健康のためには食事が大事なのは何となくわかるけど、実際に病院で栄養指導を受けるとなると少し気が引けますよね。
しかし、医師から栄養指導を受けるように提案されるのには理由があるんです。
このまま、栄養指導を先延ばしにしていると、気付かぬうちに病気に進行したり、症状が悪化することも考えられます。
栄養指導がどのようなものかわからず、不安な気持ちから受けられずにいるかもしれませんが、現状維持では改善にはなりません。
この記事では、栄養指導の内容やその重要性、疾患別の指導内容などについても詳しく解説しています。
最後まで読むことで、栄養指導に対する不安が解消され、一歩踏み出せるようになると思いますので、是非読んでみてください。
目次
栄養指導とは
栄養指導とは、「食生活に不安がある人、疾患のある人を対象に、病気の予防、症状の改善のためにカウンセリングや食事の指導を行うもの」です。
抱えている悩みや疾患が一人ひとり違うように、栄養指導の内容も個人によって異なります。
実際の栄養指導の内容は以下のようになります。
医師による診断
診察や検査結果により医師から「栄養指導を受ける必要がある」と判断された場合、栄養指導を受けることになります。
また、
「健康診断や人間ドックの結果が年々、基準値から外れて気になり始めた。」
「将来のため、病気の予防のために栄養指導を受けてみたい。」
など、医師に相談のもと栄養指導を受けることも可能です。
初回指導
医師より栄養指導の必要性があるとの判断がされると、管理栄養士が栄養指導を行います。
まず始めにカウンセリングを行い、普段の食事内容、運動習慣など個人の生活スタイルから全体像をイメージします。
同じ生活スタイルでも食の好みや食事量、その他運動習慣の違いなどによっても指導内容は大きく異なります。
そのため、より詳細なカウンセリングを行います。
次に診断結果や血液データ、体組成の結果と照らし合わせながら、目標設定を行い、具体的なアドバイスを行っていきます。
例えば、
- どれくらいの量をどのタイミングで食べたら良いか
- コンビニで選ぶ時のポイント
- 自炊する時のおすすめ食材、調理法
- 外食での注意点
など個人に合わせたアドバイスを行います。
あくまで食事は習慣が大切です。
1日だけ理想的な食事をしても効果的ではありません。
そこで大事なことが、
「無理なく継続できる」
「自分の生活スタイルに合っている」
など、習慣として身につけることです。
栄養指導を受けることで、医学的な観点から自分に合った食習慣を身につけ、目標達成に向けてアドバイスを受けながら安心して進めることができます。
継続指導
初回指導を受けて、繰り返し指導を受けた方が良いと判断された場合、あるいは継続を希望する場合は、
「初回指導でのアドバイスを実践できているか」
「実施してみてどうだったか」
などフィードバックが行われ、改めて目標達成の策が練られます。
栄養の専門家である管理栄養士から、このように個々に合った方法で栄養指導を受ける事ができるので、効果的に進めていく事ができます。
栄養指導が必要な人
栄養指導を受ける場面として
「受診の際、医師から栄養指導を勧められて受ける」
「検査結果をみて自ら希望して受ける」
などさまざまです。
しかし、中には栄養指導を受ける必要があると思われる場合もあります。
それに当てはまる人はどのような人なのでしょうか?
- 健康診断や人間ドックの結果で医師より「食生活の改善が必要」と言われた人
- 疾患により「食事の改善が必要」と言われた人
- 生活習慣病を予防したい人
とされています。
上の項目からわかるように、症状の改善が必要な人、疾患を予防したい人は栄養指導を受けるようにしましょう。
では、栄養指導を受けないとどうなるのでしょうか。
医師から栄養指導を受けるように勧められても、
「忙しくて、、、」
「正直面倒で受けたくない」
など栄養指導を受けることを憂鬱に感じる人もいると思います。
例えば、検査結果により病気と診断され、食事をしても栄養が吸収しにくい症状だとします。
その場合、栄養指導を受けないことで症状が悪化し、病気の進行を速めてしまう可能性があります。
他にも、定期的に受ける健康診断や人間ドックで医師から
「このままだと〇〇になる可能性があるので栄養指導を受けてみては、、、」
と提案される場合もあると思います。
このように病気と診断されてないから大丈夫と思い、後回しにしていると気付かぬうちに、体に負担をかけて病気へと進行してしまうこともあります。
「あの時に、栄養指導を受けておけば、、、」
「健康のために、食事にも気をつけておけば、、、」
と後悔し、改善のためにさらに時間やお金を費やすことになる可能性もあります。
栄養指導を勧められている場合は、病気と診断されている場合はもちろんですが、診断までされていない段階であっても、その可能性があると医師は判断しています。
予防のためにも栄養指導を受けるようにしましょう。
健康診断結果別の栄養指導
栄養指導の内容が個々によって異なることは前述しましたが、疾患によってもその方法は異なります。
ここでは疾患別の栄養指導内容について詳しく見ていきます。
血糖値、HbA1cに関する栄養指導
血糖値やHbA1cの数値が高くなると糖尿病のリスクが高まります。
そこで大事なのが血糖値のコントロールです。
血糖値は糖を摂取することにより、血液中に糖が流れインスリンの働きで細胞に運ばれ、エネルギーとして使われます。
しかし、その働きが低下すると血糖値が細胞まで運ばれず、血液中に留まります。
これが血糖値が高い状態です。
栄養指導では糖が細胞まで運べるようにするための対策が重要になります。
では、どのような栄養指導になるのかみていきましょう。
◯PFCバランスの改善
PFCバランスとは、エネルギーとなる栄養素の摂取比率のことで
- P:タンパク質
- F:脂質
- C:炭水化物
を指しています。
適正なPFCバランスは、タンパク質13〜20%、炭水化物50〜60%、脂質20〜25%となります。
炭水化物の摂取割合が減少するとことで食物繊維の摂取量も比例して減少していきます。
そうなると脂質の摂取量が増加してしまい、血糖値のコントロールが悪くなります。
単品料理だとPFCバランスは崩れやすくなるので定食がおすすめです。
◯適正カロリー
自分に合ったカロリーを知る事はとても大切です。
カロリーオーバーは肥満の原因になります。
また、カロリーが少なすぎると代謝が低下して体調を崩す原因にもなります。
◯ゆっくり食べる
咀嚼回数を増やすことで血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。
他にも満腹中枢が刺激され食べ過ぎも予防できます。
◯3食たべる
1日1〜2食だと空腹時間が長くなり、食事をした時に急激に血糖値が上がりやすくなります。
さらに食欲が乱れ食べ過ぎの原因にもなります。
◯食物繊維を摂取する
食物繊維は血糖値の上昇を抑え、食欲に関わるホルモンの働きを助けてくれます。
主食を白米から雑穀米や玄米に変更してみたり、芋や果物を積極的に摂取することもおすすめです。
◯運動をする
運動をすることでインスリンの働きを助け、血糖値のコントロールが改善されます。
糖尿病の食事指導について詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
中性脂肪、コレステロールに関する栄養指導
血中に溶けている悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪が多い、もしくは善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少ないと脂質異常症と診断されます。
原因は、遺伝、肥満、食習慣、運動不足などが関わり、放っておくと脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化、大動脈瘤、腎障害などで命に関わる病気に進行することもあります。
この場合、中性脂肪が高い人、LDLコレステロールが高い人という点でもさらに指導内容が異なってきます。
まずは、中性脂肪が高い人の指導内容を見ていきましょう。
中性脂肪が高い人は脂質の摂り過ぎだけではなく、糖質の摂り過ぎも脂肪が増える原因になります。
そのため、血糖値の上昇を抑えることがポイントです。
具体的な対策としては
- PFCバランスを整える
- 摂取カロリーの適正化させる
- お酒を制限する
といった内容です。
特にお酒(アルコール)は肝臓で中性脂肪の合成を促進します。
また、お酒を飲むことで食欲が増進され、食べ過ぎ、飲み過ぎの原因にもなります。
その他、対策として散歩などの有酸素運動がおすすめです。
運動をすることによって中性脂肪を低下させ、HDLコレステロールを上昇させる働きもあります。
食事改善と運動を組み合わせることにより、より一層効果が期待できますので、取り入れていきたいですね。
次は、LDLコレステロールが高い人の指導内容を見てみましょう。
具体的な対策としては、
- PFCバランスを整える
- 摂取カロリーを適正化させる
- 脂質の中でも飽和脂肪酸の摂取を制限する
といった内容です。
「飽和脂肪酸」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれません。
飽和脂肪酸が多く含まれる食材としては
- 肉の脂身
- 乳製品(チーズやホイップクリーム)
などがあります。
飽和脂肪酸が多く含まれる調理油としては
- バター
- 牛脂
- 豚脂
などがあります。
改善方法としては、
- おかずを肉から魚に変更する。
- 調理油を減らすため、炒める・上げるなどの油調理から、蒸す・煮るなどの水調理へと変更する。
あるいは網焼きなどの調理方法に変更するなどがあります。
脂質異常症の食事指導について詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
肝臓、腎臓の数値に関する栄養指導
肝臓、腎臓に関わる病気とその指導内容を1つずつ見ていきましょう。
まずは肝臓の中でも脂肪肝についての栄養指導を見ていきます。
脂肪肝は肝臓に脂肪が多く溜まっている状態です。
お酒の飲み過ぎでなるアルコール性脂肪肝と、お酒をあまり飲まなくても脂肪肝になる非アルコール性脂肪肝があります。
今回はアルコール性脂肪肝の指導内容について見ていきましょう。
◯PFCバランスの適正化
脂肪肝は肥満や脂質異常症、糖尿病など食生活にも起因するため、バランスの良い食事は必須です。
動物性の脂質、植物油脂の摂りすぎは中性脂肪を増加させる直接的な原因になります。
相対的にオメガ3の摂取が少なくなるので、おかずを肉から魚に変更するのも効果的です。
また、糖質の摂りすぎも中性脂肪を増加させる一因でもあります。
本来は、筋肉や組織でエネルギーとして使われる糖質ですが、余った分は脂肪として蓄積されます。
そのため、自分に合った量を摂取することが大切です。
◯節酒または断酒
アルコール性脂肪肝のおもな原因は飲酒です。
飲酒を辞めることで肝臓の負担が減るのは明らかです。
そのために飲酒量を制限し、休肝日を設けます。
また、アルコール依存症の場合は精神科や専門機関の協力のもと、断酒を行うこともあります。
次に、腎臓疾患の中でも慢性腎臓病に関しての栄養指導について見ていきましょう。
◯高血圧の場合は減塩
塩分の摂りすぎは排泄の過程で腎臓に負担がかかり、高血圧の原因にもなります。
そのため、慢性腎臓病患者では塩分の摂取量を(3g/日以上6g/日未満)と目標値を設定しています。
◯カリウムの摂取制限
高カリウム血症と診断されている場合は、生野菜や果物、海藻、豆腐、芋類などカリウムを多く含む食品を制限します。
細かく切ったり、茹でこぼすことでカリウム含有量を20~30%減少させることもできます。
◯タンパク質の摂取制限
腎臓への負担を軽減するため重症度によって体重当たりの1日のタンパク質摂取量を制限します。
◯摂取カロリーの適正化
年齢、性別、身体活動度により25~35Kcal/kg/日が推奨されています。
◯脂質摂取の適正化
動脈硬化性疾患予防のため、脂質の摂取比を20~25%が推奨されています。
保険適応になる疾患
栄養指導を受けるに当たって、保険が適応されるのか気になっている方もいるのではないでしょうか?
実は、栄養指導の中でも保険が適応されるもの、されないものがあり主に疾患によりその適応の有無が区別されています。
保健適応になる疾患はこちらです。
糖尿病、腎臓病、脂質異常症、胃・十二指腸潰瘍、心疾患、高度肥満症、膵臓疾患、貧血、痛風、など特別食が必要な方、がん、摂食障害または嚥下機能低下、低栄養状態と診断された場合が保険適応となります。
これらに該当しない、便秘改善やダイエットなどの場合は自費で栄養指導を受ける事になります。
栄養指導の種類
栄養指導には、集団栄養指導と個別栄養指導の2種類があります。
ここではその違いだけでなく、メリット・デメリットについても見ていきます。
集団栄養指導
集団栄養指導は予めテーマを決めて、医師や管理栄養士、栄養士などが複数人に対して基礎的な指導を行います。
例えば、糖尿病教室や減塩教室など、そのテーマに該当する患者や家族に対して、疾患に関する情報、栄養の知識や調理法、生活習慣の指導を行います。
病院によっては座学だけでなく、実際にその疾患に関する食事を体験できる場合もあります。
実施する医療機関によって対象者が限られている場合もあります。
多くの場合、入院患者は対象となりますが、施設によっては外来患者も参加できることもあります。
◯集団栄養指導のメリット
同じ疾患を抱えた患者や関係者が集まることが多いので、悩みを共有したり、意見交換をすることもできます。
そこで交友関係が持てるとお互いに目標達成に向けての動機付けにもなります。
◯集団栄養指導のデメリット
人前に出るのが苦手な人にとっては、気軽に質問しづらいかもしれません。
また、個別の目標設定などは難しい場合もあります。
個別栄養指導
個別栄養指導は、管理栄養士または栄養士とマンツーマンで行います。
該当する疾患について、その食事法や生活習慣などについて検査結果をもとに個人にあった指導を受けることができます。
「〇〇をしましょう。」
「〇〇は絶対に食べてはいけません。」
など一方的な指導ではなく、相談しながら実践法を一緒に考えることもできます。
◯個別指導のメリット
検査結果やカウンセリングをもとに指導を行うので、自分に合った目標設定やアドバイスを受けることができます。
また、気軽に質問ができるのも個別指導のメリットです。
◯個別指導のデメリット
担当する指導者と良い関係性が作れないと、モチベーションの低下につながる可能性もあります。
すぐに栄養指導を受けるための予約方法
栄養指導を受けるためにはどのようにすれば良いか分からない、と思われている方のために、こちらではその流れをお伝えします。
①病院またはクリニックを受診する
②受診の際に「栄養指導を希望」している旨を医師に伝える
③予約する
という流れになります。
病院やクリニックによっては数日から1週間分の食事記録を用意してもらうように指示される場合もあります。
栄養指導を受けられる施設の選び方やその際のポイント、注意点
実は、栄養指導を受けられるのは病院やクリニックだけでなく、保健所や保健センターでも受けることができます。
クリニックや保健所に管理栄養士や栄養士が在籍していなくても外来という形で栄養指導を受けることもできます。
保険適用か否かは診断結果で決まるので、まずは受診してからの確認となります。
病院やクリニックなどによっては予約方法が異なったり、食事記録や血液データの準備などが必要になることもあるので注意しましょう。
まとめ
ここまで、栄養指導についての基本的な情報から疾患別の内容、実際に受けるための流れなどについて詳しく見てきました。
栄養指導の内容は、年齢、性別が異なるように、個々によっても指導内容は様々です。
自分なりの食事法を続けたり、SNSの情報に踊らされると病気の進行を早めたり、かえって病気を悪化させる場合もあります。
今よりも症状の進行を防いだり予防の観点からも、一度病院やクリニックを受診し、栄養のプロの指導を受けてみましょう。
病気や健康に関する不安を解消するには正確な診断と的確なアプローチが必要です。
来年も健康に生活できるよう、勧められている方は一度受診してみましょう。
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