という発見がたくさんあるはずです。
まずは良いと思った話し方や表現を真似してみることから始めてみましょう。
最初はぎこちなくても、繰り返すうちに自分なりの表現になっていきます。
エビデンスとガイドラインを味方にする
「私の言っていることは正しいのだろうか?」という不安を払拭するためには、エビデンス(科学的根拠)に基づいた情報を学ぶことが不可欠です。
また、さらにその情報が本当に正しいのかを判断するための知識も必要です。
以下に、その判断する方法をお伝えしていきます。
信頼できる情報源の選び方
インターネット上には様々な栄養情報が溢れていますが、その全てが正しいわけではありません。
まずは、 厚生労働省、日本糖尿病学会、日本循環器学会など、公的機関や学会が発表しているガイドラインを優先的に参考にしましょう。
また、査読つきの論文が掲載されている専門誌なども信頼性が高い情報源です。
論文の信頼性を判断するためのエビデンスレベルピラミッドという階層構造があるのをご存知でしょうか。
ピラミッドは、上に行くほどバイアス(偏り)が少なく、信頼性が高いことを示しており、指導内容の根拠の強さを判断する目安になります。
以下に、信頼性が高い順に、説明します。
- システマティックレビュー / メタアナリシス:
複数の質の高い研究(主にRCT)を統合し、統計的に解析したもので、最も信頼性が高い
- ランダム化比較試験 (RCT):
対象者をランダムに複数の群に分け、介入の効果を比較する研究であり、バイアスが入りにくく、高い信頼性がある
- コホート研究:
特定の集団を長期間追跡し、要因(食習慣など)と病気の発生の関連を調べる研究
- 症例対照研究:
病気のある群とない群を比較し、過去の要因(食習慣など)を遡って調べる研究
- 症例報告・ケースシリーズ:
1人または少数の患者の症例を報告したもので、珍しい病気や治療法の報告に有用だが、一般化は困難
- 専門家の意見、基礎研究:
専門家の個人的な意見や動物実験・細胞実験などであり、臨床的なエビデンスとしては最も弱い
以上のように、指導の根拠を探す際は、まずはピラミッドの頂点に近い「学会の診療ガイドライン」や「システマティックレビュー/メタアナリシス」から確認する癖をつけましょう。
まずは、公的機関や学会が発表しているガイドラインを優先的に参考にし、SNSで流れてくる情報に関しては、必ず情報源とエビデンスレベルを確認する癖をつけましょう。
現場で使える「これだけは知っておきたい」資料
多忙な業務の合間に、分厚い専門書を読み込むのは大変ですよね。
まずは、自分が担当する疾患や対象者に特化した「これだけは押さえておきたい」というポイントをまとめた資料を手元に用意しましょう。
例えば、「糖尿病患者さん向けのコンビニ食選びのポイント集」や「腎臓病食の食品交換表」など、日々の指導で頻繁に使う情報をすぐに参照できる状態にしておくことで、指導の際に「あれ、なんだっけ…」と焦ることが減ります。
自分専用の資料をよく遭遇する疾患ごとにデータでまとめておくことで、先程お伝えした自分のデータベースを見える化することができます。
後回しにする癖がある方は、1つ1つ自身の課題を整理し、小さなステップを一歩一歩踏むように進めていきましょう。
そうすることで、効率よくまとめ作業を行うことができますので、ぜひ参考にしてみてください。
アウトプットを前提に学ぶ
この章では知識の定着を効率的に高めるための学び方について解説します。
ラーニングピラミッドという図を見たことがあるでしょうか。
インプットした知識は他者に伝えたり、自身で体験することは見たり聞いたり、本を読んだりすることよりも圧倒的に定着率は高まります。
つまり、何らかの形でアウトプットすることで、より深く知識が定着します。
それでは、次の項で、具体的なアウトプットの方法について説明していきます。
まとめノート・資料化・SNS発信で記憶が定着
先程の章で、よく遭遇する疾患についてデータでまとめ、見える化することは自身のデータベースを作ることに繋がるとお伝えしました。
これは実は、手を動かして、学んだ知識を記載することで、同時にアウトプットしていることになるのです。
学んだことをただ書き写すのではなく、自分の言葉でまとめ直すことで、理解度が深まります。
さらに、図やイラストを交えながら、分かりやすく表現することを意識すると、より記憶に残りやすくなります。
他には、InstagramやX(旧Twitter)で栄養情報アカウントをフォローしている場合、今度は自分が情報を発信してみることも1つのアウトプットの手段です。
学んだ知識を誰かに伝えることを意識することで、より深く、体系的に学ぶことができます。
仲間と勉強会を開いて学びを共有
一人で抱え込まず、同じ志を持つ管理栄養士の仲間と一緒に勉強会を行うことも非常に効果的です。
「この症例についてどう考えますか?」「最近読んだ論文でこんな発見がありました」など、症例検討会や論文の共有などを通して、新たな視点が得られます。
時には、模擬栄養指導をやってみて、お互いにフィードバックし合うのも良い練習になります。
まとめ
ここまで、栄養指導の際に他職種や患者さんにうまく伝えるための方法や栄養指導のための勉強方法、そして、そのインプットする情報の質を判断する方法についても解説してきました。
これから管理栄養士として栄養指導を進めていくにあたって、相手への伝え方や科学的根拠に基づいた指導をしていくための全体像はイメージできたのではないでしょうか?
あくまで、学習することは目的ではなく手段であり、ゴールは自信を持って栄養指導をすることで、信頼される管理栄養士へと進んでいくことです。
今後、どのようにチームの一員として、社会に貢献していけるかが大切です!
ぜひ、この記事の内容を参考にみなさんの今後に活かして頂きたいと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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